能力の進化
目が覚めた。小説を書こう。
正直言って、僕は長い小説を書くのが苦手だ。逆に短い文章を書くのは得意。だから、このように細切れになった短い文章を積み上げて、長い作品へと変えていく。このような手法を生み出した。
同じように、“毎日、小説を書き続ける”という行為も苦手だった。好きな時に、好きなだけ書く。書けない時には、全く書かない。そんな生活を繰り返した。だけど、そちらの方は、どうにか克服した。長い修練の果てに、僕はついに“毎日、コンスタントに小説を書き続ける能力”を身につけたのだった。
さらに、悩みは続く。
“朝、起きて、小説を書く”という行為。これができなかった。頭の中ではわかっている。日中、ダラダラと無駄に時間を過ごしているのだったら、その間に小説でも書いた方がいい。どうせ、夜になってから取りかかるのだったら、もっと早めに始めた方がいい。けれども、体が動かない。心が命令を聞かない。
結局、太陽が沈み、闇が世界を支配する時間になってから、ようやく動き始める。お天道様が顔を出している時間には、どうにもやる気が出てこない。
ところが、それも徐々に変わっていく。毎日、小説を書き続けている内に、いつの間にか“目が覚めて、すぐに小説を書く”というコトができるようになっていったのだ。さらに言えば、以前に比べて長い文章も書けるようになっていた。
このように能力は進化する。苦手分野は克服できる。仮に克服できなかったとしても、欠点を欠点として認め、その欠点を長所に変えるコトは可能。
こうして、僕の“史上最高の小説家への道”は続く。




