見知らぬ人に対してあいさつは必要か?-2
さて、では本題に入ろう。
いつもの平穏な日々。変わらぬ日常。図書館への道。
僕は、指輪を捨てに行くホビットのように(あるいは、それ以上に)ワクワクしながら、同時に慎重に緊張もしつつ、かつゆとりも持って図書館へと向っていた。
ここで、いつもならば、何の問題もなく図書館に到着する。ところが、今日は問題が発生した。それも、大問題が。なんと、中学生の女の子が声をかけてきたのだ。
「こんにちは~」とか、なんとか言って。
ここで、僕の頭はフル回転する。
即座に返事を返した方がいいだろうか?落ち着いて一言「こんにちは」と。あるいは、楽しそうに「こんにちは~♪」だろうか?
はたまた、別のセリフで返すか。オウム返しでは芸がない。「今日もいい天気ですね」とか、なんとか言って返答しよう。でも、空は曇っているぞ。これは、いい天気と言えるのだろうか?
そもそも、そんなパターン化したセリフで返していいものだろうか?史上最高の小説家を目指しているこの僕が、そんなお決まりの誰にでも発することのできるセリフで返すだって?ここは、もっと奇抜なセリフだろう。「オパッパペンチョ!」とか「ブリブリベ~ン」とか、その手の。
いやいや、それは、さすがに頭がおかしいだろう。頭の中で狂っているだけならば、いい。そこまでは許容範囲。だが、実際に口に出してしまったら、おしまい。行動に移したら、もう終わり。それは、本物の狂人。そうなってはいけない。あくまで、僕が目指すのは“究極の小説家”であり、真の狂人ではない。
そんな風に考えている内に、数秒間の時間が経過してしまった。そうなると、もう返事をするのもおかしい。完全にタイミングを逃してしまったわけだ。
そもそも、さっき中学生の女の子が発した「こんにちは~」というセリフは、僕に向って放たれたものだったのだろうか?もしかしたら、後ろを歩いている同級生の男の子か誰かに対してだったかも知れないじゃないか。
というわけで、僕はその言葉をスルーすることに決めた。
事件が起きたのは、次の瞬間だった。
「ケッ!無視かよ」
今度は、ハッキリと確信した。そのセリフは、明らかに僕に向ってだった。
ここで、僕は条件反射で言葉を返してしまった。
「無視かよ、とはなんだよ?」とかそのようなセリフを。よく覚えていないけれども、確かそんな感じだったと思う。
これには、僕も反省しなければならない。そのままスルーを突き通すべきだったのだ。だが、こちらも鍛えられた剣士のようなもの。攻撃が放たれれば、無意識の内に反撃に転じる。
こうして、バトルは開始された!!




