無限に増えていくパン
部屋の中に、昨日の余韻が残っている。
天井から落ちてきたパンが、そこら中に転がっていて、次から次へと増殖していき、瞬く間に部屋がパンで一杯になってしまった。まさに、パンパン!
埋もれてしまった部屋の中を、水泳のように泳いで進んでいく僕。段々と息をするのも苦しくなってきた。イースト菌が酸素を消費してしまっているのだろうか?いや、さすがにそれはないか…
それにしても、空想力を鍛え過ぎた影響がこんな部分に出てくるとは。しかも、小説を書く為に1日中発動しているのだ。仕方がないとも言える。ある意味で、職業病のようなもの。小説を書く為には、空想する能力が必要。それも、極限まで極めなければならない。そうしなければ、究極の小説家になど到底なれはしない。
諸刃の剣か…
いい小説を書こうとすればするほど、空想能力を鍛えれば鍛えるほど、日常生活に支障をきたしていく。普通の人間ならば、ここで止まってしまうだろう。諦めてしまうだろう。能力を止め、普通の状態へと戻す。
だけど、僕はそうじゃない。もっと!もっとだ!!もっともっと増殖させ、どこまでもどこまでも肥大化させていく。家を埋め尽くし、この国を埋め尽くし、この星を埋め尽くし、最後には宇宙までも埋め尽くす。
そう!パンは小説の象徴。無限に増えていくパンは、イコール無限に増えていく小説なのだ。書けるだけ書いてしまえ!この絶好調の時期に!どうせ、いずれ、パタリと筆が止まる時が来るのだから。そうなる前に書き溜められるだけ書き溜めておこう。
日常生活の方は、もう諦めた…




