悪魔と歩く兵器
……俺も武器が欲しい。まあ、無理な話だが。
「リューシン、オークキングの紋章はゲット出来たのか?」
戦ってないが。
「ああ。オークとオークキング、ばっちり両方ゲットしたぜ」
じゃあ俺もゲットしたよな。
「……なあ。一つ提案なんだが」
「どうかした?」
ああ。
「次んとこのボス行かね?」
「はあ? 難易度が次に楽っつっても、始まりの草原とはレベルが違うんだぞ、勝てるかどうか……」
リューシンに否定される。
「大丈夫だ。もし全滅しても、シュリナの上限レベルが上がるんだからいいし、オークキングの力も試してみたいしさ」
いいだろ?
「そういうことなら、私はいいわよ」
「……私も別にいい」
「……ったく。しょうがねえな。それでいいよ」
二人が承諾してくれて、渋々リューシンもオッケーしてくれる。
「よしっ。んじゃ、次んとこ行くか!」
今回は俺が仕切って、次んとこに向かう。
「……ところで、次んとこってどこだ?」
ガクッ。
三人が肩を落とした。
まあ、そんな感じで幸先が不安になるスタートを切った。
▼△▼△▼△
「ここなのか?」
俺達は始まりの森に来ている。
「ああ。ボスは確か、フォースウルフだ。ここのモンスター、ファングウルフの親玉みたいな感じだな」
ああ、あいつの。ウルフの元になってるヤツだよな。
「フォースウルフはこの辺だと難易度低い順で初めて戦う、魔法を使うモンスターよね」
マジか。ってか、シュリナはβテスターなのか?
「……ん。素早さアップとストーム系魔法のハズ」
よく知ってんな。ティアナまで。
「二人はβテスターなのか?」
「違うわよ。ネットの掲示板読んだだけ」
掲示板?
「βテスターとかが攻略の情報とかを書き込むサイトだ。DIWのプレイヤーの三分の二がアクセスしてる」
凄いな、そりゃ。
「今度見てみようかな」
右も左もわかんねえし。
「それがいい」
リューシンがうんうん、と頷く。
「ちょっと待ったぁ!」
いきなり、巨大な人影が立ちはだかった。……何? ボスに挑もうとすると人に会うんかね、俺達。
「何か用か?」
美少女じゃないので、リューシンが対応しない。仕方なく俺が聞いてみる。
「ああ。俺はジンオウ。難職でな。パーティーはいないが地道にレベルを上げた、のはいいが、ボス戦ともなると一人では厳しいため、パーティーを待っていた次第だ」
……ふむ。言葉遣いもアレだが、姿が物凄い個性的だ。
ジンオウというゴツい青年(?)の姿は奇妙だった。身長が170ちょっとある俺より高く、180ぐらいあるんじゃないだろうか。筋肉隆々で体重は結構ありそうだ。レベルを上げてたらしいから装備がいいのか、重そうな甲冑で身を包んでいる。
……が、両手がサイボーグだった。右手は大砲のようなものが肘から付いていて、左手は肘から先が機械で出来ていて、アレで殴られたら痛そうだ。そして、スキーゴーグルのようなものを付けていて、レンズは薄紫だった。
髪と目は黒で、ボウズにしている。
「……サイボーグか、あんたは」
とりあえずツッコんでおいた。
「まあ、そう言われても反論出来ないが。とにかく、ステータスを見てパーティーに入れるか決めてくれ」
ジンオウは苦笑して、器用に左手を振る。
職業:機械兵
種族:ドワーフ
レベル:13
HP 700
MP 0
STR 630
DEF 630
AGI 0
DEX 0
INT 0
MDF 630
VIT 0
LUK 630
振り分けポイント残数:120
装備 防具
頭:命中ゴーグル
腕:機械の甲冑
胸:機械の甲冑
腰:機械の甲冑
脚:機械のシューズ
武器
左手1:マシン・アーム
左手2:手砲
左手3:マシンガン
左手4:マシン・バズーカ
右手1:マシン・アーム
右手2:手砲
右手3:マシンガン
右手4:マシン・バズーカ
スキル
『絶対防御』
『マシン・アーム』:【ロケットパンチ】
【メタルナックル】
『手砲』
『マシンガン』
『マシン・バズーカ』
『重機の達人』
『ボディプレス』
機械兵:身体がサイボーグになり、ありとあらゆる武器が使える。ただし、攻撃が避けられない、動けない。命中率は装備とLUKでカバーする。攻撃と防御に関しては全職業トップ。レベルが上がるごとに武器が増え、ロボ化していく。
……強っ! 難職だと思うけど強っ!
「ジンオウって強いな。パーティーの盾にもなるし、遠距離からの攻撃も出来るし。俺だったら即答でオッケーするけど?」
言って、三人の方を向く。
「いいな。正直、遠距離要員が欲しかった」
「強いし、いいと思うわよ」
「……ん。問題ない」
三人共いいらしい。
「んじゃ、オッケーだよろしくな」
「ありがたい!」
深々と頭を下げて言う。
「おう。俺はジーク。ソウルイーターだ」
「俺はリューシン。紋章人で、βテスターだ。わからないことがあったら聞いてくれ」
「シュリナよ。フェニックスっていう職業よ。よろしく」
「……ティアナ。黒神」
四人で手を差し出す。
「うむ。よろしく頼む」
通常より巨大な機械の左手で四人の手を握った。
こうして、始まりの森ボス戦の前に個性的なメンバーが加わった。