世界に挑む平成建国政権 第0、1章
来たる総選挙に備えて。
2013.07 参院選挙に備えて。
暫定憲法統治機構の | | が正しく表示できません。
http://manpitu.blog.fc2.com では正常に表示しています。
是非ご確認ください。上記ブログではこの創作に至る思考過程を
[天からお金が降る社会][極楽の園へ羽ばたく30年後の日本]
に記述しています。ご一読頂ければ幸いです。
題 名 世界に挑む平成建国政権 2012.08.15 大国主 みこと
2013.06 今も大差ありませんが、
特に2012年の政治状況を風化させず、当時を印象付けるため内容を一部微修正しました。
目 次
第0章 暫定憲法統治機構
国家設計の設計仕様を記す。
第1章 クーデター勃発
自衛隊の一部隊が議事堂を占拠し衆参議員を拘束する。
第2章 政権樹立
暫定憲法の発効を議決させ政権を樹立する。
第3章 外交の始動
防衛大臣が米国を訪問、各大臣が活発な外交を展開する。
第4章 平成憲法起草
政権は起草手順の発表後に平成憲法起草の延期を発表する。
【はじめに】
これは2012年当時、国家設計なきゴミ政党達が繰り広げる日本崩壊の危機を
目の前にし、国家設計とは何かを例示する創作である。
ここに記す暫定憲法統治機構は国家設計の設計仕様である。
【国家設計について】
理工系の人達は研究・開発・設計を経て世の中に何かOOを世に送り出す場合、ニーズとOOの設計主旨を明確に定め、設計仕様、概略設計、詳細設計へと段階を進め、OOの設計が充分に機能を満たすかを検証し、その耐久性もテストする。
製作段階ではOOを設計通り如何に製作するか、品質を如何に保つか、販売段階ではOOを如何に世に広めるか、OOを如何に使用させるか等など、多くの人々の緻密な連携によるジョブ工程を経てOOを世に送り出す。
これはOOが黒ヨンダム建設と発電事業であれ、60年代のアポロ月着陸事業であれ、成功したOOの手順、ジョブ工程に大差はない。
しかるに文系の方、経済専門の方達は侃々諤々、当たるも八卦、当たらぬも八卦の八卦論争をしているし、政治専門の方達は“群盲象を撫でる”如き議論を経て欠陥商品を世に送り出す。単に専門分野から眺める断片的な議論の域を出ず、国家設計と呼べる総合的な知見は見当らない。
大抵の場合、世の中は文系の思考中心に動くにも関らず、私達は極めて非科学の時代を生きている。
数十年後、国家設計の各設計を実践する前にスパコンでのシミュレーションにより、検証できる時代には、経済学者とか政治学者は経済科学者、政治科学者と呼称できる。
理工系の設計では至る所で、コンピュータシミュレーションによる設計検証は常態であるが、政経を生業とする人々の繰り出す政策の総てが八卦政策である。断片的な知見を八卦論争して検証だと心得違いする有様である。
これは製造現場で云うところの一部の工程に携わる職人に相当し、とても研究者・開発者、技術者の域ではない。しかもこの職人は往々に欠陥商品も送り出す。常に世に役立つ製品を送り出す製造現場の職人とは技量が違う。
いわんや政治家は作業者のレベルである。何故なら国家設計もないまま寄り集り、その場、その場をやり繰りし、何ら進展なくトラブルを繰り返す。これは日本の失われた20年を達成した彼らの政策が証明する。
そもそも貨幣経済は人間の発明だが、歴史上未だかって人間が望む状態に制御できたことがなく未発達な時代が続く。
とは言え1つだけ明確な原理が存在する。誕生以来の地球生命は連綿と続く個体維持と種族保存をDNAに組込み、堅牢な生存意思を有する。人類も例外でない。故に人間社会は個体維持と種族保存を多数が充足できる社会を求め、亀の歩みで社会変革を繰返した。
身分制度(貴族社会、奴隷制度等)を崩壊させ、労働、資本階級を過去に追いやり、植民地帝国主義を消滅させ、個体維持と種族保存に致命的ダメージとなる闘争や戦争の回避と、個人や社会の格差是正がより多数にこれを充足させ得ると気づく段階に達した。
理工系の設計主旨はOOに応じ多様である。これに対し国家設計は多様だが、設計主旨はDNAの欲求を多数に充足させる。これが唯一であり、且つ自然界が定めた不変の原理である。この充足に逆らう設計主旨の国家設計は品質が安定しない。唯一且つ不変の原理である設計主旨を共有しない集団は有象無象の集合である。
国民はポット出の素人集団が国家運営する危険を充分に堪能し味わった。選挙目当ての薄っぺらな紙切れしかない政党達、しかも3年後に決めるとうそぶく政党はゴミである。
政党を当面存続させるなら、日常に総合的な国家設計と設計主旨を明確にさせる。国家設計仕様として統治機構、各種設計として少なくとも中央省庁の政策を概略設計して明確にさせる。日常にこの程度の準備なくして世界の速度に順応する政権たり得ない。
だが政治家のレベルは国民のレベルとの金言は尊い。ここ100年清河を待つ無益を脱すなら、ひたすら居眠りして事足りる議会制民主主義、妖怪と化け者の跳梁跋扈を許す利権代表制民主主義の間接民主主義を廃し、直接民主主義が、国民の政治的成熟を促す次世代の政治体制だと確信する。
国家設計の設計主旨とは、国家に必要な種々の設計が常に不変の原理を満たし、なぜその設計が望ましいかを<充分に説明する内容>と定義したい。
【あらすじ】
防災訓練中の自衛隊が国会議事堂を占拠し、衆参両院議員を拘束し、暴徒であった彼らが暫定憲法を制定公布の下に、政権を樹立する物語である。
権力を手にするや軍事独裁政権を公言するが、実際の政策は世界の先進国に例のない直接民主主義の統治機構と、世界の経済は間違った方向に進むと喝破し、世界の潮流に掉さす公平経済政策と称する独自の政策を推し進めると共に、国内にあっては政官財の利権構造を徹底的に破壊する。やがて国民からも平成建国政権と命名される。
この政権は樹立直後、間髪を入れず下記の国家設計の設計仕様と各種設計を発表する。
【国家設計の設計仕様要約】
1.中央行政府
1)国務と国家安全保障会議の指令部機構と、国務府統治機構
2)外務、防衛、治安、法務、電波・通信は現業組織を保有
他の省は企画立案を行い、企画案は地方行政府が執行
3)国税庁が徴税を一元化、法人・団体に例外なき課税
4)行政、司法、立法の全統治機構の予算執行監視と監査の徹底
2.地方行政府
1)市区町村の議員を廃止
公募し抽選した地方官が条例を審議し、条例の可否は住民が採決
2)都道府県議員は廃止
都道府県庁組織は現業組織を保有しない中央行政府の出先機関化
3)北海道から沖縄までを8人の地方総督が都道府県知事を統括
3.立法府
1)国会議員を廃止、国民官が予算案、法案の審議のみを実施
2)全有権者1割の立法権者が予算案、法案の可否を投票により採決
3)暫定憲法の期間中は国民が習熟のため立法権の一部を機能停止
4.司法府
最高裁、高裁、地方裁、民事/家庭裁、行政/海難/知財審判所
5.統治機構の責任者選任
1)国務総理、最高裁長官は立候補による全国有権者の投票
2)市区町村の首長は立候補による地域有権者の投票
3)地方総督/都道府県知事は公募による公開討論を経て、
地方総督は国務総理が任命、知事は地方総督を任命
4)国民官は政党別推薦、無所属公募の各割当数を抽選して選出
5)立法権者は全有権者の1割を地域年齢男女別に抽選して選出
――――――――――――――――――――――――――――――――
【国家設計の各種設計要約】
6.国際経済政策
1)日本国外投融資銀行と、日本国内融資銀行を創設
2)世界経済の自由化に掉さし、国産品の優先使用と自給政策実施
7.財政改革
1)特別会計を生活保障、医療介護、国債、外貨の4つに整理統合
2)社会インフラの組織体新設とその運用会社、国債専用市場の創設
8.社会保障制度
1)国民が自らを守り積立てる掛け金で成り立つ生活保障
生活保障給付計算機構の個人計算に基づき市区町村の給付実務
2)例外なき法人、団体が全国民の医療介護費用を供出
給付検証機関による個人給付の電算入力
医療介護給付電算所の個人給付計算に基づき市区町村の給付実務
3)国が義務を負う完全雇用と職業訓練
国民皆雇用の推進を掲げる雇用政策と各種職業学校の活用
以上1)2)3)を理念とする国民の安心安全制度の確立
9.教育制度は、(明日の国民を育てるために)
1)日本の歴史教育、道徳、職業倫理教育の徹底
2)社会ニーズにマッチする職業人の育成と的確な需給計画
3)教職者の国家試験制度創設
10.マスコミ政策(今日の国民を育てるために)
1)自社の媒体による自社関係者の主張または提言の禁止
2)テレビ、新聞による行政監視報道の義務化
――――――――――――――――――――――――――――――――
【国家設計の特筆施策】
A.日本国外投融資銀行の創設
本銀行の創設は国際為替レートの乱高下に関係なく、企業経営安定のため充分に円安の国内専用為替レートを適用する。
日本の親会社が国外子会社へ物品を輸出する場合、子会社が国外で獲得外貨を本銀行に振り込めば、例えば80円/ドルの時でも100円/ドルの円安レートで円転する。
本銀行の円転原資は日銀が供給し、この円転された円貨は親会社の収益となって日本国内でのみ流通するため、日銀の通貨供給量を調整しインフレを防止する。従って国の借金にはならない。本銀行が円転のために獲得したドルは、日本企業の国外進出に投融資し積極的に活用する。
本銀行政策の下では積極的な円高政策を展開する。これは輸入品コスト低減と、日本企業の国外進出に際し、外国資産の安価な購入を可能にする。これはあくまで日本の国外進出企業が獲得した外貨による外国資産の購入であり、決して日銀券によるものでない。
本銀行政策により効果のない為替介入を即時中止する。ドル買いの原資円貨は借金となるばかりでなく、国際市場で流通して投機筋に軍資金を与える。且つ価値の目減りが続くドルを貯め込む馬鹿げた結果となる。
B.日本国内融資銀行の創設
日本国内に進出する外国企業専門に融資する。円高政策による外国企業の進出難を軽減し支援する。且つ国内に進出する外国企業の産品は国産品とし、国内、国外企業共に日本の諸制度を適用して競争条件を公平に保つ。
C.原発の高レベル放射能廃棄物の処理
日本に限らず世界の原発廃棄物が、幾千年を超えて地球上に保管する。この現存人の汚物を子々孫々に引き継ぐ身勝手な行為は許されない。
宇宙開発予算は実用性を重視し現世の問題解決に役立てるため、日本は率先して金星(宵の明星)投棄の宇宙技術開発を行い、欧米露に国際共同開発を提唱する。
D.沖縄普天間基地の移転
沖縄から約20km、渡嘉敷から約5kmの無人島・前島の山頂を平らに削り、基地建設を行う。削った土砂は海に投棄せずに、頂上の平坦化に伴う擁壁の隙間に埋め込む。これで関空と同様に騒音の心配もなく、市街地上空を離着陸する危険もない。
【国家設計の設計仕様】
暫定憲法統治機構
[1]暫定憲法行政府
――――――――――――――――――――――――――――――――
中央行政府 |暫定憲法外局|
――――――――――――――――――――――――――――――――
0.国務 国議 | |
総理 官房長官 |宮内庁 |
国務税制局 国務法制局| |
| |
国家安全保障会議 | |
国家情報分析部 常設 | |――――――――
国家防衛・治安指令部 | |国富管理指令部付
国家経済・資源指令部 | | 国家特別機関
国家災害対策指令部 | |――――――――
国富管理指令部 | |日本銀行
| |日本国外投融資銀行
| |日本国内融資銀行
1.国務府 | |――――――――
戦略予算総局:戦略予算案編成|金融庁 |
治安行政総局 |警察庁 |
:運用監督、組織規律監督 |海上保安庁|
機密情報総局:防諜、諜報 | |
拉致被害対策本部 | |
領土紛争対策本部 | |
通信行政総局 | |
:情報公開推進とメディア対策| |
:電子政府開発と運用支援 | |
:電波・通信行政 | |
公正取引委員会、国民賞勲局 | |
――――――――――――――――――――|――――――――――
2.総務省 | |暫定憲法独立行政法人
地方政策:政策指針、格差是正| |――――――――――
人事政策:全ての公務員給与 | |
:採用・抽選・公募事務| |
消費者保護行政(地方と共に)| |消費者危険情報機構
:くじ、ギャンブルの一元管理| |
―――――――――――――――――――――――――――――――
3.外務省 | |
外交政策、在外公館、ODA政策| |外事NPO連合会
―――――――――――――――――――――――――――――――
4.法務省 | |
法務行政、刑務所など各施設 |検察庁|
入国管理局 | |
法務局(都道府県庁同居) | |
*戸籍電子ファイルは法務局が原本管理
*市区町村が運用ファイルを管理、原本登録と同時にコピー連携管理
―――――――――――――――――――――――――――――――
5.財務省 | |
国家予算:民生予算、戦略予算|国税庁 |
財務政策 |+預集部|
―――――――――――――――――――――――――――――――
6.文部科学省 | |
教育・文化行政、スポーツ振興|文化庁|
科学行政(人文、社会、理化)| |戦略研究開発評価機構
―――――――――――――――――――――――――――――――
7.厚生労働省 | |
社会保障政策 労働政策 | |生活保障給付計算機構
医療薬事行政 食品安全行政 | |医療介護給付電算所
乳幼児政策 保育知育 | |
弱者政策(保護と自立支援) | |
―――――――――――――――――――――――――――――――
8.経済産業省 | |
エネルギー政策 | |民間研究開発支援機構
産業政策(銀行 金融除く)|特許庁 |中小企業支援機構
通商政策 産業知財政策 |+機密知財部|企業再生支援機構
―――――――――――――――――――――――――――――――
9.農林水産省 | |
農業、林野 水産 畜産政策| |
農林畜産に関する土地政策 | |
漁港・漁場管理政策 | |
―――――――――――――――――――――――――――――――
10.国土交通省 | |
国土・領海政策 | |国土地理院
排他的経済水域管理政策 | |
道路河川・交通・港湾政策|気象庁 |
防災政策 |消防庁 |
―――――――――――――――――――――――――――――――
11.環境省 |復興センター|
環境行政 |原子力管理庁|
―――――――――――――――――――――――――――――――
12.防衛省 | |
―――――――――――――――――――――――――――――――
*総理、官房長官、国務府各担当大臣、各省大臣を国務官と呼称する
[2]暫定憲法地方行政府
―――――――――――――――――――――――――――――――
地方行政府 |基幹役職 |主な権限 |主な役割
―――――――――――――――――――――――――――――――
1.8地方 |地方総督 |戦略予算執行権|国策の遂行
北海道~沖縄 | 独自組織| |エネルギーと食料
| なし、 |知事への命令権|の地産地消及び
|県組織活用|管区警察命令権|自給自足の推進
*国の配賦予算に基づき、地方総督と各知事の合議で各県へ配賦決定
*総務省は地方域、総督は県域の格差是正予算を保有、調整して配賦
*格差是正予算はひもなし予算して最終的に市区町村へ配賦
*地方総督は藩主、知事は家老の関係、知事は県の利益代表でない
―――――――――――――――――――――――――――――――
2.都道府県 |知事 |戦略予算の執行|市区町村の政策調整
|県庁組織|県警本部命令権|消費者危険情報登録
*市区町村及びと協議、調整して防災政策の立案
*県の徴税は一切なし
*県域の酒税・たばこ税は市区町村の格差是正調整し市区町村に配賦
*戦略予算執行(エネルギー予算、農水省予算、道川港、防災予算)
*県警本部命令権は治安行政総局・地方運用監督部を介して発動
*市区町村の首長は家老の知事に所属する侍大将の関係
―――――――――――――――――――――――――――――――
3.市区町村 |首長 |民生予算の執行|民生の遂行
| | 生活保障 |給付実務
| | 医療・介護 |給付実務
| | 乳幼児・弱者|厚労省予算より執行
| | 教育 |文科省予算より執行
| | 消防・救急 |消防庁予算より執行
| | 防災と活動 |国交省予算より執行
*市区町村は固定資産税、住民人頭割税に限り徴税
*各種行政サービス手数料の徴収
*国の配賦予算に基づき予算立案
*県から配賦の酒税、たばこ税はひもなし財源
*予算案、条例案は住民代表の審議(原則 夕刻以降、土曜は昼)
*予算案は住民代表過半数による可決、住民投票の請求可能
*条例案は住民投票の過半数による可決
*地方行政府は生活保障、医療・介護について加算給付を一切しない
*加算給付は厚労省が決定した基準の範囲内で加算給付団体が給付
*厚労省は加算給付団体とその監視監督団体を登録させて許可
―――――――――――――――――――――――――――――――
[3]暫定憲法立法府
立法府 |基幹役職 | 権 限 | 役 割
―――――――――――――――――――――――――――――――
1.国民会議|国民会議長|委員会委員長任命|立法府予算立案
|国民官 |議長、副議長選任|1)~10)
―――――――――――――――――――――――――――――――
2.常設委員会 |国民官|国民官の権限|委員会審議と公開
国民要望受付| |要望整理公開|1)国民要望受付
予算執行監視| |監視機関認定|2)行政、司法、立法
| |強制する勧告| 各府の予算執行監視
基準部会 |専門員|会計基準作成| 各府の決算監査
予算審議 | | |3)予算案審議
法案審議 | | |4)法案審議
法案部会 | | |5) 部会審議
3.随時委員会 |国民官| |6)大臣、最高裁副長官
罷免審議 | |6)~8)|7)国務総理
| |の罷免審議|8)最高裁長官
| |9)の罷免|9)副大臣、最高裁判官
選任審議 | |10)選任可決 |10)最高裁判官
調査審議 | |証人、参考人招致|
適正審議 | |国民官の適正審議|
―――――――――――――――――――――――――――――――
4.立法権 |立法権者|3)~6)採決|投票の過半数で可決
*暫定憲法では、国務総理は3)~6)採決結果を拒否できる
―――――――――――――――――――――――――――――――
5.罷免 |全有権者|7)8)の採決|投票の過半数で可決
*暫定憲法では、国務総理は7)8)の採決結果を拒否できる
―――――――――――――――――――――――――――――――
*国民官には法案提出権、総理は提出権行使時点で法案の拒否可能
[4]暫定憲法司法府
―――――――――――――――――――――――――――――――
司法府 |基幹役職 | 最高裁長官の権限 |裁判事案
―――――――――――――――――――――――――――――――
1.最高裁判所|最高裁長官|司法府予算立案|憲法、法律違反事件
| |裁判官任命 |死刑、無罪主張事件
| |最高裁判官推薦|上記以外は高裁まで
―――――――――――――――――――――――――――――――
2.高等裁判所|判所長、判事| |刑法犯罪、憲法、法律違反事件
―――――――――――――――――――――――――――――――
3.地方裁判所|判所長、判事| |刑法犯罪、憲法、法律違反事件
|裁判員裁判 | |
―――――――――――――――――――――――――――――――
4.民事裁判所|判所長、判事| |民事事件(控訴:別の民事裁)
|民事弁護士 | |簡易民事事件
―――――――――――――――――――――――――――――――
5.家庭裁判所|判所長、判事| |14歳未満少年犯罪、家庭事件
―――――――――――――――――――――――――――――――
6.行政審判所|判所長、判事| |地方行政訴訟、国家行政訴訟
|裁判員裁判 | | 法律違反事件は地方裁へ
7.海難審判所|判所長、判事| |海難事件
| | |(控訴:別の海難審判)
8.知財審判所|判所長、判事| |特許紛争事件 主に調停、和解
|知財弁護士 | |(控訴:別の知財審判)
―――――――――――――――――――――――――――――――
*最高裁事件を除く裁判は2審までを基本とする
[5]基幹役職の選任と任期及び解任
―――――――――――――――――――――――――――――――
基幹役職 |選任 |任期 |解任
―――――――――――――――――――――――――――――――
1.国務総理 |全有権者投票 |1期4年、2期迄|国民官採決と
| 18歳以上 |通算8年以下 |全有権者投票
―――――――――――――――――――――――――――――――
2.最高裁長官|推薦され立候補|1期4年、2期迄|国民官採決と
|全有権者投票 |通算8年以下 |全有権者投票
*弁護士界、法学界、財界、民間労組、医師倫理会、犯罪被害者協会
国民官が各1名の推薦枠、総理は推薦者から3名の立候補者を選ぶ
―――――――――――――――――――――――――――――――
3.大臣 |総理が任命、解任| |国民官採決と立法権者採決
―――――――――――――――――――――――――――――――
4.地方総督|公募 |1期4年、2期迄|首長のリコールと
大臣格|総理が任命|通算8年以下 |地方域全有権者採決
*地方域市長が公募書類を選考、3名を総理に推薦後地方域公開討論
―――――――――――――――――――――――――――――――
5.副大臣 |大臣任命、解任| |国民官採決
―――――――――――――――――――――――――――――――
6.知事 |公募 |1期4年、2期迄|県域首長のリコール
副大臣格|総督が任命| 通算8年以下 |と県域有権者採決
*各県域首長が公募書類選考、各県3名を総督に推薦後県域公開討論
―――――――――――――――――――――――――――――――
7.首長 |地域住民投票|1期4年、2期迄|住民のリコール
―――――――――――――――――――――――――――――――
8.最高裁副長官|立候補時|1期4年、2期迄|国民官採決と
大臣格 |長官任命| 通算8年以下 |立法権者採決
―――――――――――――――――――――――――――――――
9.最高裁判官|推薦 |1期6年 |国民官採決
副大臣格|国民官の選任採決|通算9年(罷免審議ない者)
*総理と最高裁長官が別個に推薦
*最高裁判官15名中の3名を3年毎に任期満了して新規に選任
―――――――――――――――――――――――――――――――
10.各省局長|公募、大臣の選考任命| |大臣による解任
―――――――――――――――――――――――――――――――
*総督、知事の公募条件:日本国籍30歳以上、
*総務省公募事務局が公募事務を担当
[6]特別機関役職の選任と任期及び解任
―――――――――――――――――――――――――――――――
基幹役職 |選任 |任期 |解任
―――――――――――――――――――――――――――――――
1.特別機関総裁 |国議過半数の承認|1期6年|国議過半数採決
*日銀、投融資銀、投資銀の総裁は総理の推薦
―――――――――――――――――――――――――――――――
2.日銀政策委員 |国議過半数の承認|1期6年|国議過半数採決
*総務大臣委任の選考委員よる推薦
―――――――――――――――――――――――――――――――
3.中央選管委員|総務大臣委任11名|1期6年|国議過半数採決
*立法権者の就任認証、全有権者の住所氏名を確定認証
*全有権者、立法権者の各投票結果認証、電子投票の推進
*中央選管委員長は11名から互選、事務局は総務省内
―――――――――――――――――――――――――――――――
4.県選管委員 |知事委任5名 |1期6年|中央委員過半数採決
*立法権者及び全有権者の住所氏名を中央選管へ報告
*全有権者又は立法権者の各投票結果を中央選管へ報告
*住民代表の認証
*県選管委員長は5名から互選、事務局は各県庁内
―――――――――――――――――――――――――――――――
[7]抽選役職の選任と任期及び解任
―――――――――――――――――――――――――――――――
1.国民官|計 100名
|無所属割当数=100-全政党割当数
|各政党割当数=(A÷B)x100 少数切捨て
| A=政党公認当選首長の得票合計
| 政党相乗り、政党推薦は政党公認と見なさず
| B=全首長の得票総数
選任|政党は各政党割当数の2~3倍を推薦者と無所属割当数
|の応募者をくじにより抽選、国民会議事務局が抽選
*応募者抽選:35歳、55歳、75歳各未満の3等分数を抽選
*無所属割当応募資格:日本国籍20歳以上、国家公務員試験合格者
地方公務員試験合格者で公務員経験36カ月以上(当面凍結)
国民会議事務局が応募資格を書類審査後に抽選、
任期|4年
解任|随時委員会の適正審議を経て国民会議の過半数採決
―――――――――――――――――――――――――――――――
2.立法権者|立法権者数=約1000万人、全有権者数=約1億人
選任|立法権者=(各A÷1億)x100 少数切捨て
*A=都道府県別30、40、50、60、70歳の各未満の年齢別
男女別に住民基本台帳より無作為に抽選、辞退者は予め補充者を充当
任期|4年
*投票棄権者|50歳未満の者は陸上自衛隊へ3日間の訓練入隊
|50歳以上の者は3日間の奉仕活動
|上記拒否者は逮捕しの警察留置所に6日間拘束
―――――――――――――――――――――――――――――――
3.住民代表|首長が住民数に応じて11~31名の範囲で決定
選任|応募者を無作為に抽選、応募者不足時は首長が委任者
|を公表し、住民の異議申立てのない時は選任
任期|1年
―――――――――――――――――――――――――――――――
[8]国家体制と選挙、抽選、公募による就任
―――――――――――――――――――――――――――――――
1.国家予算制度 (暦年予算制度に変更)
a.翌年予算案9月より国民官による予算審議、11月末までに
立法権者採決、過半数による可決
b.可決の見通しがない時、審議での問題点を修正し立法権者採決
c.否決の時、全有権者の採決、過半数による可決
*各法案も予算案に準じる。但し暫定憲法の総理は採決無視できる
―――――――――――――――――――――――――――――――
2.日本国家権力の継承(災害、テロ、戦争による不測の事態に対処)
d.総理継承順位2位まで順送り
e.総理継承が不可能な時、最高裁長官を暫定総理とし国議を継承
f.上記e.も不可能な時、地方総督を暫定総裁とし国議を継承
*暫定総理決定後は直ちに総理選挙を実施、選挙期間の短縮可能
*新総理は前総理の任期まで
―――――――――――――――――――――――――――――――
3.労働組合活動、宗教活動を公私の時間に関係なく禁止する職種
治安監督官、警察官、海上保安官、検察官、裁判官、判事、弁護士
医師、上級看護師、救命救急士、消防士、教師、自衛官
*上記いずれの組織人への働きかけ活動は違反、個人の信仰は自由
*違反者は資格停止3ヶ月~2年又は資格剥奪
―――――――――――――――――――――――――――――――
4.国務総理|資格:30歳以上日本国籍、
選挙期間:任期満了年3月1日~5月27日|選任:9月1日
選挙日:4月中旬、5月末、選挙費用:国費、供託金自己負担
*総理継承者の公開、政策大綱、就任初年の政策と予算案を公開
*職務遂行不能又は罷免の時、継承者順送りし残存期間の任務を遂行
―――――――――――――――――――――――――――――――
5.最高裁長官|資格:日本国籍30歳以上、
選挙期間:長官任期満了年7月~9月 |就任:11月1日
選挙日:8月中旬、9月末、選挙費用:国費、供託金自己負担
*副長官の公開、司法施策大綱、就任初年の司法施策・予算案を公開
*職務遂行不能又は罷免の時、副長官が残存期間の任務遂行
―――――――――――――――――――――――――――――――
6.市区町村の首長|資格:日本国籍25歳以上、
選挙期間:市区14日 町村7 市区、町村順に全国一斉選挙
選挙日:総理任期満了年1年前 9月|就任:10月1日
*副長の公開、大枠施策、就任初年の施策・予算案を公開
*職務遂行不能又は罷免の時、副長が残存期間の任務を遂行
―――――――――――――――――――――――――――――――
7.国民官:前年首長選で任期満了年7月末抽選、同9月1日就任
就任後は新総理の初年予算審議開始
8.立法権者:任期満了年7月末抽選、同9月1日就任
11月末新総理の初年予算を採決
9.大臣:7月中旬 新総理が任命|副大臣:8月中旬
新総理承認の下に新大臣が任命
10.地方総督:7月1日公募締切|選考:8月~9月中旬公開討論
9月末総理が任命
11.知事:8月1日公募締切|選考:10月~11月中旬公開討論
11月末総督が任命
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12.統治機構の統治職務者の選任日程要約
|―――――――総理の任期満了年――――|新総理
1月 8月末|9月1日
――――|―――――――――――――――――――|翌年予算審議
首長選挙| 総理選挙3~5月 5月末選任 |就任
9月 |前年首長選挙結果から国民官7月末抽選 |就任
首長就任| 立法権者7月末抽選 |就任
10月 | 地方総督7月1日公募締切 | 9月末就任
1日| 知事8月1日公募締切 11月末就任
| 最高裁長官選挙7~9月 11月1日就任
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[10]教育制度改革
目的:
*人生の早い時期に職業選択の意識づけと目標のある生活習慣の育成
*職業再選択、再挑戦可能な複線制度、社会要請に適する職業人育成
*道徳教育から職業倫理に連なる職業姿勢を土台に問題解決能力育成
*義務教育の公立校運営は首長と住民代表が提起し、住民投票で決定
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教育制度 | 道徳教育、職業倫理教育必修
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1.4、5歳 |知育:かな読み書き、数字読み書き|厚労省担当
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2.小学校 |低学年:身近な道徳教育、高学年:市民道徳教育
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3.中学校 |国民道徳教育:人間としての道徳教育
|読み書き文章力、聞く話す意思疎通力の強化育成
*社会生活教育:職業選択意識づけ、金銭取扱、契約の意味等
*通信ネット活用と危険性の周知
*進学授業は進学塾又は課外授業。正規時間での進学教育禁止
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4、工業高校 |工業系技能者・技術者
農林高校 |農林畜産技能者・技術者
水産高校 |水産加工従事者
普通高校 |職業選択の明確化、一般職業選択 |職業倫理一般
進学高校 |学部制大学へ進学 |コース別職業倫理教育
|専門大学、医大への進学(予備校で補習授業必須)
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5.高校+2年工業高専 |中堅技能者、中堅技術者
高校+2年農林高専 |中堅農林畜産従事者
高校+2年水産高専 |中堅水産従事者、中堅漁業従事者、
高校+2年医系高専 |見習看護師、介護士
*職業倫理教育の徹底
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6.4年学部制大学
理工系|幹部技術者、幹部研究開発者、知財弁護士
農水系|農林畜産幹部技術者、水産・養殖幹部技術者
船空系|幹部船舶(商船、漁船)従事者、幹部航空従事者
文系|経済商業、社会、文学、言語、芸術、博物・考古学等
法学系|民事弁護士・裁判所書記官・調査官+司法研修6ヶ月
医系|看護師、放射線技師。臨床獣医師+研修1年
*職業倫理教育(ケーススタディ重視)
*成績不良は留年、編入・飛び級相談窓口設置義務
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7.高校+4年専門大学理工系
上級研究者、上級研究開発者、研究院へ
高校+4年専門大学文系(行政・教育、司法、政治)
国家公務員・教師+採用後研修1年、地方公務員
弁護士・裁判官・検察官+司法研修1年
政治系+国民官見習又は政務官見習4年
高校+4年専門大学医系
救命救急士・上級看護師(一部医療)、薬剤師+研修1年
*国民官見習、政務官見習、毎年各40名採用、毎年の評価で脱落
*採用後研修、司法研修の評価で脱落
*高校生最低3割は大学へ進学させない、進学できない者は留年又は
学部制大学へ進路変更
*職業倫理教育(ケーススタディ重視)
*成績不良は留年、編入・飛び級相談窓口設置義務
―――――――――――――――――――――――――――――――
8.高校+6年医科大学
医師(病理、臨床)+研修2年、獣医師(臨床病理研究系)
*高校生最低3割は医大へ進学させない、進学できない者は留年又は
学部制4年大学へ
*職業倫理教育(ケーススタディ重視)
*成績不良は留年、編入・飛び級相談窓口設置義務
―――――――――――――――――――――――――――――――
9.xx大学研究院 |最高級研究者・研究開発者
職業を持ち在籍又は生活費は奨学金
公立研究機関 |理工系、農林水産系、医学系、文系など各種
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10.進学塾|職業コースの進学授業
11.予備校|職業コース変更者の補習授業、各種国家試験受験学習
12.各種職業学校 |職業訓練施設(一部は厚労省認定の施設)
*厚労省が認定した一部の各種職業学校を職業訓練施設として活用
*厚労省直属職業訓練施設は廃止、各種職業学校は職業倫理教育必修
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13.夜間学級、通信講座(特にテレビ、インターネット利用)
老若男女の生涯学習、高校及び大学の卒業資格講座
14.特別学級、養護学校(ITツールの活用強化)
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15.文科省担当外
職員能力向上系
皇宮警察学校、警察大学校、消防大学校、機密捜査学校
外務省/法務省の各研修所、司法研修所(任官研修)
*他は研修所を設けず民間施設を共同使用して研修、廃止施設は売却
職員能力向上と募集系
海上保安学校、海上保安大学校、防衛大学校、防衛医科大学校
陸上自衛隊高等工科学校
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第1章 クーデター勃発
多数の報道ヘリが都内上空を乱舞する。日本ウェブ報道社の記者・轟太一は、ヘリ機内から連続して打上る花火を目撃する。轟は開花する花火にカメラを向け、
「只今13時、報道ヘリの退去を知らせる花火です」
次に日比谷公園に避難する群衆にカメラを向ける。
「今年のスーパーレスキュー2013は、予め要所要所に配布した災害状況書を本日未明突然、都知事が開封を指令して開始されました」
日比谷通りを北進する数十台の車列を眺め、カメラを向ける。
「何と云っても最大の特徴は、災害で寸断された道路を自衛隊ヘリが自衛隊並びに公的救援部隊を誘導する試みです。さながら自衛隊の活動は首都防衛の観を呈しています。ではこれでNWHの実況中継を終ります」
報道ヘリの群れが次々と都内上空を飛び去る。
日比谷通りを疾走する車列、先頭の軽装甲車上から身を乗り出す香山伸吾が皇居を仰ぎ敬礼する。車載無線機が感度良好な通信を傍受する。
「こちら第一飛行隊1310、離陸開始」
香山は手に持つ携帯無線機を口元に近づけ、
「こちら本隊、作戦を開始せよ」
「交通遮断、周辺監視異常なし」携帯無線機が直ちに応答した。
香山は後続車列を振り返り、無線機に向い、
「日比谷公園、内幸町交差点を右折中」
「1330、羊は檻に入った」無線機の応答に香山が首を上下に振る。
車列が霞ヶ関官庁街を進む。香山は右に経産省と左に農水省のビルを確認する。香山が桜田通りを横断し始める。桜田通り左右の交通を遮断している警官が敬礼し、
「第3中隊、周辺監視異常なし」警官服を装着する隊員達が手を振る。
香山は隊員を眺めながら敬礼を返し、通過して行く。車列が速度を速める。香山が国会議事堂正門と南門の分岐点に到着する。警官が交通遮断のゲートを開く、軽装甲車は南門へ向い進路をとる。
国会議事堂南門に乗り入れる香山、衛視が香山に敬礼し、
「第5中隊、敷地内と内部廊下の確保完了」
香山は衛視の服装する隊員に敬礼を返し、腕時計1340を見る。
都庁の防災センターに陣取る都知事と防災要員、新聞記者達が大スクリーンに映る医師団のトリアージ訓練と、ヘリ飛行隊の負傷者搬送訓練を眺めている。
「予告なし、これが実践に即した災害訓練ちゅうもんだよ」
都知事は思いのほか順調な訓練状況に満足の笑みを浮べる。
「都知事、年度末の訓練は国や方々から非難され・・・」
新聞記者の一人が意見を述べる。都知事は記者をジロッと眺め、
「バカもん、年度末には災害が起らんのかね」予想される都知事の反応であった。
国会議事堂の裏手、衛視達が道路と敷地の境界、金網フェンスを素早くシートで被う。第2中隊が参議員通用口に殺到し、香山本隊が衆議員通用口から院内に突入する。
議事堂内、突入した隊員達が静かに、素早く行動する。
衆議院議場内、議長が採決結果を発表している。
「起立多数、よって本件予算案は可決されました」
与党議員達が拍手し、ひな壇の浜室首相と大臣達がお辞儀する。そこへ香山隊が乱入する。迷彩服の香山が演壇に駆け上がる。議員達が一斉に、
「何だ、何だ!? 君らは」騒然となる議場。
「衛視、衛視、衛視はおらんのか?」立上り叫ぶ議員。
香山は浮き足立つ議員を見渡し、
「黙れ!! 黙れ!!」香山の声が罵倒の声に掻き消えた。
香山は天井に向け自動小銃を撃つ。女性達が悲鳴を上げ、男性達が身を伏せる。一段上に陣取り座る衆議院議長が香山に木づちを投げつけ、
「止め給え!!」香山が議長を振り仰いで睨み、大声で、
「今のは空砲」正面に向き直り、更に大声で、
「次からは実包を使う」香山はこれ見よがしに銃の弾倉を取替える。
香山は弾倉を取替えた銃を議場に向けて構え、
「ひな壇の閣僚の方々は第一委員室にお集り頂きたい」
議員達が席の名札を演壇に投げつけながら、
「君らは内乱罪だ!!」と口々に叫ぶ。
議場内を取巻いて立つ数十人の隊員が議員達に爆竹を投げる。
師団司令部室内、司令官と幕僚達が壁掛の大型表示器を眺める。表示器には地図、全訓練部隊の移動経路と現在位置、目的地到着予定時刻を表示している。
「部隊の誘導、人命救助訓練を終了し、交通路確保訓練を実施せよ」
司令官の命令に応え、作戦部長が腕時計1430を確認して無線機のマイクを握り、
「第一施設大隊、こちら司令・・・」
机上に置いた拡声器から、
「赤井司令官、新田である」テント内の一同が直立不動の姿勢をとる。
「新田幕僚長、赤井であります」
「自衛隊車両が議事堂内に入ったと目撃情報がある。その事実はあるか?」
「いえ、直ちに確認し報告致します」
衆議院第一委員室、総理大臣と閣僚大臣達が発言者席で横一列に座る。十数人の隊員がその後に並んで立つ。香山が委員長席に座る。隊員の一人が表紙に"暫定憲法"と記す印刷物を大臣達に配って歩く。
「我々は衆参議員と共にある。さて、お手元に配った暫定憲法制定を議決して頂きたい」
「この内閣はそんな議決をするくらいなら私の権限で直ちに解散する」
浜室総理は左右に座る閣僚を振向き同意を促す。香山は平然と閣僚達を見渡し、
「現憲法は改革者、すなわち占領軍の草案に沿い明治憲法の改正手続きを、形式的に整え制定した革命憲法である。我々の暫定憲法も同様に形式的な体裁を整える。我々は総理の解散権などいとも簡単に封じる事ができる」
溝口防衛大臣が大笑いし、配った印刷物を香山に投げつけ、
「国民投票はどうするのだ、君らのたわ言が成功すると思うのか?」香山は溝口を睨み、「我々は既に国民の賛否を問うている。国民は我々の改革を必ず支持する」
香山は自信に満ちて断言する。
「君らは狂っている、この民主日本国でクーデターが成功するとでも?」
「成功する。国民の目には皆さんが狂っている。我々は民主主義の破壊者ではない。真の民主主義建設者である。暫定憲法はその事を明記している」
「君らど素人の書き物は読む気もしない」数人の閣僚が印刷物を塵の様に破り捨てる。
「無益な議論に慣れた職業政治家の皆さんと議論はしない。我々には実行あるのみだ」
「私の閣僚だけは残る。議員達は解放しなさい」浜室総理が解放を要求する。
「国民の支持が得られた時に解放する。それまでは割当てる部屋で寝泊りして頂く」
「支持が得られない時は?」
「私ほか首謀者は自決する」香山は事も無げに云う。
連隊指揮所のテント内、連隊長と副官、通信隊員達が机上の大型表示器を眺める。
表示器には地図、各中隊の移動経路とも現在位置、目的地到着予定時刻を表示している。
中西次郎3佐と銃を構える従兵6名がテント内に乱入する。
「銃を渡せ!!」中西の命令に従兵達が連隊長ほか指揮所隊員の銃を取上げる。
連隊長は横に並んで立つ中西を振向き、
「何の真似だ、君の第4中隊は今・・・」
「ハイテク機器は位置の偽装に最適だ」
「何!! この現在位置はGPS搭載車だけの動きか?」連隊長は渋面で中西を見る。
「そのようだ」中西はニタッと笑って応える。
「連隊長、赤井である。各中隊は作戦通りに行動しているか?」
突然、机上の無線機が通信を傍受する。中西は連隊長に銃を着きつけ、
「連隊長、作戦通り続行中と答えてくれ。我々はここで血を見たくない」
中西は机上に置く無線機のマイクを取り連隊長に手渡す。
高機動車内、迷彩服を着た隊員が無線で報告する。
「こちら偵察隊、議事堂の正門と南門に各10名の衛視。北門及び衆参通用口は閉鎖中。衆議院と衆議院分館の間に白い布状の遮蔽物あり。各箇所の写真を電送する」
高機動車は議事堂北門が見える位置を通過し遠ざかる。
陸上幕僚監部・陸上幕僚長室、三ツ星の南原が新田陸幕長の執務机の前に立つ。新田が立上り、手に掴む写真を南原に手渡し、
「これはNWH記者の空撮だ。この日比谷通りの車列は司令部の計画外である」
南原は数枚の写真を次々と眺めて、
「予算案の採決がずれ込み、衆参議員が一斉に集い防災訓練が重なる。偶然だろうか?」
「その気なら今日は千載一遇の機会だ。その司令部が派遣した偵察隊の写真だが・・・」
「これですね、衆議院と分館の間の遮蔽物とは。裏手からは別館で遮られるし、ここを遮蔽すると車を停めるには最適でしょう。私が確認に行きます」
新田は大きく頷き、
「司令部任せにはできない重大事態だ。確認が先決である。南原君頼む」
南原は腕時計1528を見る。
衆議院第一委員室、人は異常事態に遭遇して性格を顕著に示す。拘束して約1時間半をぼんやりと無為に過す者、大胆に居眠りする者、神経質にオロオロする者、溝口防衛大臣の様に対処方法を熱心に模索するであろう思索に耽る者、何人かは仕方なく憲法を読む者であった。香山は閣僚から、
「いつまで拘束するのだ?」と尋ねられても「無駄口は止めろ」と応え、ただジッと座り続けた。閣僚間の会話は取囲む従兵の銃剣をもって禁じた。
香山は頻繁にやって来る隊員が耳元で囁く報告に頷く。一等陸曹がやって来た。
「携帯電話等通信機の回収を終了。電波妨害装置を停止。以上」香山の耳元で囁く。
「ご苦労」香山は作戦の進捗に満足らしく笑顔で応えて頷く。
外部との連絡遮断は制圧後の第一行動であった。トラブルもなく達成できた様である。一等陸曹が退出すると、浜室総理が沈黙を破り、
「この憲法草案の第5章行政府では、国務総理が国民の直接選挙で選ばれ、任期4年、3選禁止は解るが、第4章国会では国会議員の条文がない。どう云う事だ?」
総理の質問に香山は待ち望んだ如く、
「立法権を司る国会議員は存在しない。国会には100名の抽選した国民官が存在する。国民官はその多数決で提案する法案、行政府が提案する重要法案を審議し、抽選された約一千万人有権者の賛成過半数を得て法案が成立する。立法権は国民の直接所有とする」
「一体全体100名の国民官をどの様に選ぶのか?」文科大臣が問う。
「政党活動は禁止しない。約千七百の市区町村の首長が得た総得票数を分母とし、各政党の公認の下で当選した首長の合計得票数を分子とした100分率パーセントが、国民官の政党割当数となる。各政党は割当数の3倍を推薦候補と定め、これを抽選で決定する」
総務大臣がギョロ目を剥き、選挙管理の担当大臣として突っ込む。
「無所属で当選した首長の合計得票数が勘定に入らんじゃないか?」
「無所属の国民官割当数は、国家公務員試験合格者から募集して抽選する。国民官に門戸を開き、真に政策が審議できる人材を育成する」
香山は立板に水、すらすらと答える。
「立法権者とは何かね?」総務大臣が問う。
「国民官は予算案、法案を審議するだけ。立法権者は審議案件を採決する有権者である」
「一千万人立法権者と云ゃあ、全国有権者約1億の10%だがどう選ぶのだ?」
「そりゃ簡単、住基ネット活用し、約1億を分母として市区町村毎の年代別男女別有権者数を分子とする比率に一千万を掛算して全国平等に無作為で抽選する。電子投票制度も確立する。有権者の頻繁な投票は投票所へ出向くことなくできる」
溝口防衛大臣が顔を紅潮させて怒鳴る。
「バカな質問してコヤツ等を増長させるな。閣僚なら事態の収拾に知恵を絞れ」
「溝口君の怒りはもっともだが、退屈凌ぎに若者の意見も聞いてやろうじゃないか」
昼行灯と陰口を叩かれる農林水大臣の意外な発言に閣僚が爆笑する。
「立法権者が予算案や法案を否決する毎に全有権者投票をするのかね? 常に国民投票の可能性があるではないか」
浜室総理は驚きの表情で尋ねる。
「そうです。予算案を丁寧に説明又は修正して賛成を得る事が基本ですが、この暫定憲法は直接民主主義の統治を目指しているから当然です」
「そんなバ・・・、国民に負担をかける法律は一切成立しない。財政が破綻するぞ」
財務大臣が恐らくバカなと云いかけた言葉を飲み込み反論した。
「データを示し懇切丁寧に説明するなら国民は必ず納得する。我々は国民を信じるし、丁寧且つ真剣に審議する国民官と行政府を育成する」
「書生論はいい加減にし給え。11章の補則をチラッと見たが、君らは8年間に亘り随所で拒否権を行使し、好き勝手な法律を創り、独裁を欲しいままにするのだな」
溝口防衛大臣が怒りの口を尖らせた。
「当然でしょう、革命ですから」香山は事も無げにケロッと云ってのけ、
「但し国民官は抽選する。市区町村は憲法と法律に則り選挙を伴う民主的な行政を行う」
「バカ野郎!! 国会議員や地方議員を廃止してどこが民主的だ!! 国務総理が地方総督を任命し、知事は地方総督が任命するだと?! こんな事で地方行政が成り立つか」
最初に暫定憲法の印刷物を投げつけたが、11章補則や地方自治の要点まで一読した様である。グウタラ大臣の辞職や解任が続き、何人目かで就任したカミソリの異名を持つ防衛大臣である。香山はカミソリの片鱗に接する思いであった。
「地方総督はいわゆる道州制的な長であり、知事を介して広域の国策を遂行する。各省庁のぶら下り出先組織は廃止し、都道府県は完全な国の出先機関とする。全ての民生は市区町村に権限と財源を移譲する。毎年の市区町村予算案は住民代表の過半数の賛成を得て成立する。条例は住民投票で採決する」
溝口は終戦後に営々と築いた日本国を根底から破壊する恐怖に身震いした。
「溝口大臣、この革命が定着する数年は国内外の雑音を全て排除します。ただ同胞相争う流血だけは避けたいと願っています。ご協力願えませんか?」
「寝言をほざくなッ、武器を捨てここから出て行け!!」溝口は一言の下に拒否した。
香山は時間が味方すると考え笑みを浮べた。
国会議事堂・南門、陸将旗を翻す高機動車が停まる。南原陸将が車を降り南門へ向う。衛視が直立不動の姿勢で南原陸将に敬礼する。南原は笑顔で敬礼を返し、
「やはり君達か。取次ぎ給え」
キビキビした動作と規律は陸自精鋭部隊と一目瞭然である。衛視は予めの命令らしく、
「どうぞ、ご案内します」南原は反乱部隊が待ち受けていたと知り緊張する。
議事堂・中央広間、四隅に伊藤博文、板垣退助、大隈重信の銅像と空の台座がある。香山と南原は広間の真ん中で赤絨毯上に立ち談判する。隊員達が離れて取囲み見詰める。
「穏便な決着のため溝口大臣と会いたい」香山は設置した爆薬や導火線を指差し、
「閣下、無理な突入は瓦礫になります」
「関係者しか知らない今なら収拾し易い。防衛大臣とジックリ3人で話し合いたい」
南原はなおも説得を試みる。香山は深々とお辞儀した後、南原を見詰め、
「寝袋と弁当2000個、食材と医薬品の差し入れ、外科医10名と看護師の派遣をお願いします。代りに女性と傍聴人の全員、大多数の国会職員を解放します」
「香山3佐!! あくまでも君は・・・」
「幕僚副長、南原陸将のお帰り」隊員達が南原を取囲み誘導する。
議事堂・正面玄関、石段の最上段に立つ香山が正面広場に集まる報道陣を見渡す。石段両端に隊員が立つ・カメラが一斉に香山を狙う。香山は拡声器のマイクを握り、
「閣僚と衆参両議員は我々の管理下にある」
報道陣から"ウォー"と叫ぶ鯨波が沸上る。香山は両手を上下する。静粛になると、
「我々は暫定憲法の下に約8年間の革命政府を樹立する。jpnドットcaのウェブサイトに公開した暫定憲法と政策は国民との契約である。我々は国民の支持を求めている」
男が石段を駆け登る。隊員が男を取押え押し返す。
「国会記者クラブの者だ、チョッと待ってくれ。報道陣の諸君、内乱罪に相当する集団のPR報道をする積りか? 中継は中止だ、帰ろう」男が大声で叫ぶ。
電話する者、スマホでサイトを閲覧する者、ざわめきが前列から後列に拡がる。
「我々は報道の自由を尊重する。帰りたい報道者は直ちに南門から退場願いたい」
香山はマイクに向い大声を張上げる。報道陣の人々がゾロゾロと動き出す。隊員2名が報道陣を南門へ誘導する。男は大声を張上げる。
「帰れ!! 帰れ!!」男の扇動にも関らず報道陣の3割程が退出し百数十人が残った。
報道人の性が世紀の大ニュースを無視できないのだ。香山は広場の落着きを見計らい、「我々は真に国民主権の統治機構改革が目的である。我々の政策はウェブサイトで語り尽している。我々は流血を望まない。国民の支持なくば武器を捨てる」
香山は一呼吸の間を置いて続ける。
「騙され続けた国民の皆さん、もう一度、我々との契約を信じ賛否表示を願いたい。方法は葉書50円をご負担頂き、サイトに例示する通り賛成と記入し、葉書の上部に昇る丸い太陽を描き、又は反対と記入し、葉書の下部に半円の沈む太陽を描き、名乗り出ると信じる賛否集計所宛に、あなたの住所氏名を偽らず記して一人一枚を郵送願いたい」
香山は落着いた声で国民に語りかけた。男が手を上げる。香山が指名する。
「NWHの轟です。暫定憲法9条についてお尋ねします。追加した3項"国は国の独立と国際平和並びに国民の生命財産を守るため、あらゆる手段を保持する。その手段は法律でこれを定める"とありますが、右傾化を最も懸念します」
「国民の生命財産を守る、これは国の義務である。国の義務を明記したに過ぎない。我々は9条1項2項を誓って遵守する。我々が目指す統治機構は国会と地方の議員を廃止し、国民が直接に立法権を行使できる。従って8年経過後には国民が憲法をも制定できる」
香山は次の挙手する男を指差す。
「大日ウエブの長谷川です。決起のPR報道は控えます。ただ皆さんの管理下にある議員や職員はどの様な状況ですか? 今後はどうなりますか?」
「議員は各院内、職員は数箇所に拘束している。食料や寝袋が確保でき次第、女性と傍聴人の全員、職員の過半数を解放する。その後は国民の判定が下るまで拘束を継続する」
防衛省統合幕僚幹部・会議室、制服組幹部達と背広組幹部達が大きなテーブルを囲んで座り、壁の表示器に映る議事堂の会見録画を見入る。防衛省・官房長が不快感を露に、
「情報本部長、奴らのウェブサイトを遮断できんのかね?」
「官房長、残念ながら我が国は中国と違い、国外のウェブサイトを遮断する方策はない」
「それならアクセスを集中させてサイトを動作不能にできるだろ?」
「官房長の意図はDOS攻撃でしょうが、正体不明の団体が多数のミラーサイトを国外に開設し、時すでに遅しです。彼らもDOS攻撃を想定した対策でしょう」
「早々と革命政府の樹立を宣言し政策まで発表する。誠に不快極まる」
国家防衛の最高幹部が集い何等の方策も打ち出し得ないと国内外に無能を曝け出す。それだけは避けたいと誰もが思っていたが、法の遵守も疎かにできない問題であった。
新田陸幕長が苦渋に満ちた表情で、
「即応部隊に災害救助出動を命じる」
幹部達が"エェッ"と驚愕の声を発し互いに顔を見合せる。南原が新田を見詰め、
「テロ対応作戦の実施ですか? それは首相の出動命令が・・・」
「訓練の延長だ。超法規の出動ではない」
苦虫を噛み潰す統合幕僚長が香山3佐の略歴を無言で眺める。
『香山伸吾・3等陸佐36歳、ハーバード大学・経済学専攻中退、防衛大学第48期卒、日米防衛訓練指揮所・連絡調整官を経験、イラク派遣、家族・妻と息子2名、趣味・読書とラテン系音楽、性格・沈着冷静』とある。
壁掛時計1710、幹部達が慌しく立去る。立去りかける南原を統幕長が呼止める。
「南原副長、警視庁からの接触はあったか?」
「関与者の人員など情報を求めていますが、調査中と返事し開示していません」
「そうか。ところでハーバードの在学期間は何年か?」
「1年8ヶ月です」南原は即答した。
「防大には秘めた目的のため入学したのではないか?」
「調査では大それた事態を起す男でないとの評価でした。脳ある鷹は爪を隠したかも」
「そうか、さもあらん。ただ日本の法律は最高国家権力の機能停止に対処する術がない。核攻撃でも災害でも有り得る事だが、いずれは超法規の行動も視野に入っているか?」
「陸幕としては、そんな事態にならないよう最善を尽くします」
統幕長は頷く。南原は敬礼して踵を返す。南原は1年や2年の付け焼刃の計画でないと感じているし、統幕長も同じ考えだと判った。
日本報道社(NWH)・役員室、経営幹部達が長方形机の周囲に座り、壁に投射するプロジェクタの映像を見る。報道局長が映像の出所を説明する。
「この映像は議事等占拠部隊が公開するウェブサイトの動画を映しています」
国会議事堂を背景に背広姿の香山が語る。
『我々は制定した暫定憲法を直ちに施行し、統治機構と諸制度を変革する。国会議員は廃止し、国民官を抽選する。行政府の長となる国務総理と法案の採決を国民の直接投票に委ねる。国民官は行政府が提出する法案、又は行政府了解の下に提出する法案の審議を行うが、当面は諸制度の変革に伴う要望苦情の受付を行い公開する。市区町村の首長は住民が選び、地方議員は廃止する。都道府県の組織は地方総督、知事の下に国策を遂行する』
香山が語るにつれ、背景が首相官邸や官庁ビルへと緩やかに変った。背景が切換る。爛漫と咲く桜花を映す。香山は間を置いて続ける。
『国の予算は民生予算と戦略予算に大別する。民生予算は教育、年金医療等の社会保障、消費者保護、防災消防等などに充当し、市区町村に権限と予算を移譲する。戦略予算は外交、防衛と治安、広域行政、戦略政策に充当し、最低3年の計画を開示する』
背景が春夏秋冬の美しい風景へ緩やかに変った。背景が切換る。7つに色分けした地方名を記す日本地図が映る。四国4県は白色、四国地方単独、関西又は中国地方に編入。その選択は県民に委ねる、と文字表示していた。
『さて、道路河川交通を担う広域行政と、食料とエネルギーの自給を目指す戦略政策は、地方総督と都道府県知事がその立案に参画し、決定した国策を実行する』
背景が切換る。額に汗して働く町工場の人々が次々と映り始める。
『我々は内需拡大による所得倍増の戦略政策を行う。児童学生、健康等の支障者を除き、75歳未満の老若男女に就労の場を設け就労を促す。倍増と自給の戦略政策、震災復興は行政府が直轄し、国民の英知を結集して総督、知事、自治体の長と共に実行する』
背景が切換る。田を耕す人々、漁をする人々が次々と映り始める。
『問題は財源である。国民は所得に応じて納税の義務を負い、日本国籍を有する者は国外に居住するもその義務を一切逃れ得ない。教育、医療、研究の法人団体を除く全ての法人団体は収益に応じて納税の義務を負う。宗教団体、公益法人と云えど例外はない。年金等など直接に国民から預かるお金以外の特別会計は廃止する。消費税は5%を限度とする。
国民には魅力ある国債の購入を促し、綿密な管理を前提に日銀券の増刷も辞さない』
背景が切換る。小、中、高、大学の授業風景が次々と映り始める。
『次は人材である。総督、知事及び政務に係る人材を公募し、政務官として登用する。政策立案とその実行に蛮勇を揮う国民の応募を望む。我々は個人の才能を認めるが、専門家と称する集団の才能は経験に照らして認め難い。よって政策決定過程や公金使用の分野にアンタッチャブルなオンブズマンを受入れる。また外交と防衛の機密情報、個人情報を除き、全ての行政情報を公開する』
背景が切換る。香山は堂々と語り続く。
『司法については・・・』
会長が手を左右に振り、
「もうよい、止めろ。施政演説の積りか。これを報道すると暴徒に加担するも同じだ」
会長の一声で映像が消える。ニュースデスクがノックもせず飛込んで来て、
「失礼します。ツイッターがパンク、炎上中です。外電は日本情報で溢れています」
「会長、お言葉を返すようですが、デスクの云う通り我が社が報道しなくても、世界には劇的に広まります。報道を業とする社の責任が果せません」報道担当役員が直訴する。
「社の責任はワシだ。お前でない。他社がどうあれ暴徒に加担する報道はならん」
ワンマン会長に逆らう術はなかった。
衆議院議場・傍聴席、香山が議場の議員達を見下し携帯電話する。
「残念だが最早穏便な収拾はできない」南原が陸自の意思を伝える。
「即応隊が来るより依頼品が先でしょう」
「本隊が届ける。間違いない」
「狙撃や敷地内への侵入は議員を射殺する」
「判っておる!! 本隊は災害の訓練出動だゾ」南原は自重を促す。香山は電話を切る。
香山家・居間、香山の妻・雅代が夜の臨時ニュースに見入る。テレビに香山の顔が大写しされ、テロップが流れる。
"本日午後、陸上自衛隊約400名が国会議事堂に侵入、現在占拠中"
「おばちゃんの家に直ぐ行くわよ」雅代が大粒の涙を流し、息子達を抱締める。
雅代はテレビを消した。息子達にテレビを見させたくなかった。
「父ちゃんも行くの? ボク幼稚園休むの?」
生命の危険は常日頃から覚悟して生活していた雅代だが、この様な事態は全く予想していなかった。雅代は息子達の安全を守る事しか念頭に思い浮ばなかった。
日本中央報道(NCH)テレビスタディオ、上原ニュースキャスターが中央に座る。左右向き合って軍事評論家、大学教授と政治部記者、政治評論家が座り、上原の頭上、正面の大画面を食い入る様に眺める。大画面には議事堂が映り、次に多数の人々が映る。
『アッ今、女性議員ほか多数が南門に向っています。解放される様です』
中継記者の声が流れる。ビルの屋上に据え付けたらしいカメラが人々を大写しにする。画面に映る人々は落着き敷地内南門から道路へと歩み出る。画面が切換り、解放された人のインタビューになる。インタビュアーが中年の男性にマイクを向ける。
『どういう状況でしたか?』
『私は衆議院の傍聴席へ入る途中の廊下で突然、衛視に拘束されました。衛視は占拠隊員の変装と直ぐ気付きました。何しろ外部との通信を真っ先に遮断されましたから』
『今も議事堂内と連絡は一切とれまんよね』
『議場に携帯を持込めませんが、私は幸い携帯を預ける前でしたから連絡を試みました。電波妨害らしく駄目でした。私含め全員の携帯は直ぐ没収されました』
インタビューは続くが、上原は参集者に発言を促す。
「さて解放は実現しましたが、今後の展開について皆さんのご意見をお伺いします」
参集者は画面から目を離し向き合う。
「そうですね。男性衆参議員数600名強、国会職員の解放数は未だ判りませんが残りは約500名とすれば大雑把に千名超が人質です。高度に訓練された約400名が占拠部隊とあっては実力行使も不可能でしょう。長期化しますよ」軍事評論家がまず発言する。
「マァこのところ3ヶ月や6ヶ月、国政がマヒし停滞する例は見慣れておりますから」
教授が皮肉を飛ばすが若い政治部記者には通じないらしい。
「アジア諸国に強い衝撃を与えていますし、長引けば日本の信用が地に落ちますよ」
「ウェブサイトには御託を並べるが法律を好き勝手に決める独裁そのもの。抽選した一千万有権者は投票の棄権に対し、50歳未満は3日間の防衛訓練入隊、50歳以上は3日間のボランティア活動のペナルティを課す。これは戦時中の勤労奉仕や老若男女の就労は、国民総動員を思い起し、衣の下に鎧がチラつく」
政治評論家が政治的な危険性を指摘した。
「そうです。65歳以上の年金世代の就労拒否者に対する年金20%カットや、75歳未満の10%カットは就労の半ば強制ですよね」政治記者が政治評論家に同調した。
「そうじゃない。例えば月額5万円カットされた年金者が就労すると3倍の15万円の賃金を得る。そこから健康保険料と労災保険料を差引かれても確実に10数万円が手取りとなり、実質増収になる。受入れ企業は最低時給と3倍賃金を満たせば5万円支給され、実質10万円で雇用できる。これは年金者の雇用を増やし、間違いなく国民所得が増える」
「皆さん、政策についての発言や論評はお控え下さい」
上原は注意を促す。若い政治記者は上原の注意を無視し、教授の細かな説明に納得せず、
「若者の雇用はどうなる? 益々中高年層や若年者の失業が増えるじゃないですか」
「家電や車が普及した社会になお売らんかなと頻繁にモデルチェンジして資源を浪費する。
食料とエネルギーは極端に不足しているが、生産に取組まず安直に輸入するから国民は不足を肌身に感じない。不足する物の生産にこそ人、物、金の資源を投入すべきです」
教授が自らの意見を述べる。議論は司会者・上原の主旨から段々と離れる。
「一次産業に従事せよと? 今の若者は3K仕事しませんよ。そこがお判りでない」
終戦直後世代の教授と昭和後期生まれの記者では議論が噛み合わない。
「維新後80年の戦後改革、それから約70年の今、周期的な日本の地震だと論評する外電もある。私は彼らが契約する2期8年の強権を認め、やらせては・・・」
教授が占拠部隊を支持するや否や、政治評論家は教授を睨み、
「発言は不穏当だ。取消しなさい」教授は無視して発言を続ける。
「彼らのウエブサイトに明記する国会議員と地方議員の廃止や国民官制度、一千万国民の立法権付与は強権なくしては成し得ない改革である」
「確かに過去の軍事政権のイメージとは趣が異なる」軍事評論家が発言する。
「軍事政権!? 内乱罪に相当する輩ですぞ!!」上原は目を吊上げた。
番組はコマーシャルに変る。1カメの横に立つ報道局長が番組中止の合図を送る。
「申し訳ないが上層部命令で番組を中断します。司会不適切の致すところです」
上原が頭を下げて中止を告げた。政治評論家は渋い顔して教授を睨む。
橘運送ビル・事務室、出入口のガラス戸に橘運送株式会社の裏文字がある。数十人の隊員がパソコンを操作する。背広姿の中西が無線電話する。拡声器から香山の声が流れる。
『諸君ご苦労、メディア作戦は成功だ。我々の運命は盟友の諸君達に託す。健闘を祈る』
「我々は盟友と共に。制圧隊の健闘を祈る」壁の時計が0時を過ぎる。
第4中隊長・中西が無線を切る。
「諸君手を休め聞いてくれ。計画通り明日から各班に別れて世論工作を開始する。硬い堤防を手作業で崩し民意の洪水を起す。唯一の道具は今手にする携帯パソコンとネットだ。諸君の安全は各自が守れ。最悪の時は狙撃隊が援護する。さあそれでは前祝の乾杯だ」
隊員達が缶ビールの栓を開け、「乾杯!!」の声と共に互いの缶を触れ合う。
都庁、記者達が早朝の廊下を都知事に群がり取材する。
「来年度予算の採決時期になぜ訓練したのですか?」
目を腫らして歩く都知事が突出されたマイクに、
「地震は国会の都合で来るのか!!」
「知事は敢えて会期中を説得したと聞きますが、責任を感じておられますか?」
「取材はここでなかろう」都知事は歩みを止めずに進む。
「告訴しても真相を究明しますよ」記者の一人が大声で喚く。
都知事は記者を振り切りエレベータに乗る。
衆議院議場内、議員が議席につき、大臣達がひな壇に並ぶ。香山が演壇に立ち、
「毎日10時と16時には議場へ集れ。脱出した者があれば脱出者両隣の者を射殺する」
議員達は疲れた顔で黙って聞き入る。
「議事堂内は食堂を含め自由な移動を許す」香山は議員達を見渡し傲慢に命令する。
銃を構える隊員達が議員達の在籍を確認して回る。
衆議院議長応接室、香山が豪華な応接椅子に座る。隊員に伴われ溝口防衛大臣がやって来る。香山は起立し丁寧に溝口を迎え椅子を勧める。溝口は椅子に座りながら、
「寝袋は学生時代の登山を思い出したが、まさか議員控室で寝ると思わなかったよ」
香山はテーブルの葉巻を溝口に勧め、
「即応隊が出動し、議事堂周りの道路に布陣しています。突入すれば応戦します」
溝口は葉巻を受取る。香山は葉巻に火を近づける。溝口は差出す火を葉巻につける。
「君はワシに即応部隊の退却を命じよと?」溝口は上手そうに紫煙を噴出す。
「いえ、即応隊は災害訓練出動だそうです」
「何!? 成る程、考えおったな新田は」溝口は腹を抱えて笑う。
「いずれ戦い、共に死ぬ前、暫定憲法の発布を総理にご説得下さい」
「総理はあれで頑固だから私では力不足だ」
「そうですか。残念です」香山は溝口を鄭重に送り出す。
議事堂を囲む4周の道路はテント村ができ、即応部隊が昼夜を問わず厳重な警戒体制を敷いている。この5日間は膠着状態である。国民も政治の停滞と理解しているのか、停滞慣れして特に騒がない。日本のマスコミは膠着のためか、故意か多くの情報を伝えない。占拠部隊の政策は一切伝えない。これは明らかに故意である。
だがネット上の国民の議論は活発である。復興も遅々として進まず時期をわきまえぬと罵る者あり、そりゃ奴らじゃない、お前の目はどこについているのだと擁護する者あり。賛否の葉書は出すかの問いかけに、勿論出す、でもどこへ郵送すればいいのだと困惑する呟きが多数を占める。
外電は先進国に生じた大事件に国民が騒ぎ立てない日本国の魔訶不思議を伝える。米軍は横須賀と佐世保へ空母を緊急入港させた。海自は日本海にイージス艦配置を強化し、空自は早期警戒管制機による警戒を強化した。防衛省筋は取り立て内外から無能、無策の論調が起らず安堵していると云った按配である。
警察庁長官室、出勤した長官が執務机の前に立つ秘書官から今日のスケジュールを聞く。
机上電話のベルが鳴る。長官は電話のハンドレス釦を押す。通話が拡声されて聞える。
「この10日間、警察が必死で探している中西である。長官は在中か?」
「私が長官の山城だ」長官は秘書に目配せする。秘書は逆探知の目配せと察し退室する。
「私を捜索する分には異存ない。だが我々の支持の賛否を受取り、集計せんとする団体やグループに陰湿な圧力を加える。これは警察が選挙干渉するに等しい・・・」
「チョッと待て、そんな事実はない。それに君らの民意は法律の根拠がない」
「長官はツイッターを見ていないのか? その事実が飛び交っているし、我々も直接事実を把握している。今後はその事実に遭遇すると上長に対し排除作戦を強行する」
「排除作戦とは何か?」長官はイラつきが募るが我慢し堪える。
「ことば通りの排除である。状況次第では最高幹部にも及ぶ」
長官は嘗ての長官狙撃事件が頭を掠める。公然と脅迫するところが不気味である。
「真っ向、君らは国家権力に挑戦して勝てると思うのか?」
「そう云う議論はしない。一切は国民の判断である。警察は政治的中立を貫け」
電話が切れる。山城は脅迫に屈する屈辱を感じるが、事実関係の調査は必要と決意した。
大屋市長私邸、中西と大屋市長が深夜の応接室に対座する。応接机に置かれたコーヒーを飲む市長が中西にも勧める。中西も一口飲み用件を切り出す。
「ご承知の様に国民の賛否郵送を受取り、集計を望む団体が悉く陰湿な妨害を受け、警察までもがそれに加担している。市長は民意を非常に大切にされ、公務員は民意に中立たれ、
と主張し行動する姿に感服する。その市長に助けて欲しいとお願いはしない。ただ市域で活動を望む団体に少し目を閉じて頂きたい」中西は切々と訴える。
「おっしゃる主旨はよ~く判る。私も頑強に抵抗する既得権者達と日々戦争しているから。
ただ私も国民、気に入らない点を一言云いたいが」
「どうぞ、望むところです」
「まず州たる地方総督、知事と市町村長との間に行政的断層を感じる。県域で実行したい民生について市町村の合意形成は誰に権限があるのか? 民生だよ民生」
「あそれね。総督は藩主、知事は家老、市町村長は家老に所属する侍大将と思って頂くと理解し易い。但し家老は県の利益代表でなく藩主の補佐役です。藩は自給自足の国策を遂行するが、藩主、家老は民生の市町村合意形成に一定の権限を持つ。私らは自衛隊育ち、命令系統は一本で筋を通す。縦割り行政は公開した通り所管の一本化を実行する」
中西は市長の顔色を伺いながら、
「それで総督、知事の公募は不満ですか?」
「わけの判らん無能な知事を金と利権で選ぶよりまし。ただ公募の方法次第だね」
「決定の最終段階は市町村長も参加できる公開討論になる。納得できる水準の能力者を決める。但し総理の選定は国民、総督の選定は総理、知事の選定は総督とし一本筋にする」
市長は中西の説明を整理しているらく、腕組みし次の問いに移る。
「次に市区町村に権限と財源の移譲を唱えているが、財源はどうなります?」
「固定資産税と住民人頭割、諸種手数料は市区町村の固有財源。市区町村域の法人関連税、個人関連税は国税庁が一括徴収し、一定比率を市区町村の自由裁量権つきで配分する。地方域のたばこ税と酒税の全額を市区町村の格差是正に確保し、配分は総督と知事の権限に委ねる。総務省は地方域の格差是正に数兆円規模の財源を確保し地方域に配分する。他は使途の自由度までは未定ですが地方交付金です」市長はがっかりした様子で、
「たばこ税2兆と酒税1兆5千億では都道府県が使うと市町村配分は夢の夢」
「いやいや、たばこ税と酒税は丸ごと市区町村へ配分するひもなし財源です。都道府県は戦略予算で国策を遂行し、県税の類は一切なくし徴税を集約し徴税コストを低減します」
「藩主、家老は侍大将に人事権行使できないが予算配分権で従わせる、ですな、マ今まで随分と国に騙され、ぼったくられましたゎ」市長は笑い何となく納得した様子を示す。
「どうです。願いは聞いて貰えますか?」中西は確認する。市長は考え込み、
「う~ん、マァ貴方達は明智光秀みたいなもんだからねぇ」
「これはしたり、云うに事欠き明智光秀とは。我々は戦後日本の方向を決めた吉田茂だよ」
市長と中西は大笑いする。市長は中西より幾分年長だが同世代の気安さでうちとけた。
「で、賛否受付、集計を望む団体の心当りは?」
「ああ大有り、マスコミが最適ですが日和見でして。電波と通信の国務府直轄は電子政府の推進が目的と説明しても、マスコミはベタな勘繰り言論統制が頭をよぎるらしい。市長にだけ打明けるが、公共の電波使用を正すため、国民への公開情報番組を義務化したい」
「私の番組出演もクダランのですかねぇ」市長は皮肉っぽく尋ねる。
「いやいや、あれは市長の考えを発表する情報公開と受止めます。立派な事です。横道に逸れましたが、市長を応援する勝手連の旗上げ予定をご存知ですか?」
「いや、そんなのは一向に」市長は首を傾げる。
「そうですか、未だ旗揚げ前ですから。極く普通のおっちゃん、おばちゃんの団体です。実はこの団体をお借りして、国を変えるゾ勝手連、と名前を換えて貰いました」
「ほぉーそれで?」市長は身を乗り出し、耳を傾ける。
「恐らく大量の葉書が郵送される。その賛否を数える広い場所が欲しい。廃校を長くても3ヶ月間だけ不法占拠したい。市長は表向き強制退去を口にしながら引伸ばして欲しい」
中西は市長の耳元に口を近づけ、希望の廃校を囁く。
「エェッ、あそこは民間の任意団体が利用しているよ」市長は驚き首を横に振る。
「市長の暗黙の了解が得られると勝手連が話をつけます。が万一、その団体が市長へ直訴したときは、そのビッグマウスで上手く捌いて下さい」
「ビッグマウスねぇ」市長と中西は又も大笑いする。市長は極めて厳しい顔し、
「ウチの所属代議士の安全は確保してくれますか?」
「我々は戦友の言葉通り流血を望まない。早期収拾には国民の速やかな判断がいる」
「判りました。市長の権限と法律の許す範囲で」
市長と中西は晴れやかに握手して別れる。
議事堂・御休所前、香山が御休所に屯する隊員3名を窓越しに見つける。香山は走って御休所の扉を開き、
「おい、天皇陛下の部屋に入るな!!」隊員達は敬礼もせず横柄な態度をとる。
「成功するのか!? 少しぐらい・・・」一等陸士が反抗的に応える。
「お前達、根を上げるにはまだ早いぞ」
「上官づらすな!!」二等陸士が香山を睨んで反抗する。
「何!!」香山は二等陸士にサッと近づき胸倉を掴む。二等陸士が振り解き殴りかかる。
香山と二等陸士が殴り合いする。一等陸士と別の二等陸士が2人を引き離し、夫々が香山と二等陸士を羽交い絞めにする。銃撃の音が聞える。緊張する隊員達。
「行くぞ!!」香山と隊員達が駈出す。
議事堂・正門前敷地内、議員が正門へ向って駆ける。正門入口の柱から隊員が威嚇射撃する。議員が走る足下の横を銃弾痕が地面を削る。
「進むと射殺する、戻れ!!」衛視の服装する隊員が怒鳴る。
敷地外の正門ゲートの壁際から狙撃体勢をとる即応隊員。
「狙撃するな。撃つな、撃つな」即応隊員の後方から拡声器の声が飛ぶ。即応隊員が無念そうに狙撃体勢を解く。議員が両手を上げて引返す。
衆議院議長室、香山と中隊長3名が集り、小テーブルを囲んで座る。香山が頭を下げ、
「申し訳ない、私の隊が真っ先に規律を乱した」
「不安と疲れだ。穏便な処置を」第5中隊長が取り成して云う。
「隊員3名、脱出議員と両隣の議員は一昼夜の監禁と食事抜きにする」
「豚太りの脱出議員にはよいダイエットかも」
香山は反対意見がないのを待ち、
「次に明るいニュースがある。やっと大阪と名古屋に賛否を集計する団体が現れた。中西隊の活動が端緒についた。近く賛否数を発表するとの事だ」
香山の言葉に中隊長達が頷く。
「まだ半月だ、先は長い」第2中隊長が楽観を戒める。
中央郵便局前、男2人が大きな袋を夫々担いで郵便局より出てくる。歩道を歩き始める。
後から白いバンが男達に近づく。バンが停まり降りた4人の男が、担いで歩く男達の袋を奪う。袋を奪った男達はバンに乗込み逃走する。その間1分である。約20m後方を歩くNWHの轟記者は映画の一シーンを見る如く目撃する。奪われた男の一人が携帯する。
「・・・袋が強奪・・・」男は頷き再び喋る「中身・・・・場所は・・・」
轟は切れ切れの声を聞く。110番通報らしい。轟は男達に駆け寄り、
「怪我はありませんか?」
「幸い怪我は。朝からどえりゃ事になった」通勤帯も過ぎた9時も少し回った所である。
「お金のようには見えませんでしたが」
「金より大事な賛否の葉書ですゎ。局留めを引取ったとこでした」轟は理解した。
「それにしても遅いですねパトカー。110番したんでしょう、サイレンくらい聞えても」
広い道ではないが県警本部と大して離れてない目と鼻の先である。
「ええまぁ。ちょこっとかかるが直ぐ行って」轟が理解不能と首を傾げる。
「私らにも理解できませんよ。時にあなた、バンのナンバー見ましたか?」
視力1.5の轟は記者の本能で抜かりなく後部プレートを追ったが、
「ナンバープレートが隠されていました」
およそ30分も過ぎた頃にパトカーがやって来た。野次馬が集る。轟は離れて携帯する。
「国民の賛否を問う例の葉書が大きな袋ごと強奪された。その現場に偶然遭遇しました。今から記事を送ります」轟の電話に対し"何の目的で出張したのか、市長と知事の談話をとってサッサと帰れ"と命令された。編集部の返事は取付く島がなかった。
乗用車の中、警察庁長官・山城は出迎えの車に乗り出勤途上である。後部席に座り朝刊を取出した。愛知県警本部長の猟銃狙撃の見出しを眺める。記事は受けた報告と若干食い違うが幸い車の前輪に命中しバンクだけで事なきを得た。
警察の威信をかけているが犯人の目星はまだない。県警は暴力団取締りの反発を第一に疑っているが、山城には他に思い当たる筋があった。マスコミはどこも報道しなかったが、2日前の賛否葉書の強奪事件に対するパトカー派遣と、その後の捜査に問題を感じた。
あの電話した中西に疑念が湧いた。敢えて狙撃を逸らせた警告と考えるなら筋が通る。彼の云う排除する気なら彼らの狙撃銃を使うだろう。山城は改めて車の防弾に信頼を寄せた。と同時に警察管区本部長と北海道警察への長官通達だけでは不徹底だと悟った。今日にも県警本部長会議の招集を決意した。
国会議事堂・地下通路、即応隊が金属の盾に身を隠し哨戒陣地に近づく。
「近づくな!! 撃つぞ!!」哨戒兵が積上げた砂袋に身を伏せて叫ぶ。
即応隊が盾に隠れ腹這いしながら前進し、激しく銃撃する。哨戒隊が応戦する。
「衆院別館の地下通路で戦闘中」哨戒隊指揮官が通信機に向って叫ぶ。
即応隊が更に近づき哨戒隊陣地に手榴弾を投げる。哨戒隊が後退して逃げる。大きな爆裂音が響く。哨戒隊指揮官が導火線に点火する。
「点火!! 逃げろ!! 逃げろ即応隊!!」哨戒隊指揮官が叫ぶ。
両側壁の導火線が激しい火花を散らせて走る。
「退却!! 退却!!」即応隊指揮官が叫ぶ。
轟音と共に猛烈な土煙が舞上がる。通路が崩れ落ち無残な廃墟となる。
衆議院議場・傍聴席、香山が議員のいない議場を眼下に眺め怒気を露に電話する。
「侵入するなと伝えていた。結果は判っている筈だ。議員を射殺する」
「早まるな!! 待て、真相を糾す」南原の必死な声がする。
「今回は即応隊にも逃げる余裕を与えた。次からは容赦しない」
「2度と侵入させない」
「我々の戦闘力を試したのか?」
「違う!! ・・・統率の乱れだ」
「統率の乱れだと!? それでも精鋭部隊か」香山は顔を歪め、怒鳴り携帯電話を切る。
防衛省統合幕僚監部・応接室、統合幕僚長と新田、内閣官房副長官が集う。
「入院中だったがオチオチ寝てもおれん。もう4週間の膠着、どうお考えか?」
やつれた顔の官房副長官が統幕長と陸幕長・新田を交互に眺めて問う。
「治安出動に変えるしか手はあるまい」統幕長が一呼吸置いて応える。
「それで?」官房副長官が突っ込む。統幕長は新田の腕を掴み、
「賛否が割れる国論は後世に委ね今は超法規の治安出動に変えたい。どうです新田さん」
「先日の地下戦では即応隊に逃げる余裕さえ与えた。香山の統率力と戦意は侮り難い」
新田は苦渋に満ちた顔で腕組する。副長官は新田の決断を促す。
「私に権限はないが意見を言わせて貰う。今は賛成が幾分優勢だが、賛成は登る丸い太陽、反対は沈む半円の太陽、このデザインの魔術にかかり国民は登る太陽を投函する。国民の圧倒的賛成の下では動きがとれない。膠着が更に長期化し世界のもの笑いになる」
「副長官は今を措いて決断の時期はないとお考えですね」新田が問うと副長官が頷く。
衆議院議長室、香山と中隊長3名が集り、小テーブルを囲んで座る。
「統幕が突入を許可した。中西隊長からの報告だ」香山が穏やかな表情で話す。
「後世への啓蒙、覚悟の結果だ」第2中隊長が息を整え話す。
「当初作戦通り決戦しよう。想定外の攻撃は有り得ない」第5中隊長が決意を示す。
第3中隊長が両手でパンとテーブルを叩き、
「私の隊が真っ先に戦う。それを人質達に見せて最後の説得を頼む」
「説得は了解した。明日正門前で中西隊が見せ場を作る。隊員達にも見せたい」
香山が立上る。中隊長達も立上り、4名は手を伸ばし重ね合せる。
国会議事堂・中央塔最上階展望室、浜室総理と溝口防衛大臣、香山が正門前を展望する。正門前道路を横一列にテントが並ぶ。桜田門から正門へ押寄せるデモ隊を警視庁機動隊が立ち塞ぐ。デモ隊の拡声器が我鳴り立てる。
「自衛隊は張子の虎か、サッサと片付けろ!!」
デモ隊の後から押寄せる群衆も拡声器で応酬する。
「国民契約を実行させろ!!」群集がデモ隊の背後から襲いかかる。
デモ隊、群集、機動隊が三つ巴の乱闘になる。即応隊がテントから飛出し乱闘を眺める。乱闘を眺める総理、溝口、香山。香山が2人を等分に見詰め、
「ご覧の通りです。自衛隊の無能を世界や国民に曝すのはもう限界でしょう」
「即応隊が実力行使? 誰が命令するのだ」溝口が香山を振返り詰問する。
「皆さんにはもう当事者能力がない」香山は辛らつな言葉を吐く。
「私はまだ国民に付託された総理だ!!」総理は乱闘を見詰めたまま応じる。
「暫定憲法制定と国権の移譲を決議して頂く。期限は明朝の戦闘開始迄です」
香山は総理を見据えた。総理は振向き香山を睨み毅然と、
「暴徒の要求には屈しない」
「まだ総理にしがみ付くお積りか!?」香山は怒鳴り返す。
香山は悄然とする総理を冷笑して眺める。
正門前・夜のテント内、即応隊司令官と中隊長達が集う。司令官が中隊長達に命令する。
「明朝0500を期し突入する。彼らも精鋭中の精鋭だ。奇襲は通用せん。正攻法で戦う」
南原陸将は立会って見守り、言葉を追加する。
「同志撃ちは忍びないが、事ここに至っては諸君の無事を祈る。最後の説得を試みる」
南原は涙を浮べ、テントを立去る。南原は腕時計2215を見る。
衆議院議長応接室、2230時、大きい豪華な応接机がある。佐原元幹事長と香山が隣り合う柔らかいゆったりした椅子に座る。香山が机上の日本酒をコップに注ぎ、
「愈々明朝は決戦です。お別れの盃です」
「若い議員達を解放してくれんか?」
香山はコップを捧げ、一気に飲み干し、
「それはできません」
佐原元幹事長も酒を一気に飲み干す。香山の顔を凝視し、
「別れの盃だけでワシを呼んだのではあるまい」
分隊長が慌しく駆け込む。
「南原陸将が今すぐお話したいと・・・」
「今しばらくお待ち下さい」香山は佐原元幹事長に一礼して立去る。
中央塔上階の大広間、香山は装甲車上に立ち照明灯が照らす南原を見る。
「ご用件をどうぞ」香山は拡声器のマイクを握り話す。
「これが最後だ。奥さんの話を聞く様に」南原の声を聞き取る。
双方の拡声器の声が星空に響き渡る。南原と入替り雅代が車上に立つ。車の後方、横一列のテントが照明を一斉に灯す。
「貴方ごめんなさい。強制されたの」
「折角の機会だ、怖がらずに話しなさい」香山は雅代を凝視する。
「死なないで貴方。道連れを出さないで」雅代は必死の形相し声が震える。
「それはできない。最後の一兵まで戦う。国民は我々を理解し我々に続く者が必ず現れる。隊員達のご家族やお前達に苦難の人生を歩ませるが許してくれ」
「その事なら心配しないで。隊員のご家族や息子達に、昔その父が日本の歴史を、世界の歴史を変えるために戦った。誇りと自信と持って生きるよう伝えて歩きます」
雅代の声は震えず凛としていたが、喋り終ると車上に泣き崩れた。香山はマイクを離し、「生き抜いてくれよ雅代」と呟き、
アラモ砦・皆殺しの歌を拡声器から流す。香山は思い出に耽る。
アパート・香山家・居間、1992年―バブル崩壊― 14歳の香山。学業のカバンを置き、襖を開ける香山が母と妹が並ぶ寝姿を見る。
「ただいま。夕刊配達終ったよ」
起きない母と妹、香山は傍に駆寄る。母と妹の顔を撫で号泣する。枕元に遺書。
「もう直ぐ中学卒業だね。伸吾は独りで生きなさい。貧乏な母を許しておくれ。病弱な美紀は連れて行きます」溢れる涙で字が霞むが、母の声が読み聞かす。
香山は畳を叩き叩き、
「母さんに働き口がなくても、僕が自衛隊に入り学業と収入を得ると云ったのに・・・」
香山は唇を噛み締め、母と妹を抱締める。
香山家・玄関、10日後の日曜の昼前、ノックの音を聞く香山が半間の出入口扉を開く。
母と別れ、小学3年生から会っていな父、花村伸也が半畳の玄関にズカズカと入る。
「今頃何で来た」懐かしさは微塵もなく、母を捨てた腹立たしさが込上げた。
「女とは別れた。お前達に済まなく思っていた」
「帰れ、帰れ帰れ」香山は父の身体を押し突出そうとする。父はその手を受止め、
「伸吾よく聞け、母さんは意地っ張りな女、いや芯の強い女と云うべきかな、父さんの援助を拒み続けた。人生は意地で生きるものでない。柔軟に生き抜くそれが大切だ」
「何が云いたい。母さんを非難しに来たのか? だったらサッサと帰れ」
「そうじゃない。母さんは母さんの生き方をしてしまった。美紀が可愛そうだ」
香山は"美紀が可愛そうだ"と云う父の言葉に押す手を緩めた。
「どうだ伸吾、父さんと一緒に住まないか。好きな学校へも行ける」
香山は"伸吾は独りで生きなさい"母の遺言を守り独り生きる覚悟だったが、寂しさは耐え難いものがあった。
6年後、チャールズ川の畔、中西次郎と香山が木陰のベンチに並んで座る。
「無二の友、君にだけ打明ける。俺は今年の防衛大学入試を受ける」中西が唐突に云う。
「日本の防大か、なんで? 苦心して入学したエリートの道を捨てるのか」
香山は同じ時期に入学し、親しく交わる友の言葉は寝耳に水、信じられなかった。
「世界の進む方向は間違っている。だが俺はもうそんな事を考えるのが面倒臭い」
「逃げ出すって事か」
「まぁ早く云っても遅く云っても、そう云う事だ」
香山はサラリと受け流され戸惑った。ただ防大と云う言葉が記憶に突き刺さった。沈黙を保ち、川面を見詰める。練習するレガッターが通り過ぎる。香山は意外な決意を口走る。
「そうか、君の論理は一朝一夕には聞けまい。俺も付き合うよ」中西は驚き伸吾を見詰め、
「伸吾まで俺の真似する必要ない」
「いや俺の決心はもう変らない。次郎の論理をトコトン議論したい」
こうして防大の期間も議論が続いた。配属されてからは広く仲間も増えシンパも増えた。
5、6年前からは議論では埒があかない。行動が必要との考えが大勢を占めた。
香山は過去の出来事が次々と浮んだ。香山は現実に返った。
「同志を全員死なせてよいのか」
香山の心が突然、張り裂けるばかりに痛んだ。長年思想信条を共に議論し鍛えぬいた同志を一挙に失う。再起の種を残さねばならない。
衆議院議場、衆参議員達が溢れる。隊員達が議場内を取囲む。香山が演壇に立つ。
「今23時15分である。議会が開けるこの状態で今晩寝起きして頂く。暫定憲法制定と国権の移譲を決議する残り時間は約6時間。戦闘が始まれば遅からず皆さんと共に死ぬ」
香山は隊員が差出すマイクに向って話し、周辺に張り巡らせた導火線を指差す。
「私に話させてくれ」ひな壇の総理が香山に手を挙げて云う。
「総理どうぞ」香山の言葉で総理が演壇に降りる。
「私の内閣は暴徒の要求に屈するより死を選ぶ事に決めた」
「勝手に決めるな!!」議員達が一斉に叫ぶ。
「お前らだけが死ね!!」議場はヤジと怒号が渦巻く。
「五月蝿い!! 黙れ!!」香山は自動小銃を速記席に打ち込む。
「節を曲げずに死すは万世のため。皆さんに申し訳ないが政治家の代りは多数いる。この不名誉な事態の教訓を後輩に託す」総理は深々と頭を下げる。
「云いたい事はそれだけか!!」再び議員達の罵声が飛ぶ。
前列左翼で揉み合う議員Aと議員B。
「議員立法で要求を受入れようじゃないか」議員Aが後を振り返り叫ぶ。
「バカ野郎!! 凛とした日本男児の心意気を後世に伝える」議員Bが叫ぶ。
「バカ野郎とは何だ」議員Aが議員Bに掴みかかる。
香山は再び速記席に銃を連射する。
衆議院議長応接室、1150時、香山は佐原元幹事長の隣に座り見張りの分隊長に、
「ここは2人でよい。持場へ戻れ」分隊長は敬礼して立去る。
「君達は赤穂47士にはなれないぞ。彼らは事を成し遂げた。君は破壊するだけだ」
佐原元幹事長は香山を見詰めて諭した。
「もし西南の役で有能の士が死ななければ、維新後の日本は変っていたと思いますか?」
佐原元幹事長は香山の突然な問いに間を置き、腕組みし、
「歴史にもしはないが、日本の歴史は変っていたかも知れん」
「明日は皆さんを盾に最後の一兵まで戦う積りです」
「若い議員や隊員も解放する気にはならんかね?」
「半数の隊員は何も知らずに従いました。今はもう一心同体で戦意旺盛です。衆参議場に各議員全員を拘束しています。先程の議員の混乱を考え、戦闘中は隊員を張付けます」
更に香山は佐原元幹事長の膝を掴んで揺すり、
「指揮官全滅後は議場へ兵が逃込み、議場に仕掛けた爆薬を点火します。その兵を鎮め犠牲を抑える役をお願いしたい」
「大役だな、最後のご奉公だ。必ずやり遂げる、安心しろ」佐原元幹事長は大言を吐く。
「最後のご奉公なら他にも方法がある。暫定憲法制定と国権の移譲を説得して欲しい」
「何!? ワシにやれだと!!」
「そう、貴方に力が残っておればです。成功は中央広間4人目の銅像を約束します」
「ワシがやらねば君らは銃剣でやる気か?」
「日本の改革は維新も戦後も武力でした」
佐原元幹事長は"ん~"と唸り考え込む。
「一つ聞くが、8年で退陣を約束できるか?」
「勿論。我々のマニフェスト、いや国民契約ですから」
「さぁそれよ。ワシはもう2度と信じたくないんじゃが・・・」
「暫定を取除く憲法草案起草の首席を勤めて頂く。銅像には大儀が必要でしょう。何より多数の人命がかかっています」佐原元幹事長はニャッと笑い、
「君の様な男を思う存分使って見たかったよ」
佐原と香山は立上り、握手する。香山はコップに酒を注ぎ佐原と乾杯する。
議事堂・中央大広間、香山と中隊長3名が赤い絨毯の真ん中に立つ。
「一つだけ作戦を変更する」
中隊長達はこの期に及びと、怪訝な顔して互いの顔を見合す。香山は言葉を続ける。
「各中隊長は有能な隊員を選び、地下に拘束する職員達等の監視をさせよ。彼らには交戦させるな、降伏を厳命せよ。我々が全滅後も必ず生きて日本の再生に尽くせと説得せよ」
「何も知らず我々に従った隊員が戦いを拒否するなら監視隊員に加えてもよいか?」
第5中隊長の発言に各隊長が意見を云う。
「それは中隊長の統率力が問われるなぁ。そんな隊員が続出したら収拾できないぞ」
「確かに、そんな隊員はいないと確信できる隊長はいないよなぁ」
香山は決戦を控え、隊長達のリラックスした発言に戦いは勝つと確信した。
「よし、戦意喪失の隊員が何人いたか一切問わない。各隊長の判断に委ねる」
香山は決断を下し散会した。
衆議院第一委員室、0030時、佐原が子分の議員達を集めて演説する。その数70名程である。
「愈々突入だ。我々を盾に戦う積りだ。何としても先ず生きねばならん」
「そうだ、そうだ」議員達も極度の緊張感を漂わせる。
「私はこの際、忍び難きを忍び、暴徒の要求に応じてはどうかと思う」
「総理は頑固一徹、説得は難しい」
佐原は子分達の緊張が幾分ほぐれた頃合と見て、
「議員立法の形式しか方法はあるまい。私に一任して貰えるか?」
「勿論先生に従うためにここへ来た。そうだろうみんな」
「一任する。異議なし」議員達が口々に叫ぶ。
佐原は子分達をジロッと見渡し、
「時間がない。他の議員の説得に当って欲しい」議員達は"おぅ"と叫び立去る。
数こそ減り力が衰えたと云え、佐原は鉄の軍団を堅持していた。
楠木邸の門前、3名の男が門前に集う。男がインターフォンの釦を何度か押し、
「警視庁刑事の曽根です。緊急の用件で楠木社長にお会いしたいのですが」
「どうぞお入り下さい」少し間を置きインターフォンから女声が聞える。
門が開き、3名は玄関に向う。曽根が玄関ドアを開き、男達が玄関内に入る。妻らしい女性が出迎える。50代のでっぷり太った男、楠木やって来る。
「夜分遅くに失礼します。実は貴方の誘拐と日本ツリータワーの送信所が爆破される恐れがあり、警護にやって参りました」曽根は来訪目的を説明する。
「夜分ご苦労さんです。有難う御座います」楠木は落着いて応える。
「明朝8時の交代が来るまで、寝室前で私がガードします。他の者は外で・・・」
「いや、今日は若夫婦と子供も留守ですから家内と2名を家の中で警護して・・・」
「お邪魔でなければそのように」
「お上がり下さい、どうぞ此方へ」男達は楠木と妻女に従い廊下を歩く。
「奥さんはどうかお休み下さい。2名が寝室前で警護します」
応接室、楠木が応接椅子に座り、曽根がソファーに座る。
「日本ツリータワーにも警備班が出向いています。念のため社長からもタワーの保安主任に電話して頂けませんか?」
「判りました」楠木は立上り、部屋隅の電話台に置いた電話をとり電話する。
「保安主任か? 楠木だ。そちらに警視庁の警護班が行く。その指示に従え」
「社長、電話を代って下さい」曽根は電話を受取る。
「私は社長を警護している曽根です。警護班は何事もなければ午前中に引揚げます。明日は通常通り営業して下さい。大袈裟になると営業に差支えるので警護班の存在を貴方の胸に収め、他に誰にも漏らさないよう厳重注意して下さい」
保安主任は口止めに納得した。曽根は安堵して電話を切る。携帯を取出し電話する。
「こちらは曽根です。楠木社長の警備配置につきました。以上報告します」
壁の柱時計は0時20分である。
ホテルの一室、中西隊長が小さな無線通話音を聞く。
「こちらは日本ツリータワー警備班、0050警備配置完了」
「了解」中西は携帯電話する。
「大日テレビ、飯塚会長の御宅ですか?」
寝室のベッドに腰かけ、卓台の電話機をとる飯塚が不機嫌に、
「誰かね? 夜中に電話とは非常識じゃないか」
「貴社にだけ特種を提供する。明朝5時から議事堂内部の実況中継を特別に許す」
「何!? 君は暴徒の一味だな。ウチは抜駆けせん」飯塚は眠気が吹っ飛び緊張する。
「暴徒のPRはしない、大手マスコミの密約だな。この話を断るなら日本ツリータワーの送信所を爆破する」中西はドスを利かせ脅す。
飯塚は立上り、ベッドの横を行き戻りして考え込む。送信所は各社テレビ放送局の本格運用を間近に控えた重要施設である。だが現状の送信は維持できる。飯塚は脅しに屈する無念の感情と、元記者魂が世紀の特種を掴む欲望に心を揺らす。幾分緊張の緩んだ飯塚は日頃の決断力を取り戻した。脅しは抜駆けの言い訳になると判断するや、
「中継は引受ける。爆破はしないと確約するか?」
「送った生映像を細工したり、勝手に放送を中断すると確約はできん」
「その条件は心得た」
「心得たでは駄目だ、そちらも確約しろ。今は午前1時過ぎだ。2時に本社玄関前に中継用の無線受像機とその設置条件を記載した説明書を置く。読めば技術者なら判る」
「確約する」飯塚は数分の電話が何時間にも感じた。
議事堂正門前道路、0200時、報道陣が一斉に退去を命じられる。自衛隊警備隊員が腕章を巻いた報道クルーへ静かに近づき、退去を要請する言葉もなく、まるで拘束するかの如く腕をつかみ連れ去る。
「報道の自由を束縛するのか?」報道クルーの一人が警備隊員に抗議する。
「上層部の命令ですから、退去頂けない時は警備車内に留まって頂く事も許されています」
「それは不法監禁じゃないか?」
「まぁまぁそんなに興奮なさらずに、暫く退去して頂くか、警備車内に保護するかです」
「と云う事は・・・」
「ご想像にお任せします。さぁご同道下さい」
言葉は丁寧だが、報道陣は有無を言わせず退去を強制された。
衆議院第一委員室、0210時、佐原は腹心の幹部と票読みをする。佐原の子分達が頻繁に出入りし、列挙した衆参議員名の先頭に記入した◎、○、△、Xが増える。
「二重丸、丸と合せてまだ過半数、電話攻勢できんのが悔まれる」腹心はイラつく。
「ないものねだっても仕方あるまい」佐原は子分達の成果をひたすら待った。
子分が慌てて駆込んで来て、
「総理一派が反対活動をしている。どうも総理は解散を目論んでいる」
「そうか。暴徒の親玉がどう対処するか、奴さんの政治的力量が判る」佐原は動じない。
「座して死を待つのかと説得しても反応が鈍い。この度ツラツラ判ったよ。自分で判断もできん男が国会に集っていたんだ」子分は嘆かわしそうにため息を吐く。
「バカもん、ため息する暇があったら説得に走れ!!」佐原は子分に喝を入れる。
衆議院議場、0235時、自動小銃を構える隊員が物々しく議場を取囲んでいる。議員の出入は隊員の同伴つきで厳しかった。香山が議場にやって来て、ひな壇に駈け上がる。
浜室総理に一礼し、小声で話し始める。
「総理、即応隊の総攻撃は2時間半後です。お考えは変りませんか?」
「暴徒に屈する積りはない」浜室は目を閉じ腕組みして昂然と云い切る。
「私の隊員は死を覚悟し、新生日本のため皆さんを道連れにします。少なくとも千人の死傷者が出るでしょう。それでも意思は固いですか?」
「くどい、変らん」
「そうですか、致しかたありません。その残虐な場をお見せする前に、決戦場で隊員の盾となって突入隊の狙撃で死んで頂きます。日本国総理に対する私の敬意とお考え下さい。
では別の部屋にご同道願います」
「幾ら脅しても無駄だ」浜室はなおも強気を崩さない。
「私は甘くないですよ。今をもって説得を諦めます。実行するためのご同道です」
香山を浜室の腕を引張り、腕組みする形でひな壇を立去る。議席内を激しく移動する議員に注意が集り、議員達もひな壇の閣僚も誰一人として総理の退場を注視しなかった。
衆議院第一委員室、0430時、佐原元幹事長が配下の議員達数名と話し込んでいる。香山がやって来て佐原に近づき、
「佐原さん、状況はどうですか?」香山が尋ねた。
「総理を議場から退去させた君の処置は総理の解散権を封じたが、防衛大臣を不信任案でクビにし、新防衛大臣に突入命令を撤回させる。この手が使いたくても任命権者の総理が不在・・・」
「待って下さい。そんな国会テクニックをお願いしたのでありません。時間切れですよ」
「解っておる。話を聞け」佐原はいらつき、不機嫌である。
「君達の暫定憲法を合法化し、君達に政権移譲する手段は衆参3分の2の賛成が必要だ。そうでないと合法性に関し日本国の将来に禍根を残す。過半数は超えたが3分の2に達しないのだ」香山は面倒臭いなぁ、合法性などクソ喰らえと思い期待しないしが、
「ご尽力はよく判りました。ですがもう時間です、今から作戦体制に入ります。皆さんは衆参夫々の議場に戻って下さい。議場からの出入は禁止します。まだ30分あります。議場内で説得工作を続けて下さい。衆参院間は何時でも連絡できる状態を保証します」
香山は室内の周囲に待機する隊員に命令する。
「先生方を夫々の議場にお連れせよ」
議事堂正面の正門、0500時、即応部隊が突入を開始した。香山達は正門の扉が引倒され、破壊して来ると予想したが、クレーン車が正門越しに鉄板の衝立を敷地内に並べる。突入隊は衝立の後から正門を乗越えているらしい。突入隊は衝立の陰に隠れ姿が見えない。
衆議院1階窓際に配置した隊員はなす術がなかった。
「発砲中止、待機せよ」第3中隊長は隊員に命令した。
衝立に設けた窓が開き、催涙弾を撃ち始めた。衆議院1階窓ガラスの上部を割り、催涙弾の室内に着弾する。これは想定通りある。
隊員達はマスクを装着して突入を待ち構える。拘束していた戦場のカメラマン・伊吹がテレビ中継の携帯カメラを担ぎ、催涙弾の着弾を映し突入を実況中継する。
「ここは衆議院1階、撃ち込まれた催涙弾が猛烈な白煙を吹き上げています。ご覧の様にその数は半端ではありません。あの鉄の衝立に設けた窓から撃ち込んでいます」
伊吹はカメラだけをチョッと窓から覗かせる。ガスマスク姿の隊員は映さない。
東京都内のある家庭、熟年の主婦が朝食の支度をする。主婦が台所用の小型テレビを大日テレビのチャンネルに合す。議事堂内の実況中継が映る。
「あなた大変よ、あなた、あなたー大変」
「何を朝っぱらから素頓狂な・・・」寝室であろうか亭主の諫める声がする。
「早く居間のテレビつけて、大日を映してぇー、議事堂が大変なのよ」主婦が叫ぶ。
「何ぃー!!」主婦が台所を抜け出し走る。
主婦と亭主は居間のテレビに噛り付く。
「こらぁ浅間山荘事件の比じゃないぞ」どうやら亭主はふるーい事件を知っている様だ。
防衛省統合幕僚監部・応接室、幕僚長と自衛隊幹部が集う部屋へノックもせずに、3等
陸尉が息を切らせて駆け込む。
「失礼します。テレビ大日チャンネルをご覧下さい」
自衛隊自前の映像に変えて、テレビチャンネル大日に切換る。並み居る幕僚長と自衛隊幹部が驚いたのは主婦と亭主の比ではなかった。戦後60年来の残酷な同志討ちを国民から隠蔽するため、報道管制を敷いたが、占拠隊に見事裏をかかれた。
「大日の会長を呼び出せ!!」新田陸幕長が叫ぶ。
「ここまで越させるには・・・」幹部も頓珍漢で応える。
「バカ 電話だ電話」
議事堂正門・敷地内、金属の盾に身を隠し突入隊が衆議院1階に向いほふく前進する。戦場のカメラマン・伊吹がその様子をカメラに捉える。
「突入隊の前進が始まりました。突入隊100名は超えるでしょうか、3列横隊で金属の盾がこちへ向って来ます。ご覧になれるでしょうか? あっカメラに向って発砲してきました。衆議院1階、こちらからも激しく一斉に発砲しました。突入隊は金属の盾に身を隠しています。こちらは頭をすっぽり白い布で被う議員でしょうか、人質を盾にしています」
カメラは黒い布で頭を被う隊員が人質の後から射撃する様子をカメラに捉える。
「あっ突入隊が人質に気付いたのでしょうか、発砲を中止しました。突入隊が金属の盾と共に身を伏せました。あぁ~、再び窓の低い位置へ催涙弾を撃ち込み始めました。ここはもうこれ以上、息苦しく涙が出て中継できません。他へ移動します」
議事堂・衆議院側1階、ガスマスクをつけた突入隊が窓を壊し、衆議院1階に雪崩込んでくる。雪崩込む突入隊と占拠隊間で散発的な発砲が起る。双方の何人かが倒れる。
第3中隊長が命令する。
「点火せよ、点火~」中隊長が銃弾に倒れる。
窓枠の上部に設けた導火線が激しい火花を散らし、猛烈な勢いで其処ここの爆薬へ進む。
「退却、退却、退却~」突入隊の指揮官が退却を命令する。
議事堂・正門内、クレーンに吊るし、防弾ガラスで囲う箱の中、一等陸佐と一等陸尉が突入隊を眺める。突然、突入先発隊指揮官の退却命令が箱のスピーカに届く。衆議院1階へ突入した隊員が我先に窓から飛び出す様を目撃する。
早朝の議事堂周辺に百雷が落ちた如き轟音が響き渡る。衆議院1階窓から猛烈な勢いで黒煙が噴出す。見る間に議事堂左、衆議院建屋を見えなくする。
「衆議院内部は粉微塵に吹き飛んだかも・・・」一等陸尉が無念そうに口走る。
衆議院議場、0615時、発砲音を聞く議員達の目が血走り騒ぐ。猛烈な轟音が議場を揺らす。隊員達が議場に駆け込んでくる。指揮官の三等陸尉がハンドマイクを提げて喋る。
「先生方騒ぐな、落着け。見苦しいぞ。突入隊はまもなくここにやって来る。我々は先生方と共に自爆せよと命令されている。今から爆薬の起爆装置を作動させる」
「待てっ、指揮官待てっ」議員が叫ぶ。
「何だ、何だ」別の議員も叫ぶ。
「待ってくれ、議長、採決しよう」何人かの議員が異口同音に叫ぶ。
「そうだ、採決、採決だ~」議員が雪崩をうって叫ぶ。
議場は議員の叫ぶと怒号も混じり混乱の極みである。議長が木槌を何度も何度も激しく叩く。まるで半鐘を突く様に。議場が静まる。
「只今から佐原君から緊急提案のあった暫定憲法の即発布と政権移譲の審議を行う。賛成討論を佐原君から実施する」議長が発言する。
「そんな事はよい。採決に進めろ、採決だ」
「そうだ、そうだ」
「よろしい。本件に反対の方は起立願います」議長は採決を宣言する。
議席の数人がパラパラと立上り反対を意思表示する。
「賛成3分の2を超える多数で本議案は可決しました」
議場は拍手喝采が鳴り止まない。佐原元幹事長はひな壇に駆け上り、議長席へ近づくと、
「溝口防衛大臣、議長の所へ来てくれ」佐原が大声を出す。溝口がやって来る。
「お~い、指揮官、ワシら3人を参議院議場へ案内してくれ」佐原は三等陸尉を呼ぶ。
衆議院1階内部、内部は作戦通りさしたる損傷はなかった。大音響と黒煙だけであった。香山がやって来る。第3中隊員達が一斉に敬礼する。一等陸曹が香山に駆け寄り、
「当隊死者2名、うち一名は篠原第3中隊長であります。負傷者5名であります」
「突入隊は?」香山が尋ねた。
「負傷者は判りませんが、死者は同じく2名、あそこに4名を並べています」
「そうか、ご苦労、新品の寝袋を用意し死者を収容せよ」
香山は寝かせた死者に近づく。屈んで合唱し一人一人の顔を撫でる。
「おい、誰か水筒とガーゼはないか?」香山は死者を見詰めたまま尋ねる。
「先程、医者が置いていった箱に残っています。水筒は私が持っています」
「よし持って来い」香山は隊員から水筒とガーゼを受取った。
香山は夫々のガーゼに水筒の水を含ませ、4名の唇を夫々に拭った。香山は十数年前の母と妹が死亡した際の行為を思い出しながら、何度も何度も丁寧に拭った。
3等陸尉が息を切らせて駈けて来た。香山の傍に立ち敬礼し、
「第2中隊、川瀬です。中隊長が中央塔4階に至急お越し下さいとの事であります」
香山は川瀬を振り向き、ゆっくりと立上って頷いた。
議事堂、中央塔4階、0748時、香山がやって来た。溝口防衛大臣と日野第2中隊長が待っていた。日野は香山を認めるや敬礼し、
「参議院も3分の2を超える圧倒的多数で緊急動議を可決しました。大臣に突入中止を下令するようご同道願いました」
「そうですか、安堵しました。私もこれ以上の犠牲者は耐えられません」
強い香山の姿は見る影もがなく、シンミリした口調で話した。
「犠牲者の数は?」
「今のところ確認は4名です。それより早く中止命令を」
溝口は用意されたマイクを握り、
「私は防衛大臣の溝口である。即応隊司令官並びに隊員諸君、突入を中止し隊への復帰を命じる。この突入命令に関与した者は追って沙汰するまで謹慎せよ」
「大臣、そこまでは・・・」
「暫定憲法の発効は4月25日0時だ。総理の不信任案も可決した。解散か総辞職の決定だが、それまでは防衛大臣である」
「では私達を含め解任も可能ですね」香山が溝口の意思を確かめた。
「国の防衛に混乱を起すそこまではやらんよ。君らの暫定憲法は中身の評価はせんが、経過処置はよくできておる。あとは君らに任す」
「あとは幕引きと国民への説明は誰が・・・」
「そこが問題だ。浜室総理は頑なに拒んでおる。佐原先生が説得しておるが多分無理だ。私の考えでは衆議院議長になると思う。ただ君らにも問題がある。聞くところによると、君らは国民の支持を郵送させているそうじゃないか。過半数の賛成は得られるのかね?」
「過半数は確実ですが、やはり圧倒的支持が必要です。欲張ることもできませんが」
「暫定とは云えこの憲法に疑問は残るし、この度の議決にも疑問は残る。まぁ歴史に評価を委ねるより仕方あるまい」
「昭和憲法も押しつけられた。憲法制定の理屈は学者に任せりゃ良い。私達は今や存在する暫定憲法によって明日からの現実に立向います」香山は成立過程に無関心を装った。
香山は直立不動の姿勢で溝口大臣に敬礼した。
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