悪魔とボスバトル
「私達が難職だってことは証明したわよ」
「そうですね。よろしくお願いします」
「よろしくな」
「……よろしく」
「よろしく」
四人が様々に言って、リューシンの案内でボス戦の場所に向かった。
「ところであなた達の名前は?」
シュリナが聞いてきた。そういや言ってなかったな。
「俺はリューシンだ。職業は紋章人」
リューシンが元の口調に戻して言う。
「俺はジーク。職業はソウルイーターだ」
俺も続いて言う。
「どういう職業なの?」
「紋章人は敵モンスターを倒すと紋章が入手出来て、その紋章を使ってバトルするんだ。まあ、実際に見た方が早いけど」
「ソウルイーターも紋章人と同じようなもんだ。敵モンスターを倒すと魂を入手出来て、その魂を使ってバトルするんだな。使い方は紋章人と違うが」
「ふーん。難職なのね?」
「ああ」
ティアナと同じくらいにはな。
「着いたぞ。ここでブタゴリラって叫ぶと出てくる」
どんなシステムだ。
「……ブタゴリラーー!」
俺は大きく息を吸って叫ぶ。
「……おいおい。早速呼ぶのか?」
「ああ。さっさと終わらせて、飯食わないといけないしな」
もう昼飯の時間だ。
「それが理由?」
「もちろんだ」
俺はシュリナに頷く。
『ブタゴリラではない! オークキング様だ!』
デカイブタゴリラが立っていた。三叉の槍を持っている。
ーーーーエリアボス出現。交戦人数四名。イベントクエスト発生。『一騎討ち』が発生。
目の前に現れたウインドウを見る。ふーむ。面倒だ。
『出でよ、我が同志達よ!』
何十体のオークが出現する。二メートル程のブタゴリラ。武器は槍らしい。
『俺様の相手は貴様だぁ!』
オークキングが俺に向かって三叉の槍を振るってくる。
「おおっと」
この程度の速さなら避けられる。
「一騎討ちしろってんだ。オークキングは俺に任せとけ」
「……頑張れよ、ジーク」
「死んだら代わってあげるわ」
「……頑張って」
三人から言われてオークキングと睨み合う。
「いくぜ。ビーストソウル“ウルフ”」
俺の姿が変わる。
手の爪が鋭く、長くなり、肘まで灰色の毛が生える。脚も爪が鋭く、長くなり、膝まで灰色の毛が生える。灰色の尻尾も生えて、髪が銀髪になる。牙が伸びて、目付きが鋭くなる。顔の頬まで毛が生えた。
変わってから、駆ける。普段の二倍以上のスピードで。
「はっ!」
俺は素早くオークキングの懐に潜り込み、腹に拳を叩き込む。
『ぐふっ!』
ウルフの筋力も加わってるので、かなりダメージがある。
「お、らぁ!」
オークキングがくの字に曲がった後、思いっきり蹴り上げた。
『ぬうっ!』
重い身体が僅かに浮き、少し吹っ飛ばした。
「ウルフじゃイマイチだな。ビーストソウル“レオン”」
今度はあまり変わらない。毛が金色になり、髪の毛が増え、逆立ったぐらいだ。
「レオンナックル!」
右手にオーラを溜め、獅子の形になってから殴る。
『ぐおおおおおぉおおぉぉ!!』
オークキングが呻いて、遂に倒れる。HPはあと半分ぐらいか。
「百獣拳!」
両手に獅子のオーラを纏い、連続で殴る。
『くっ! おおおおおおおぉぉおおぉ!!』
が、攻撃をくらいながら立ち上がった。
「おぉ」
やるな、オークキング。
『旋風刃!』
オークキングが三叉の槍を振り回して風の刃を生み出す。
「へぇ。ビーストソウル“ウルフ”」
また、ウルフに戻す。パワーで言えばレオン。スピードで言えばウルフだ。
「ウルフスピリッツ!」
灰色のオーラを出す。
「天狼牙!」
四肢を地面について、四本足で、風を切り裂きながら駆ける。
オークキングの元に辿り着き、巨大な狼のオーラで咬みきった。
『ぐ、まさか、これほどとは……』
オークキングはHPが真っ白になり、ポリゴン体になって消えた。
「……ふぅ」
意外とボスって強いな。苦労した。
「お疲れ、ジーク」
リューシン達も終わったらしい。
「おう。何かもう、ログアウトしたい」
疲れた。
「飯食うんだろ。じゃあ、二時にはログインしろよ」
「了解。三人共、飯ん時ぐらいゲーム止めろよ」
一応言って、ログアウトする。
▼△▼△▼△
「いやー、ボスは疲れたな」
一旦昼飯を食って、またログインして三人に会った。
「……で、飯は食ったんだろうな?」
三人を睨んで言う。
「「「……」」」
三人揃って目を逸らしやがった。
「飯ぐらいちゃんと食え、この廃人共」
よし。このパーティーの時は俺がログアウトするまで見張ろう。
「ついな。ボス戦でいいアイテム出たから調子に乗って狩りまくっちゃって」
この野郎。
「はぁ。まあ、終わったことは仕方ないが、飯と睡眠、風呂は厳守な。サボったら俺が盾として使うからな。覚悟しとけ」
指を突きつけて言う。これくらいしないと廃人はログアウトしないからな。
「わかったよ、ジーク。ちゃんとログアウトするから」
リューシンが苦笑して言う。
「そっちの二人もだぞ」
「わかったわよ」
「……わかった」
二人も頷く。よし。
「で、ボスのいいアイテムってのは?」
さっさと本題に入る。
「俺のでな。新しいガントレットが作れる」
ほう?
「良かったな。二人の装備は誰が作ってるんだ?」
「レベルに合わせて変わるのよ。作らなくていいわ」
「……うん」
そりゃ楽だな。俺は防具は作ってもらわないといけないし。