表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dive in the world   作者: 星長晶人
第四章 魔界大戦争編
80/108

魔神とサタンとS覚醒

 金色のオーラを纏ったジークがベルゼブルとベルフェゴールという二人の魔王に襲いかかっている間、レヴィアタンとサタンはやる気を失くした相手を倒そうと動き始めていた。


「……めんどくせえよなぁ、お前ら」


 二人の魔王を圧倒的な膂力で吹き飛ばすジークは戦場で佇みながらボソリと呟いた。


「……いい加減長くて飽き飽きだよなぁ?」


 ジークはさらに言葉を重ねる。するとどうしたことか怠惰に苛まれていた者達がユラリ、と立ち上がり始めた。


「……っ?」


 ベルゼブルとベルフェゴールは怠惰に逆らえるハズがないと思っていたので、怪訝に思い少し様子を見ることにした。


「……なら、戦え! 全力死力を尽くして、戦え! このままじゃ一方的に蹂躙されて終わりだが、それじゃ戦争じゃねえ、虐殺だ。これが戦争だってんならてめえらが全開でぶつかって、戦え!」


 ジークが言うと戦場にいる怠惰に苛まれていた者達が立ち上がり、武器を構える。


「戦え!」


 ジークの身体を覆う金色のオーラが光を放ち、戦場を淡く覆い尽くす。


「戦え!」


 戦場にいる者達は強化のアビリティを唱え始める。


「戦え!」


「「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」


 三度目にして、両軍の全員が一斉に走り出し、手当たり次第に敵と刃を交える、魔法で敵を蹂躙する。何かに取り憑かれたように視界に入った敵に対してスキル、アビリティを惜しみなく使用して攻撃を仕掛けているのだ。


「……くっ! 魔王のお前が戦場全体に効果を及ぼすなら、魔神の力を持つあいつも戦場全体に効果を及ぼせるって訳か!」


 ベルゼブルが呻く。ベルゼブル自身も戦いに突っ込んでいきたいと思わせられているのだ。かなりの影響力を持っているのは理解出来た。


「……やるしかない」


 ベルフェゴールは自分のスキルが破られたことに少し不満そうな態度を見せていたが、ジークを倒せばまた怠惰を蔓延させることは可能だろうと思って、二丁の銃を構えてジークを見据える。


「……だな」


 ベルゼブルがそれに応え、二人の魔王は魔神の力を宿したジークに突っ込んでいく。


「……いいじゃねえか、これが戦争だ! てめえらも楽しんでいけよ!」


 ジークはそんな二人を視界に入れつつ戦場を眺めて楽しそうに言い、戦闘狂の笑みを浮かべ二人の魔王に応じて突っ込んでいく。


「……そうよね。戦わなきゃ、他のメンバーが魔王を倒してくれたっていうのに、副マスターとして情けないわよね」


 白い炎で出来た身体を持つ巨大な鳥――シュリナが言って、怠惰中は力なく落ちていくのみだったが追ってくるレヴィアタンに白い炎をぶつけ、体勢を立て直して急上昇する。


「……私としたことが、怠惰に負けるとはな。剣の道は一度でも怠けてはいけないというのに」


 腰に刀を構えた状態で膝を着いていたカナが自嘲気味に微笑んで立ち上がる。


「……すまない、魔王サタン。では、始めようか。充分に溜めさせてもらったのでな、柳田流刀術奥義、見せてやろう」


 カナは言って、怠惰になっていたカナを倒そうと少し近付いてきていたサタンが足を止める。


「「……」」


 ザッ、とカナが居合いの構えを取ると、両者の間に緊迫した空気が流れる。


「……柳田流刀術奥義」


「……っ!」


 カナがサタンを円状に囲むように増えていく。その数二十。


「――煌々蓮華・霞!」


 奥義の名を叫び、動き出す。


 サタンの真後ろにいたカナが高速でサタンに突っ込み抜刀して斬りつける。サタンの皮膚が硬いからか致命傷にはならなかったが、直撃させることでダメージが大きくなった。呻いてジリジリと周囲を見渡し、注意深くカナ二十人を見据えるサタン。そのおかげで次も背後を取ろうと突っ込んできたカナを刀で迎え討つことが出来た。そのカナを袈裟斬りの一撃で切り裂くが、手応えはなく消えてしまう。その代わりに後ろから突っ込んできていたカナ三人の連続攻撃によりさらにダメージを重ねた。


「……ぐっ、おおぉ! ニルヴァーナ!」


 サタンは大して威力が高い訳ではないが続けて受けると危険な攻撃に苛立ったのか、刀を横薙ぎに一周させて自分の中心にドーナッツ型の黒い斬撃を放ち、二十人のカナをまとめて切り裂く。いや、正確には切り裂いたのは十九人のカナであり、本体と思われる一人のカナは屈んで斬撃を避けている。


 さらにカナの一人が黒い斬撃を掻い潜るように低い姿勢で疾駆してサタンに突っ込み、居合いで脚を斬りつける。サタンは次に突っ込んできた右のカナを切り裂くが、手応えはなし。その間に近付いてきていた五人のカナに全身を切り裂かれ、ダメージを重ねてしまう。しかもその攻撃を受けて出来た隙を狙って、残る八人のカナが連続してサタンの全身を切り刻みサタンのHPを大幅に減らす。


「……っ」


 サタンは全身に切り傷を作り息を荒くして棒立ちになっていた。ダメージが重なりすでにHPはレッドゾーンに達している。


「……煌々蓮華・月!」


 最後、カナ二十人が一斉に叫んでサタンに高速で突っ込み、手に持つ刀をサタンに身体に深く突き立てる。


「っ……!」


 さすがにこれではサタンの硬い皮膚も耐えられず、二十本の刀がサタンの全身を貫いた。その内の一本がサタンの心臓を貫いていて、HPはレッドゾーンから一気に真っ白へと変わる。一撃死の効果でサタンの全身の刺し傷から血が噴き出て、カナを濡らした。


「……いい戦いだった。またやろう」


 カナは鮮血に全身を濡らしながら微笑むと、悠然と倒れるサタンを放ってその場を去った。


 ジークの声による効果が続いており、まだまだ倒し足りないのだ。カナは周囲を見渡して最初に視界に入った敵の悪魔を獲物に設定し、余韻が残る内に刀で首を切り落とし、血飛沫を浴びる。


「……」


 ジークの声は戦闘狂を促進させるモノだったからだろうか、カナは鮮血を全身に浴びながら、恍惚とした表情で微笑んだ。


 ……カナがSに目覚めた瞬間であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ