第十話:だって幸せなんだもん
第十話:だって幸せなんだもん
オリオンは強いです。彼女の想いをこの目の前で感じ取って、確信致しました。残念な事にわたし一人の想いでは彼女の想いに勝つことが出来そうにありません。わたしはこんなにもお兄様を愛しておりますというのに、オリオンの神を崇拝する想いはわたし以上だという事でしょう。
でも、それが一体なんだって言うんですか!!
わたしは蕾が花開くように、瞳を開きました。
「定香ちゃんっ!!」
「よろしくてだよ!!」
わたしと定香ちゃん、二人の魔法天使の想いが共に膨れあがっていきます。
一人で駄目なら、二人の想いで勝てばよいだけのことです。
定香ちゃんは弾ける想いを込めたイリルさんを掲げ、わたしは秘めた想いを咲き乱れさせた桜色の指輪を突き出します。わたし達が魔法天使であるための証である、二つの想いと二つのMSデバイサーが今、重なり合います。
「っく」
わたし達を中心として、紫色と桜色の想いが渦となり教会の中を満たしていきます。わたし達が兄を愛するこの想い。五聖天使が汚れと罵った想いが閃き、神に祈りを捧げるこの場所を一杯にしていきます。
わたしも神様なんて信じておりません。ですが、もしこの場を見ているのなら、刮目して見なさい! これが、実の兄を愛するわたしの達の幸せな想いなのです!
「汚らわしい。止めろ、こんな汚らわしい想いで、われらが教会を包み込むな。われが神が汚れてしまうではないか」
わたし達の想いは止まりません。止められません。この体を手に入れて味わった幸せを全て想いに載せ、世界を紫色と桜色の光で包み込んでいきます。
「小夜さん!」
「紅音ちゃん!」
イリルと桜色の指輪を重ね合わせたまま、わたしと定香ちゃんは親友の名を呼びます。
わたし達を包み込む二色の想いが一段と激しさを増します。それはわたし達の想いが一つではなかった証です。
わたしと定香ちゃんは精神を入れ替えることでお兄様達と愛せる体を手にいることが出来ました。
でも、それだけではないのです。二人が精神を入れ替えたからこそ、わたしは現実に悩み、苦しみ、小夜さんと出会う事が出来たのです。あの日の苦しみが無ければ、わたしは小夜さんや、生徒会執行部の皆さんとこうして出会い、想いと想いをぶつけ合う喧嘩なんて出来なかったことでしょう。
わたしと定香ちゃんが精神を入れ替えたからこそ、わたし達四人は友達に、いえ、親友になれたのです。
「わたしは、」
「あたしは、」
兄を愛する想いに、友を信頼する想いが塗り重なっていきます。
「想いが咲き乱れて、」
「想いが弾け続けて、」
わたし達の内に秘められていた全ての想いが今、咲き乱れて、弾け飛びます。
「こんなにも幸せなのです!!」
「こんなにも幸せなんだよ!!」
視界の全てが紫色と桜色の想いに被われます。
これは全てわたしと定香ちゃんの想い。魔力を持ったわたし達が見れば、それはただの閃光ではなく、その先に込められた想いを見ることが出来るのです。
わたしがお兄様と初めてキスをした日の想い。定香ちゃんが誠流様とデートをしている想い。わたしと小夜さんが生徒会の一室でノンビリとお茶を飲んでいる想い。定香ちゃんと紅音さんが学校に迷い込んだ犬を相手にじゃれ合っている想い。
すべて、わたしと定香ちゃんがこの想いと体を入れ替えたからこその、想いなのです。
やがて、咲き乱れていた花は必ず枯れるように教会を覆い尽くしていた想いが霧散してきます。でも、枯れた花が再び咲き乱れるように、これでわたし達の想いが無くなってしまった訳ではないのです。
「これが、あなた達の想い………というわけ?」
「ははは、なんだよ、幸せそうじゃないかよ」
「うん。だって、幸せなんだもん」
満開の桜も顔負けな定香ちゃんの笑顔がわたし達の想いの全てを表しています。
わたしが彼女たちに届けなくては成らない想いはもうありません。後は、わたし達の想いを彼女たちがどのように捉えるかです。わたしは、前に一歩を踏み出しました。
その先にいますオリオンとの決着を付けるために。
「どうですか? わたし達のこの幸せな想いを全身で浴びた感想は?」
「反吐が出るほどの、最悪な気分だ。この乱れ狂った想いをわれらが神も浴びた思うと、われは己の未熟さを痛感するばかりだ。われの未熟さが、神を汚してしまった」
オリオンの全身から想いが満ちあふれ、黄金のオーラーとなって顕現しております。
「許さんぞ。魔法天使シリアル・アリス、魔法天使パラレル・ティーカ。貴様らは汚れた想いで、われらが神に泥を塗った。これは早急に審判の儀を執り行なわなければ、神がお嘆きになってしまう。よく聞くが良い、魔法天使ども!! 貴様ら汚れた天使に残された償いの道は、もはや万死のみ!!」
オリオンから溢れていた黄金のオーラーが、まるで龍のように空へ昇り天井を破壊します。粉々に砕け散った木材が雨のように降り注ぐ中、わたし達の回りに黄金の粉が降り注いできます。
「貴様らが罪、われら、五聖天使が裁いてみせる」
やがて、木材の雨が止み、空へと解放された教会が露わになったとき、音が鳴り響きました。
それはまるで教会の鐘が鳴り響くのをすぐ側で聞いたかのような重い音でした。わたし達はすぐさま両手で耳を塞ぎましたが、その程度で音を遮断することは出来ません。いえ、よく感じ取れば、これは正確には音ではありませんでした。
「なに……これが……想いだって言うの?」
これは想いによって奏でられし魔法が生み出した音でした。
天使がもし、泣くことがあったのなら、ここまで深い嘆きが必要なのかも知れない。
そう想ってしまうほど、この嘆きの想いは悲しく響き渡っていくのです。
「はああああああああ」
「あっわああああああ」
教会の中に、わたしと定香ちゃんの声にならない悲鳴が木霊していきます。刹那の出来事でわたし達は何が起きたのか分からないまま、まるで巨人の手に押しつぶされているかのように床に這い蹲されているのです。耳元で床が重みに耐えきられず、軋む音が聞こえ始めた頃わたしはやっとこの重みの正体に気づきました。
この重みは想いです。
五聖天使オリオンが紡ぐ嘆きの賛美歌のごとき想いが今、わたし達に覆い被さってきているのです。
これが五聖天使オリオンの真の力だということなのでしょう。
「どうだ、愚かな天使達よ。これが、われが五聖天使の真の力である。神に選ばれたわれが圧倒的な想いの前に、己らの想いの脆さを知るが良い」
オリオンの荘厳な声に対してわたしは嫌みの一つすら言い返すことすら出来なく、ただただ、想いに押しつぶされているしかありません。
「われが想いの前に潰れ、ひれ伏すが良い。汝らの汚れた想いを、われが想いが包み込み、浄化して、われらが神に捧げようではないか」
「……もい……は、つ………な…い」
五聖天使の想いの中、泡が弾けるようなか弱い想いがそこにありました。それはわたしの親友の想いであり、そして、わたしの想いでもあります。
想いは力となり、想いは勇気となり、想いは魔法となり、わたし達魔法天使は何度でも起き上がります。
「あたし達の想いを見た、でしょう。あたし達の想いも、恋も、友情も、全て、あんたには、潰されないわ!!」
定香ちゃんの想いが言葉となり、弾け飛びます。その想いは定香ちゃんの中だけで弾け飛んだのではありません。わたしの中にあった想いの枷も弾け飛ばせ、そして、彼女たちの想いの枷もまた、弾け飛ばせたようです。
「闇よ!」
「炎よ!」
とてもよく聞き慣れた二つの声と共に、今までわたし達を抑えつけていた想いが消え去りました。
無理矢理抑えつけられていたせいで、意識が少々朦朧としていますが、確固たる想いは、魔法天使と五聖天使の間に立つ、優しい闇の想いと、熱い炎の想いを見逃したりは致しません。
「貴様ら、生け贄が何故、そこに立つ。貴様らも、魔法天使同様にわれらが神を冒涜するというのか!」
金色と対峙している黒の想いと赤の想い。その二つのなんと心強いことでしょうか。わたしは安らぎと、そして、謝罪の想いを胸に秘め、二つの想いを体中で受け止めます。
「僕たちはオリオンの神様を信じて、生け贄になった訳じゃない。僕たちが救いたいのは、神ではなく、友達だ! もし、オリオンが、定香や愛理子を殺すというのなら、僕たちの敵はお前だ!」
「オリオンさん。ごめんね、私達のこの胸にいるのは、あなたの神ではなく、わたし達の想いなの。親友にあれだけの想いを見せられたのだから、もう、親友を応援するしかないわよ。例え、その先が別れだとしても、友達には幸せでいて欲しいのよ」
今もその体はMSデバイサーへと変質しつつあるというのに、彼女たちは五聖天使に臆することなく、想いを抱いております。
五聖天使側についていれば、もしかしたらその体は人間のままであり続けられるのかも知れないのに、わたし達の親友は人間であり続けることよりもわたし達を選んでくれたのです。
わたしは空気ではなく、この場に満ちている親友の想いを吸い込むように一度深呼吸をしました。想いは体中に染み込み、不思議とこれまで感じていた痛みが消え失せていきます。
「紅音ちゃん。ありがとうだよ、その弾けるほどに熱い想い、たしかにあたしに届いたよ」
「小夜さん。すごいです、その胸に秘めた優しい想い、わたしの中でも咲き乱れています」
ゆっくりとした動作ではありますが、わたし達二人の魔法天使は床から起き上がります。
「愚かである。何故、お前らは、神が定めた清き道を逸れ、自ら死に急ぐかのように、哀れで、愚かで、汚れた道をそのような真っ直ぐな想いで突き進むというのか!?」
オリオンの碧眼が、わたし達の想いを前にして動揺に揺れ動きます。
熱き赤色の想い、優しき闇色の想い、弾ける紫色の想い、そして、咲き乱れる桜色の想いが、想うことは四人四色です。
「それでも、わたし達は幸せでいたいから」
わたし達は想いを魔法へ変え、床を蹴り、天使の如く飛翔しました。オリオン・T・オータムへ向けて四色の想いが突き進みます。
「炎よ!」
紅音さんの叫びと共に、彼女の左の拳が炎に包まれます。熱血漢な彼女に相応しいその魔法とは相性がかなり良いのでしょう。離れたわたしにまで熱気が伝わってくるほど、紅音さんの炎は熱く燃え上がっております。
「はああああああああああああ!」
迷いのない一振りで、炎に包まれた拳が振り下ろされますが、流石は五聖天使という所でしょうか。紅音さんの攻撃はオリオンが生み出した金色の防御壁の前に阻まれてしまいます。
「月嶋紅音。貴様は神に捧げられる生け贄であるぞ。審判の儀が終わりし時、貴様は意志を持たぬMSデバイサーへと成りはててしまう。貴様に残された運命はそれしないのだ。それなのに、なぜ、神に反攻しながらも、こんなにも熱き想いを魔法へ返られるのだ!?」
「僕は説明は苦手だ。それにどちらかというと言葉ではなく拳で語り合うタイプだ。でも、僕が今想っているのは、明日もまたこの四人で下校したいなって事だけだよ」
紅音さんの想いが膨れあがり、爆発を起こします。防御壁を展開していたとは言え、零距離での衝撃を全て防げるわけがありません。爆風に煽られ、防御壁ごとオリオンが弾け飛ばされます。
「響け、この想い」
弾け飛ばされたオリオンの先には、イリルさんを構えたパラレル・ティーカが待ちかまえております。定香ちゃんの中では想いが弾けまくっているのでしょう。全身から紫色の想いがあふれ出しては、シャボン玉のように弾け飛んでおります。
「ね、ね、定香さん。なんか、自分、これまでの経験上、ものす~~~ごく嫌な、予感がするのですが? 気のせいですよね」
久々に言葉を発したイリルさんからオロオロとした想いが伝わってきます。でも、相棒である定香ちゃんはそんなイリルさんに一切の言葉を投げかけておりません。きっと今の定香ちゃんには倒すべきオリオンしか目に入っていないことなのでしょう。
イリルさん、ご愁傷様です。
「いやああああああああああああああ!!」
想いを乗せた気迫と共に、パラレル・ティーカがホームランバッターであるかのようにイリルさんを振り抜きました。撃つべき球はもちろん、防御壁に包まれたオリオンです。
オリオンの防御壁と、イリルとの間で、想いと想いがぶつかり合い火花となって具現化しております。うあ、イリルさんの悲鳴がここまで聞こえてきそうな程に、痛そうです。
「久我定香。貴様は、幸せになれると本当に信じているのか。神の掟に背きし、その汚れた想いを抱き続けていれば、やがて破滅が訪れるぞ! 神を冒涜せし、悪魔には、必ず裁きが下されるのだぞ! 審判の儀を受け、その愛欲に溺れた想いを清めよ。それこそが、貴様が幸せになれる、唯一の道であるのだぞ!」
「あんた、何言っているの。あたしはね、今、もの凄く幸せなの。あたしとお兄ちゃんに破滅が訪れる? 上等じゃない、あんたの神がそう言うのなら、あたしはその神に喧嘩うって、運命をねじ曲げてやるわよ!!」
イリルさんを包み込む紫色の煌めきが一段と強くなり、ついにオリオンの防御壁が破られました。ステンドグラスが割れたかのようにオータムの廻りに黄金の想いが降り注いでおります。それはわたし達の想いが五聖天使の想いを打ち破った証なのです。
「闇よ」
砕け散った黄金の防御壁の合間をかいくぐり、闇色の霧へと体を変質させた小夜さんがオータムの背後へ現れました。そのまま、まるで泣き子を抱きしめるかのようにそっと背後からオータムを闇色の霧が包み込みます。
「永沢小夜。貴様のその胸にある想いに、一体どれだけの価値があるというのだ。神に背きし、汚れ者たちを命を賭けて守っても、貴様達には幸せは、清めはやってこないのだぞ。愚かである。愛欲ではない、何の想いが貴様らを狂わせたのだ。自ら死に急いでいるというのに、何故こんなにも優しい想いで満ちあふれているのだ?」
「私はこの胸にある想いだけで、命を賭けるに値すると想っているわ。それに、愛理子さんと定香さんは汚れ者なんかじゃなくて、私と紅音さんの親友よ! そして、親友の幸せのために、命をかけて、一体何がいけないって言うの」
小夜さんの闇がオリオンを包み込みました。オリオンの視界、聴覚、嗅覚、すべてを遮断し、さらには、想いさえも小夜さんは遮断しているのです。
わたしはそっと、左の薬指にはめられた指輪に口づけを行います。刹那、わたしの中に満開の桜が芽生えたかのような高揚感に包まれ、私の魔法は準備完了です。
わたしは左腕を前に、より正確には小夜さんの闇へ向かって突き出しました。
「オリオンさん。あなたも、今度、私達の生徒会室に来てみたら、この想いが少しは理解できると思うわよ」
オリオンを包み込んでいた闇が霧散して、再びオリオンと世界が繋がります。
「桜愛理子」
「オリオン・T・オータム」
小夜さんの闇が晴れたとき、オリオンの眼前にまず見えたのは桜であったことでしょう。
今、わたしのMSデバイサーである桜色の指輪がまさしくオリオンの目と鼻の先に位置しております。いわゆるチェックメイトというやつです。
この距離なら狙いを外すこともありませんし、既にわたしの魔力は指輪の先であふれ出さんばかりに膨れあがっております。オリオンがいかなる魔法を使おうとも、わたしの方が早いはずです。
「これで、勝負ありましたわね。一度だけ、言いますわ。速やかに、審判の儀を中止し、わたしの友人である、小夜さんと紅音さんを生け贄から外しなさい」
「これが、貴様らの想いなのか。何故、われが負けたのだ。われが神を信ずる想いがまだ足りなかったというのことのか。分からぬ、われらが神は寛大である。神の導きに従えば、清らかで、幸せな未来が約束されているというのに、何故、貴様らは神の導きから外れて、ここまで強い想いを持てるのだ?」
「あなたの質問に答えている時間はありません。早く、私の親友を人間に戻しなさい!!」
さらに桜色の指輪をつきだし、オリオンに触れるばかりにまで近づけます。が、オリオンには効果が無かったようです。彼女は小さく頭を横に振ると、左の瞳から涙を五滴零しました。
「無理だ。審判の儀は完遂されなければならないのだ。審判の儀が完遂されず、お前達のような汚れた想い抱く者が幸せになるなど、そのような事はあっては成らぬのだ。われらが神は絶対である。われらが神の思し召しなくて、幸せなどあるわけがないのだ!!」
オリオンの中で想いが溢れていきます。
「止めなさい、五聖天使オリオン!!」
彼女の中で、想いが魔法へ変わるのを感じ取ったわたしは、すぐさま桜色の指輪から魔法弾を放とうとしました。ですが、わたし達は見落としていたのです。
わたしに定香ちゃん、紅音さん、小夜さんがいるように、五聖天使であるオリオンもけして独りではなかったことを。
天井が無くなり、星空が煌めく教会に、四条の金色が降り注ぎました。
その黄金が放つ絶対とも言える想いに、わたしは勝機を手放してしまいます。
「うきゃあああ」
想いが放つ風と現実の風を受け、わたしは、オリオンの前から遠のいてしまいます。風が弱まり、再び地面に足をつけたとき、わたし達の前には五つの聖なる黄金の天使達が舞い降りておりました。
「オリオン。恥ずかしいのではないのですか、われらが神の前でそのような醜態を惨めにさらけ出すことは」
「これは、酷い有様。われ、許さない」
「全く、われらが五人揃うほどの相手だとは思わないけどね、あの汚物よりも汚らわしい下等天使達は」
「まあまあ。みんな、今は嫌みとかを言っている場合じゃないわ。われらの目的は、審判の儀を完遂することでしょう」
「みな、すまぬ。われが不甲斐ない故に、五聖天使とわれらが神を汚されてしまった」
教会に舞い降りた天使達は、わたしたちに一瞥をくれることすらありません。
それにしても、汚物よりも汚らわしいとはなかなか言って下さいますね。
でも、彼女たちがわたしをどう見ようと勝手です。どんなに汚れていようとも定香ちゃん、紅音さん、小夜さんはわたしの親友です。そして、こんなわたしでもお兄様は真っ直ぐにわたしを愛してくれますわ。
わたしにとって、大切なのはここなのです。
「あ~ちゃ、これは一気に分が悪くなったな」
「オリオン独り相手に、私達四人でやっと勝てるというのに、四人も追加になってしまうと勝率なんて限りなく零ね」
「それでも、想いは、弾けて、砕けて、なんぼの物だよ。びびっている暇があれば、衝突あるのみ」
「定香ちゃんのその根拠のない自信は本当、感服致しますわ」
わたし達四人はそれぞれに言葉を交わし合いながら、その胸に想いを込めていきます。
お兄様と一緒にいるときとはまた違う想いがこの胸一杯に咲き乱れていきます。定香ちゃん達も今のわたしと同じような想いに満ちあふれている事でしょう。
黄金の雨が降り注ぐ世界で、勝手ながら、わたしはそう確信致しました。




