僕の両親の話をしよう
突然だが、ここで両親の話をしよう。僕の両親の話だ。
父親も母親も、取り立てて語るようなコトは何もない普通の人だった。いたって普通の人だった。そりゃ、人並に欠点もあったし、長所もあった。だけど、そんな所まで含めて、実に普通の人達だった。
そんなだったから、僕のことも普通に育てようとした。危険なコトは何もさせない。安全こそが第一。平凡こそが最高の幸せ。そんな風に考え、そんな風に生きた。
だけど…いや、だからこそというべきだろうか?
僕は、それに反発するような人生を選んだ。小説を書こうだなんて決めたのも、そのせいだった。史上最高の小説家などというものに憧れを抱いたのも…
そうして、僕は戦いを挑んだ。何に対して?世界に対して。
この安定した平凡な世界に、無力な僕は戦いを挑んだのだ。たった1つ“想像力”という名の武器を手にして。そして、無残にも敗れ去った。
それから、どうなったかって?
もちろん、悟ったのさ。“ああ、そうか!やっぱり、平凡が一番だったんだ!僕の父親と母親が言っていたように、危険なコトなど何1つせず、安定な人生を歩んだ方がいい。まして、世界に戦いを挑むだなんて、僕はなんて愚かだったのだ!これからは、平凡に生きよう!平凡こそ最高の幸せ!”などと、ベタな終わり方はしない。
世界に敗れた僕は、結局、今でも世界に対して戦いを挑み続けている。敗れても!敗れても!その度に立ち上がり、新たな力を身につけながら、戦い続けている!!
いや、忘れてくれ…
というか、信じないでくれ。これは、嘘かも知れないし、本当かも知れない。そんな小説の話なのだ。




