これからも
これにて完結となります。
全プレイヤー参加の喧嘩祭イベントが幕を閉じた。
俺は色々あったが結果的に個人ランキング一位を獲得することができた。交渉次第でなんでも手に入る、という雑な報酬だったわけだが。
「クイーン、てめえの顔面を一発殴る権利を寄越せ」
と、そう登場した“乗っ取り女王”に向けて告げてやった。本人は言われた直後きょとんとしていたが、すぐに面白いと笑みを浮かべて希望通りの報酬を渡してくれる。
てっきり嫌がるかと思っていたのだが、案外普通に受け入れてくれるモンだなと思いつつ積年の恨みを込めて思い切りぶん殴ってやがった。正直仮想の身体を殴ったところで効果ないとは思うんだけどな。俺の気分の問題だ。
その後クイーンの頬が腫れていて芸が細かいなと思ったモノだ。
それからギルドとしてではなく自分勝手な行動をしたとして俺とリューシンは揃って正座させられ、メンバーの前で散々説教を受けた。
もちろんその後でリューシンが勝手にイベントを開催したことを説教する流れになったのだが。
DO・GE・ZAで許してもらっていたが。ある意味では日本人の鏡だな。やっすい土下座にはなるが。
「なぁ、ジーク。ゲームってのは、確かにモノによっちゃあ強い敵と戦っていくだけの単純作業になるモノもある。でも連続で力押しできる敵が出てきたって、次は違うかもしれない。若しくはゲームのコンセプトが力と力のバトルなのかもしれないが、そうじゃない場合でも少しプレイしただけで結論を急ぐのは悪手ってヤツだろ。せめて最後までプレイしてから結論を出して欲しい……とは思うが、まぁ世の中には色んなヤツがいるからな。同じことの繰り返しばっかで飽きるってのも気持ちはわかる」
俺も最後までやり切るの精神でやってきて、最後までやっても結局搦め手の敵が一切出てこなかった単純なゲームにも当たったことあったけどな。と苦笑する。
色々仲間達と話し合った後、俺はリューシンとギルドホームの外で話していた。
「でもまぁ、このゲームはそうじゃないと思うんだよな。色々と制限のあるバトルとか、環境によってギミックがあるとかさ。いくらでもやりようはあるけど、単純にするにはちょっと勿体ないゲームだし。だから、まだまだ楽しめると思うんだよ」
「……」
「ってことで、最後までやってみようぜ。な?」
ぱしん、とリューシンが俺の肩を叩いてくる。――俺はそれに顔面を殴り返した。
「ほべぇ!?」
「あっ、すまん。顔に蠅止まってたぞ」
「ゲームで蠅まで表現してるわけあるか! しかもそういう時は普通ビンタだろ!?」
「いや俺はマジでグーパンで退治してるからさ。……つーかよ、お前になんか言われなくたってわかってるっての」
「……お、おう」
少し、ほんの少しだけ気恥ずかしいことなので本人には言わないが。こいつ含めた仲間達に教えられた、と言っていい。ゲームは楽しい。元々あまりゲームをやってこなかった俺は燃え尽きた感があったのだが、見事に再熱させられた。
「……あれ? ってことは俺殴られ損じゃね?」
「いつものことじゃねぇか?」
「確かに……って、それが一番ダメじゃね!?」
「染みついちまった習慣は消せねぇなぁ」
「ひでぇ!?」
言い合っていると、聞いていると危機感を覚えそうな切迫した警報が鳴り響いた。何事かと思って身構えると、無機質な音声が警告を発している。
『警告、警告。正体不明の巨大な影が襲来。住民は直ちに避難し、戦える者は迎撃してください。繰り返します。警告、警告――』
つい最近前のイベントが終わったばっかりだぞ!? とリューシンは慌てているのを尻目に、俺は音声にあった巨大な影とやらを探して視線を巡らせる。
……いた!
見つけて、ニヤリとした笑みを浮かべた。
ヤツは本当に大きく巨人のような姿をしている。ゲームを始める前の記憶なので曖昧になりかけているが、現実の高層ビルくらいはあるんじゃないだろうか。ただ人の姿をしているわけではなく、人型ではあるのだが黒いモヤのようなモノに全身が覆われていた。やたら手が長く、おおよそ下半身のようなモノがないのも特徴の一つだろうか。ちらっと見えた感じではそのままスライムのように地面と接着しているみたいだ。黒い全身の上の頭と思われる個所に赤く丸い光が目のようについている。身体にも縦に長い赤い光はあるが、まぁ生物とは思えない姿だよな。
「い、今のって……っ!?」
「なに、あれ……」
「……大きい」
警報を聞いてか仲間達もギルドホームから出てきて、ヤツを見つけ呆然とする。
「おい、お前ら! 楽しそうだ、さっさと行くぞ!」
俺はにこやかに仲間達へと声をかけた。それに対して、大抵は仕方ないなという苦笑を浮かべているのだった。
これからも、俺達の戦いは続いていく。
この『Dive in the World』のゲームをクリアしたとしても。
ゲームの中に閉じ込められるというアクシデントこそあったが、それでもまたゲームをするかもしれない。
また次も、こいつらとならきっと楽しめる。
だからまだまだ、俺達の戦いはこれからだ。
「じゃあ俺達の戦いはまだまだこれからだ、ってことで!」
「はぁ!? お前それ、最後まで走り切らないヤツじゃねぇか!」
リューシンがツッコミを入れてきたが、無視して悪魔の姿になり空へ飛び立つ。目指すは黒い巨人。そして、次の戦いの場だ。
「さぁ、行くか――!」
まだまだきっと、楽しいことはいっぱいある。そう思えるだけで、世界は変わるのだ――。
前回に引き続き打ち切り感が強いですが、この作品はこういう完結を思い描いていました。見切り発車はダメということがより強く判明した作品でしたね。
完結させると宣言してからどれだけの歳月が経過してしまったかは考えたくもないですが、そろそろ他の作品も進めていかなければなりませんね。
……新作はないので次回作にご期待くださいとも言えんな。




