見知らぬ人に対してあいさつは必要か?-1
ハァハァハァ…と、息を切らして僕は帰ってきた。
これは、ぜひ書き留めておかなければ!!
読者諸君には、何が起こったか、わかりはしないだろうから、最初から丁寧に状況を説明していかなければならないだろう。
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図書館。そう、まずは図書館だ。僕は、いつものように図書館に向って歩き始めた。家を出る。いつものルート。いつものペース。
僕の家から図書館に向うには、中学校の前を通らなければならない。正確に表現すれば、中学校の前を通っていくのが一番の近道となる。迂回していくルートもあるのだが、それでは時間がかかるし、効率も悪い。必然的に、中学生の通学路と重なってしまうことになる。そうして、時間帯によっては、大勢の中学生と鉢合わせになってしまうわけだ。
中学校の近辺の道は歩道が狭い。歩道があるにはあるのだが、車道に比べるとかなり狭い。なので、下校中(もしくは、登校中)の中学生が2~3人横になって歩いていると、もう通れない。追い抜くことができなくなってしまうのである。
この行為には、近所の人達も大いに迷惑しているようなのだが、僕は文句1つ言わない。黙って我慢する。耐える。“これは、人生の試練!成長の為に必要な行為なのだ!”と心の中で活を入れて耐え抜くのだ。
そこで一声、「あ、すみません。ちょっと通してもらえますか?」などと声をかけて、道を譲ってもらうという技もあるのだが、僕はこれが苦手だ。事実、半分くらいの人は、そうやって前の中学生を追い抜いていく。けれども、僕には、それができない。能力的には充分に可能なのだが、精神的にできない。だから、この手は使えない。
ちょっとしたことで、“声かけ事件”として通報されてしまう昨今である。余計なトラブルは避けるに限る。そういう意味でも、この技はなるべく使うべきではないだろう。僕のした選択は正解と言えよう。
仕方がないので、前を歩く中学生の群れを追い抜くことなく適度な距離を保ちつつ、歩き続ける。この時に、あまり距離を詰め過ぎないように気を使わなければならない。近づき過ぎると、中学生のお尻を観察する変質者と間違われてしまいかねない。
“歩いているのが中学生の女の子ではなく男の子なら問題がないのでは?”と思われるかも知れない。だが、それは素人の発想だ。仮に、前を行くのが女の子ではなく男の子の集団であったとしても、同性愛者の変質者と間違われる可能性がある!なので、いずれにしても、距離を取らなければならない。
近づき過ぎず、かといって離れ過ぎず。あまりにも離れると、今度は後ろの歩行者に追い抜かれてしまう。なので、適度な距離を保ちながら歩き続ける必要が生じる。これには、熟練の技術が必要となる。
ただでさえイライラとしてしまいそうな行為である。
それに加えて、下校中の中学生というものは、実にチンタラチンタラと歩くのだ。おそらく、学校という閉鎖的な空間に閉じ込められていた影響であろう。帰りの道すがら、友人達と一緒に楽しいお喋りをしながらゆっくりと歩いて帰るのが、ストレス発散の場となっているのだ。
そうして、それはシステム化され、日課となってしまっている。だから、悪意がない。下校中の中学生にとっては、それは当然自分達が行使してもいい権利であり、何ら恥じる所も悪びれる必要もないと思い込んでしまっているのだ。
ま、それには一理ある。僕も、その辺は大人だ。そこは認めよう。我慢もしよう。中学生諸君よ、大いに語りたまえ!チンタラとゆっくりと歩きながら、歩道を占領したまえ!
僕は、その部分に関しては文句は言わない。問題は、そこではない。
ちょっと前置きが長くなってしまったので、ここで一息入れて、続きはまた後で書くとしよう。




