傭兵王子(腹黒)と考古学者(最弱)…失恋しました?
続きの電波が参りました。
よろしくお願いいたします。
アルティウスさんの馬鹿…。
アルティウス殿下なんていらないんだから!
自分の部屋で資料を読み返した。
真王の兄上の覚書は面白いよ……仕事さえしてればいいんだよね。
久しぶりの実家……五十嵐道場の自分の部屋でなんでこんなに寂しいんだろう……気にしちゃダメだ……
「ヨダレたれてるよ、快黎ちゃん。」
宇水の妖怪の声がして目が空いた。
いつの間に居眠りを!
ただ今絶賛実家に帰り中です。
アルティウスさん何て知らないもん。
「いいかげん、素直に嫁にいったらどうなんだ?」
五十嵐の長老まで部屋に入ってきた。
「嫌だよ、研究が私を呼んでるの。」
五十嵐の倉庫から総棚ざらえしてきた資料の年代分析結果を確認する。
「そういって、行き遅れていく年月だよね。」
いじのわるそうな笑顔を宇水の妖怪がしていった。
「……この真王陛下のお兄さんの日記によると、真王の守護戦士は値切り命の主婦?みたい…主婦戦士?」
私は古代の日記を読みながら無視した。
「へぇ…最初の守護戦士は主婦戦士なんだ。」
宇水の妖怪が感心したように五十嵐の長老をなぜか見た。
「な、なんだよ、たしかに、最初の守護戦士ユージンはオレのものすごーく遠い先祖だが、オレは単なるロールケーキじじいだぞ。」
全然じじいに見えない五十嵐の長老が言った。
「ロールケーキじじいっていくらロールケーキ作るのが得意だからって…。」
宇水の妖怪が笑いながら言った。
「そ、それより快黎の縁談だろうが、このまま逃げてても良いことないぞ。」
五十嵐の長老が腕組みした。
五十嵐快黎、考古学者、ただ今現実逃避中。
親友の息子と…やっちまいました。
まあ、それだけならよかったんだよ。
私だって現実逃避する気はなかったんです。
シレルフィール遺跡にいくためにベースにしているアミルセアの町にモタマチムイ遺跡国の王族とやらがわざわざ来たんです。
ええ、アルティウスさんが王子殿下のせいで。
いつもは静かな町が自国の王族(女性)が来れば大騒ぎなんて想像できるでしょうが!
しかも他国の美形王子に会いになんて大騒ぎですよ。
常宿にしているグーレラーシャ傭兵国人の経営してる高級宿でいつも通り(なれって恐ろしい。)アルティウスさんに抱き上げられてイチャイチャしてたらあの女が来やがったんです!
「アルティウス殿下、モタマチムイ遺跡国のウアス・モタ姫様がご訪問されました。」
宿の主人が言った。
「ウアス殿ね…快黎、ごめんね。」
アルティウスさんが私にねっとりとキスしてから珍しく下ろした。
ここ数日、トイレと遺跡調査以外下ろしてもらったことはない(なれって恐ろしい。)のに御風呂も寝床も一緒なのに…。
「退避していてください、絶対に守ります。」
真剣な表情でアルティウスさんが私に言った。
「ヘ?」
私は間抜けな顔をした。
かくして、ウアス・モタ姫が居間にご登場された。
「私も遺跡につれていってくださいませ。」
ソコソコ美人なお姫様が傭兵王子になよっと寄りそって言った。
「遺跡は危ないですよ。」
アルティウス殿下が微笑んだ。
「はー、絵になりますねー。」
新人遺跡管理組合員エルアルド・アーチ君が感心したように言った。
ソコソコ美人でおしとやか風のお姫様と長身細マッチョな金髪に綺麗な水色の瞳の美形傭兵王子…確かにお似合いだよ。
アルティウスさん、あんた私の恋人じゃなかったっけ?お姫様がきたとたん地面に下ろすなんて、からだ目当てだったんかい?
「遺跡管理組合員エルアルド・アーチ君に遺跡の事は聞いた方がいいです。」
アルティウス殿下がそう言ってエルアルド君の方を向いた。
「そうですの?私、アルティウス殿下に教えていただきたいですわ。」
ウアス姫が微笑んだ。
「私は傭兵ですので。」
アルティウス殿下がやんわりと断った。
「では、私を守ってくださいませ。」
ウアス姫がなよっと寄り添った。
「遺跡の専門なら五十嵐先生ですぜ。」
エルアルド君が口をはさんだ。
「…あら、いらっしゃいましたの?」
ウアス姫がちらりと私に目をやった。
最初からいるわ。
「シレルフィール遺跡が危ないのでしたら、私がファルラシール遺跡をご案内いたしますわ。」
ウアス姫がそう言ってアルティウス殿下にしなだれかかった。
アルティウス殿下はすこし離れた。
「いえ、そろそろファモウラの戦場に戻らないと行けませんので。」
アルティウス殿下が言った。
「まあ、では帰ってしまわれますの?」
ウアス姫が頬にてを当てていった。
「ええ、私の本業は傭兵ですので。」
アルティウス殿下が言った。
「ではなぜ、考古学者の護衛などなさってますの?冒険者でも間に合いますのに。」
ウアス姫が嫌な感じに笑った。
「依頼を受けたからです。」
アルティウス殿下が静かに答えた。
かってにうけたんじゃないか!
結局、ウアス姫は私アルティウス殿下に色仕掛けで迫りまくり、ファルラシール遺跡までいく約束までアルティウス殿下にさせてウアス姫は宿から帰っていった。
あのべたつきなにさ、アルティウス殿下もなんかニコニコしてたし…若い娘がいいんだ、やっぱり!
「私、明正和次元に帰るから。」
ふん、結局美人なお姫様がいいんじゃん
いいもん仕事があるもん。
「快黎?」
アルティウス殿下が怪訝そうな顔で抱き上げようとしたので逃げた。
そのくらい出来るんですよ。
「黎明の真王の研究があるから帰るから!」
私はそう言ってアルティウス殿下から離れた。
荷物はいつでも差し入れ小袋にまとめてある。
だって考古学者だもん。
「何を怒ってるんです」
アルティウス殿下が近づいて来たので逃げる。
「五十嵐先生?」
扉があいてエルアルド君がはいってきたのでそこから外に出る。
「傭兵業務ありがとうございました、ご武運をお祈りします!」
しょせん単なる依頼人だよ!戦場でもどこでもいきやがれ。
「快黎?なにか誤解…。」
アルティウス殿下がいいかけたけど私は扉をしめた。
五十嵐快黎、人生最大の失恋しました。
しかも初恋だよー。
「ふーん、恋人は傭兵王子なんだ。」
美人の姉、優黎が入ってきた。
相変わらず隙がないな…。
いまなにしてるんだっけ?
この器用貧乏め。
「恋人じゃないもん。」
別れてきたんだし、もう、研究に一生を捧げるんだ。
「律ちゃんの息子さんなんだってね、大分年下だね。」
優黎姉ちゃんがそういいながら最初の守護戦士の資料をてにとった。
「優黎姉ちゃんはモテるから良いよね。」
明正和学園時代からラブレターの運び人させられてたよ。
「うーん、あんだけ濃い人とは付き合ったことないけどね。」
優黎姉ちゃんがなんか笑った。
あんだけ濃い人?ダレソレ?まさか?
「優黎姉ちゃん、私、大学の研究室に用があるから。」
私は逃げる準備を始めた。
資料は全部差し入れ小袋に入れる。
「……いいけど逃げられるのかな?」
優黎姉ちゃんがそういいながら廊下の方を見た。
そこには颯爽と歩くアルティウスさんがいた。
「何で来るのさ?優黎姉ちゃん、もっと早く教えてよ!」
私はそういいながら五十嵐本家側の廊下に逃げた。
「逃げないでください!」
アルティウスさんの声がする。
「ウアス姫は?戦場はどうなったの?」
私は駆け出した。
別にりっちゃんみたいにか弱くないからそこそこ早いもん。
「本当に素直じゃないな。」
優黎姉ちゃんが言ってるのが聞こえた。
「快黎、愛してます!私の伴侶はあなたしか考えられない!」
アルティウスさんの美声がすぐ後ろで聞こえてだきよせられた。
「美人がいいくせに嘘つき!」
私はもがいた。
「…美人?誰のことです?快黎のこと?」
アルティウスさんが聞いた。
「ウアス姫だよ!私は美人じゃないもん。」
私はもがいた優黎姉ちゃんがなんかニヤニヤしながら見てる。
助けてよ!
「ウアス殿のお誘いは丁重にお断りしました。」
低い美声でアルティウスさんが耳元で言った。
こんなときなのに背筋がぞくぞくする。
「せ、戦場に帰っちゃうんでしょう?私をすてて!」
傭兵だから帰っちゃうんだよね。
「ついてきてくれないんですか?」
アルティウスさんがそういいながら耳たぶをアマガミした。
いやん、なんで耳たぶ弱いのに。
「つ、ついてくる?」
ついていってもいいの?
でも、私、研究したい…でもそれは…。
アルティウスさんが私を抱き上げて目を合わせた。
「私はグーレラーシャ傭兵国の傭兵です、ファモウラ軍国との戦争がこれからすぐ終わるとは思えない…でも快黎、五十嵐快黎とずっと一緒にいたい。」
アルティウスさんの真剣な表情が見えた。
どうしよう…私、私ね。
「私も一緒にいたいよ。」
うん、例え戦場にいくことになっても。
「快黎、ずっと一緒にいましょう。」
アルティウスさんがそう言って私にキスをした。
「うーん、甘いな…私もあんな人ができると良いな。」
優黎姉ちゃんが言ってるのが聞こえた。。
「いつか出来るよ。」
宇水の妖怪が笑いながら言ってるのが聞こえた。
「雄高が問題だな、あいつ、娘の結婚受け入れられるか?」
五十嵐の長老が言ってるのが聞こえた。
い、いい加減、キスやめてほしい。
息が…続かない。
「まあ、いいんじゃない?快黎が幸せになれるのなら、私応援するよ。」
やっと解放されて辺りを見ると優黎姉ちゃんがニコニコしながら宣言してるところだった。
生暖かい眼差しで三人に見られて私はとても恥ずかしかった。
「部屋はこっちだよ、空間術かけとくね、邪魔されないように。」
宇水の妖怪がニヤニヤしながら私の部屋を指差した。
「ありがとうございます。」
アルティウスさんが私を抱き上げたまま部屋の方へ言った。
「え?ええ?」
わ、私、心の準備か!
「幸せになりましょうね、快黎。」
アルティウスさんがそう言って部屋に連れ込まれました。
身の危険をかんじて、に、逃げようとしたらふすまが開かないんですが?何したの?宇水の妖怪?
本日も疲労困憊です。
若いって恐ろしいわ。
年上をすこしはいたわってください。
「宇水の妖怪、なんであんな強力な空間術使ったの?」
優黎が日本家屋な妹の部屋のふすまを見ながら言った。
現在、空間管理師をしている優黎にはよくわかるようだ。
「フフフ、さっさと結婚してもらいたいからだよ。」
宇水の妖怪はほくそえんだ。
あの資料が異世界にでるのは大賛成だしと呟いてる。
「おまえな…なんであの日記にこだわるかな…まあ、今日は祝いだ、特製ロールケーキでも作るか。」
五十嵐の長老のはげ頭と目が輝いた。
「うん、いこうか。」
「わーい、ロールケーキ大好き。」
宇水の妖怪と優黎はルンルンと五十嵐の長老のあとをついていった。
ロールケーキの美味しさに空間封鎖術の解除をしばらく忘れて、半日後、アルティウスに抱き上げられて出てきた快黎はピクリとも動かなかったそうだ。
宇水の妖怪との因縁は別ユーザー飛人参の作品に出ています。
駄文を読んでいただきありがとうございます。