妄想という名の空気の壁が守ってくれる限り
いつものように図書館に本を読みに行った帰り道。
突然、フワリとした感覚と共に、妄想がこの身を包み込むのがわかった。この時間にも関わらず。まだ、お日様が照っている内に、この感覚。まるで、深夜の時間帯のよう。どうやら、夢の世界が現実の世界を浸食し始めているらしい。ちょっとばかし小説の世界に入り込み過ぎていただろうか?1日に書く量が多過ぎただろうか?
だけども、それは望む所だ。究極の小説家を目指すこの身。このくらいでちょうどいい。24時間…とまではいかないまでも、せめて目が覚めている時間くらいずっと妄想に浸っていてもいいだろう。そうして、ひたすらに小説を書き続けるのだ。ただ、ひたすらに。それこそが、究極の小説家のあるべき姿。いずれ、小説の神にも匹敵するようになるかも知れない。
「自動で風の魔法が発動しているな…」と、僕は路上で呟く。
妄想が風となり、空気の壁となって、この身を包んでくれる限り、一切の物理攻撃は通用しない。理論という名の物理攻撃は通らない。おそらく、かすり傷1つ負わせられることはないだろう。
言葉を武器として使用している限り、完全にその攻撃を無効化できる。
「そんな非現実的なコトばかり言って…」とか「もっと現実的になりなさいよ!」とか「理論的に無理に決まっている」とか「小説家なんて、なれるわけないじゃないの」とか「どうやって、お金を稼ぐのよ?」とか「いつまで、そんな夢ばかり見ているの?」とか、そういった言葉は一切、通用しない。
“言葉は無力”
それを僕は知っている。僕自身が発する言葉はもちろんのこと、それは相手が発する言葉に対しても同じなのだ。言葉を言葉として使っている限り、物理攻撃として使用している限り、僕にその言葉は通用しない。
そうではなく、言葉を魔法の領域まで昇華してみせるのだ。そうすれば、お話は別。言葉は一瞬で相手の心の底まで到達し、一撃でコアを破壊する。
あるいは、逆にこの身を守ってくれる盾にもなる。敵からの攻撃を防衛してくれる無敵の要塞と化す。
言葉の無力さを痛感した後だからこそ、このような芸当が可能となる。




