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誰にも見えず、誰にも聞こえず、誰にも感じられないモノを形にする
外は雨が降っている。大雨だ。あるいは、それは妄想の雨かも知れない。大きな雨粒が無数に降り注ぐ幻覚が見え、バチバチと雨粒が地面にぶち当たる幻聴が聞こえているだけなのかも。
それならば、それでいい。それこそが小説だ。誰にも見えぬ映像が見え、誰にも聞こえない音が聞こえる。それこそが、理想の作家の能力。誰もが見え、誰もが聞こえ、誰もが感じられる。そんなモノを書いて何になろう?
代わりのいない人間になろう。代わりのいない存在になろう。代わりのない作品を生み出そう。それこそが、作家のあるべき姿。
真夜中に奇声を上げるような人間になろう。
ただし、心の奇声だ。実際に声にして発する必要はない。
どこまでもどこまで闇の底へと落ちていこう。
ただし、小説だけは書き続けなければならない。ただ単に悩み、迷い、思考の罠へと陥るだけでは駄目だ。大いに悩み、大いに迷い、永遠にも無限にも思えるこの思考のループへとハマり、それでもなお、それらを言葉にして残せなければならない。
それこそが、究極の作家・理想の小説家のあるべき姿なのだから。




