漆黒の闇が心を包み込む時
夜はいい。
漆黒の闇が世界を支配し、空を覆い、心を包み込む時、昼間とは別の物語が書ける。
お日様が世界を照らしている時間には、見えてこなかったモノが見えてくる。たとえば、ウジ虫が脳みそを這い回るシーンなんて、昼間からは、なかなか書けやしない。それよりも、こういう深夜の時間帯の方が筆がはかどる。
もちろん、それとは逆に、明るい時間帯にしか書けない文章もある。子供の笑顔がいかに素晴らしいかとか、図書館に通う行為がいかに楽しいかとか、そういうのは夜に書くには、あまり向かない。完全に不可能というわけではないのだけれど、どこか嘘っぽくなってしまう。あるいは、膨大なエネルギーを必要とするか。
夜には、夜の文章がある。昼には昼の文章がある。同じように、雨の日に向いている文章もあれば、雪の日や大嵐の日に書いた方がいい文章もある。
似たような現象で、“夢と現実の狭間の世界”での物語を書こうと思ったら、長い睡眠をとる直前か、あるいは目が覚めて夢の世界から現実の世界へと舞い戻ってきた直後の方がいい。あまりも頭がハッキリしていると、なかなか上手くいかないものだ。
そんなわけで。この時間には、この時間に相応しい小説を書こう。




