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Dive in the world   作者: 星長晶人
第三章 大魔王軍の侵略編
49/108

魔神と知り合いの実力

「……」


 う~ん。


「シアス、お前、巫女服止めろ」


 俺は悩んだ末、シアスに言う。


「えっ? いきなり何で?」


「だってさ、お前よりカリンの方が似合ってるし。弓道部で着るあれでいいから、変えろ」


「……むぅ。分かったよ、じゃあ、ちょっと買ってくるね。先行ってて」


 シアスは不満そうだったが、結局駆け足で去っていった。


「お兄ちゃん、私が変えよっか?」


「いや、カリンは似合ってるからいいって」


 俺は言って、狩りに行くエリア1の広大な草原に向かう。


 やっぱ、試すならここだよな。


 雑談してわかったのは、三人のレベルとこれまで何やってたかだった。職業は後の楽しみにされたが。


 カナ(呼び捨てするように言われた)はソロでやってたらしい。レベルは三十七。


 カリンとカレンは姉妹でパーティーを組み、協力して戦っていたらしい。レベルは三十四。


「広大な草原って、何が出るんだっけ?」


「ゴブリンとかだな」


 ってか、ゴブリンとしか戦ったことないような?


「ふーん」


 カリンは言って、俺の腕に抱き着く。姉ちゃんがあれだし、甘えたい年頃なのか?


「んじゃ、行くか」


 ▼△▼△▼△


 というわけで、広大な草原にやって来た俺達。


 シアスは白装束に黒い袴というまんま弓道部の格好で来た。


「じゃあ、一人一ゴブリンの群れを撃破してくれ。ウチのギルドはそれが入団試験みたいなもんだから」


 リューシンが三人に言う。


「ところで、一つ質問いいかな?」


 カナが言う。


「君は誰だ?」


 リューシンに向かって言った。


「……そう言えば、自己紹介がまだだった。俺はリューシン。ジークのクラスメイトだ」


「……先輩には敬語を使うのが常識じゃないのか?」


「えっ? あの、ジークは……」


「ジークとは長い付き合いだからね。初対面の後輩に敬語を使われないのは、少し落ち込むよ。先輩としての威厳がないからね」


「……はあ、すみません」


 カナは上下関係に厳しいんじゃなく、礼儀に厳しいんだ。武道やってるからか?


 それか、リューシンにタメ口を聞かれるのが本能的に嫌だったか。


「じゃあ、戦い慣れてるってわけじゃないが、カナからよろしく」


 適当なゴブリンの群れを見つけ、カナの実力を見せてもらうことにする。


「わかった。……ジークの前だと少し緊張するよ。腕が落ちてないか心配でね」


 少し苦笑して、カナはゴブリンの群れに向かって歩いていく。


「……」


 あと数メートルのところで止まり、日本刀に手をかける。空気が変わったな。集中してるらしい。


「っ!」


 カナは踏み込んで、日本刀を一閃する。ゴブリンが五体、真っ二つにされた。切り口が綺麗だ。


 カナの現実で使った刀術は、予備動作なしに距離を詰める無動と、居合いが主体となって出来ている。初撃と歩法の二つがあるため、かなり強い。そこにカナの身体能力を加えれば、完璧だよな。


 あとは無動で距離を詰め、日本刀を振ってゴブリンを切り裂いていく。


柳田流刀術やなぎだりゅうとうじゅつ一の型」


 こっちでも使えるらしい。


輪仙華りんせんか!」


 一の型は、円状に斬り、何故かその外側に最高で四つの円が出来、一番外側の範囲まで斬る。


 右の腰に持ってった日本刀を一閃する。それだけで五つの円状の斬撃が、ゴブリン達を切り裂く。


 ……現実でどうやってんだ?


 相変わらずハイスペックな人だ。


「はっ!」


 なんだかんだ言ってゴブリン程度は相手にならず、バッタバッタと斬り伏せていく。


 両断して首を跳ねて頭を貫いて、ゴブリンを全滅させる。


 残りはエリート六体と、キング一体だ。ゴブリンが殺られても、なかなか手を出さないこいつらだ。ゴブリンが全滅すると襲ってくる。近くを通っても攻撃してくるが。


「……っ!」


 エリートとキングだけになったからといって、特に何が変わるわけでもない。ゴブリン達の返り血を、無動で避け、浴びてないカナにとって、エリートもキングも雑魚も、大差ないだろう。


 ま、もうレベルが五十レベに近い俺は、何かぶっぱなせば終わりだが、職業も侍とかだろうし、全体攻撃系の少ない職業で、俺よりレベルが低いならば、強い。


「天煬飛斬」


 俺は武器を使わないから知らないが、柳田流刀術じゃない、刀術とかのアビリティだろう。


 光輝く斬撃が、舞うように日本刀を振るうカナから、七体の方へ放たれる。


 あっさり細切れにし、日本刀を収める。


「……」


 細切れになった七体がポリゴン体になって消えていくのを背に歩く美人。……絵になるな。


「さすがだな。やっぱ、問題ないか」


「当たり前だよ。改めて、37レベの全てを切り裂く者侍だ。主に使うのは、現実でやっていた柳田流刀術だけどね」


 侍らしい。まだ三次職だが、かなり強い。


 ちなみに、45を越えた俺、リューシン、ティアナ、ジンオウは四次職になっている。シュリナはデスペナルティに悩んで、なかなか死ねないでいた。45で止まるが、デスペナルティで1下がるので、四次職から一個下がる。まあ、転生で上がるステータスが高くなるかもしれないから、一回四次職にしてからの方がいいが。


 他も43、4がほとんどで、もうすぐ全員が四次職にいく。ああ、シアスはまだだけどな。


「次は私の番だね」


 ひょこっと前に出てカリンが言った。


「いいのか?」


 姉のカレンから先でもいいんだが。


「いいの。お兄ちゃんも知ってるでしょ? これでも、薙刀はかじってたんだから」


 カリンが得意気に言う。まあ、そうだが。


「じゃあ、カリンからいくか」


 カリンが立候補したので、カリンからにする。


 しばらく歩いてゴブリンの群れを探す。


「おっ? ……キングはいないな」


 俺はゴブリンの群れを見つけたが、キングがいなかった。まあいいか。


「あれを全滅させればいいんだよね?」


 カリンは無邪気な笑みで物騒なことを言う。


「ああ」


 カリンは俺が頷くのを確認してから、ゴブリンの群れの方に歩いていく。


「カリンも、そういや薙刀やってたんだよな」


 見かけによらず、強いらしい。見たことはないが。


「一度手合わせをしたことがあるよ。まだ伸びる逸材だと思ったね」


 カナが言う。超達人のカナが言うなら相当だろう。


「っ!」


 カリンは身の丈程もある薙刀を軽々と振り回し、ゴブリンの首を跳ねたり心臓に突き刺したりしていく。……さすが、流れるような攻撃だ。薙刀術とかそういうスキルもあるんだろうか?


 あっという間にゴブリンを半数に減らす。


「お兄ちゃん、見てて。これからが私の力だった」


 カリンは笑顔で手を振る。……襲い来るゴブリン達を背に。


「ノーム、お願い!」


 何かに何かを頼んだ。……さっぱりわからん。


 半透明な茶色肌の鼻のでかい小人が現れ、地面に手をつき、トゲをいくつも出現させる。


「精霊使いか」


 精霊?


「精霊ってのは、普段は見えないが、力を使う時だけ姿が見える存在だ。あれは土の精霊・ノームだな。おそらく、頼むとランダムに技を使ってくれる。精霊ってのは見えないだけで万物にいるんだぞ」


 リューシンが俺が知らないとわかってか、説明する。


「サラマンダー、お願い!」


 今度は半透明の赤い蜥蜴みたいなヤツだ。何か聞いたことあるような気はするんだけどな。


「火の精霊・サラマンダーだ」


 リューシンが言う。


 サラマンダーは口から火の球をいくつも放ち、ゴブリンを攻撃する。


「ウンディーネ、あれをやって!」


 あれ?


「水の精霊・ウンディーネだ」


 下半身が水の小人の少女だ。


 ウンディーネはカリンの薙刀の刃に水の刃を纏わせる。


水燎斬すいりょうざん!」


 カリンはそれを横に一閃する。


 水の巨大な斬撃を放ち、残りを全部両断した。


「水燎斬は元々、水の斬撃を放つアビリティだからな。ウンディーネの力を上乗せして、まとめて倒したんだな」


 ふーん。上乗せってのがあるのか。覚えとこ。


 最後はカレンだが、そのカレンが問題だな。


 俺はあまり木のない広大な草原の木の陰に隠れ、顔を覗かせているカレンを見て思った。

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