10匹目:ダークエルフ
1話事に新種を出すという無茶な計画である。
ブルームと共に浮き島に着く前に下は海なのかとか言ったが、それが事実だとは思わなんだ。
白い砂浜、透明度の高い海水、照りつける太陽……要するにリゾート地と言っても過言ではない大自然が広がっている。
――――全裸ですからいつでも泳げますよ。
そうだな、でもレイは防水性あるのか?
――――これでも魔物ですから防水どころか防火性もありますよ?
近くに魔物の反応は?
――――上空と海中ですね、砂浜には今のところ皆無です、陸の遠くの方に何体が居ますが……詳細を検索しますか?
いや、後でいいそれよりも先にやることがある。
「『ノマソレド・ファイ・ルナ・メリー』」
横にヒスイを待機させ未だ人化させていない他三人を呼び出す……が、ルナ以外なんか寝てるんだけど。
ファイは幼いし仕方ないけどメリーはそこまで子供じゃないだろう……。
「とにかく『エゾフロマテムナムイヒ・ファイ・ルナ・メリー・ヒスイ』!」
ボフン――――とちょっと四人同時だったせいか思っても見ない規模のデカイ爆発と共に視界を白い煙に覆われる……今は関係ないけど進化も人化ぐらいパッと変わらないものか。
少しずつ煙が晴れる、かと思ったが一陣の風が一瞬にして煙を吹き飛ばした……どうやらヒスイの仕業らしい。
綺麗な白髪に翡翠色の瞳をしたちょっと胸は小ぶりな少女が仁王立ちしていた。
その脇に長い金色のくせっ毛で体を包み込んで寝ている少女、その横に燃えるような赤い産毛の赤ん坊。
そして魔物の頃とあまり変わり無い姿のルナは新緑の髪に褐色の肌を持ち胸は真っ平らだった。
「調子はどうだ?」
人化第一声を聞くために適当な言葉を投げかける、寝ているであろうメリーとどう見ても赤子のファイは期待してないけど。
「悪くはないぞ、マスター」
ヒスイはマスター呼びか、ベビーという割にはこの中でもっとも大人っぽいな。
「めぇ……眠いですご主人……むにゃぁ」
起きているのか寝言なのかはっきりしないメリー。
「ぱぁぱっ」
ファイ……お前もか。どうやら俺は二人目の娘が出来たらしい……魔物的には餌と捕食者の姉妹だけど。
……ルナだけ返事がないな?
「おい、ルナ」
「ぽっきゅるぷるるふ?」
……はい?
――――マスター今のは鳴き声のようですね、恐らくですがルナは人化出来てません。
理由は分かるか?
――――調べています…………あ、分かりました。
早いな。
――――どうやらルナは進化をしたようですね、進化条件は人化だったようです。そして人化と同時に進化したことで魔物に戻ったようですね。
そうか、ならもう一度人化させればいいんだな?
――――ええ、ですが今の現状はあまりよろしくないかと、せめて他の三人は収納なさったほうが良いと思われます。魔力が枯渇してしまいますよ?
「何っ……仕方ないな、もう少し眺めていたかったんだが……『ウカブマケロドム・メリー・ヒスイ・ファイ』」
股間ビームが放たれ人化したままの少女たちを絡め取っていき、場に残されたのは俺とルナだけだ。
進化後の情報をくれ。
――――了解。
《図鑑番号・五七五》
『ダークエルフ、闇人魔物、属性:闇・月・闘。』
《個体情報》
『名前:ルナ、性別:♀、レベル:三十、特性:心眼、性格:ツンデレ(仲間思い)、技能:インファイト、回し蹴り、暗黒玉、テレポート』
ダークエルフか、なんかまんまになったな、属性が微妙に変わって技能にも変化が見られる。レベルは変わりなくか……戦力としては十分だな、後は近くの魔物の強さ次第か。
――――マスター、人化をさせてください。
分かってるがまた進化するってことはないよな?
――――その心配は不要です、そんなポンポン進化なんて普通しませんから。
「ならいいか……『エゾフロマテムナムイヒ・ルナ』!」
ポフン――――という音と共にルナの所々から煙が出る……どうやら部分的にしか変化はしないようだ。
具体的に言えば耳とか手足とかだったな。
「申し訳ございません、父上。何度も手間をかけていただいて」
……娘は三人だったようだ、なんというかこれはこれで新鮮だったけど俺ってそんなに老けてるのかね? もうちょっと兄さんとかお兄ちゃんとか呼ばれたいです。