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プロローグ:胡蝶の夢
昔者荘周夢為胡蝶。栩栩然胡蝶也。自喩適志与。不知周也。俄然覚、則蘧蘧然周也。不知周之夢為胡蝶与、蝶之夢為周与。
(昔、荘周が夢の中で蝶になった。ひらひらと舞い遊ぶ蝶になりきって、自分が荘周であることを忘れていた。ふと目が覚めると、紛れもなく自分は荘周であった。荘周が夢を見て蝶になったのか、それとも蝶が夢を見て今の自分――荘周になっているのか、彼には分からなくなったという)
――『荘子』斉物論より
この有名な一節を、かつて僕はただの屁理屈だと思って笑っていた。
だが、今の僕にとっては、これほど切実で、喉元に突きつけられた刃のように鋭い問いはない。
どちらが現実で、どちらが夢か。その境界線が、朝露のように淡く消えようとしている。
さあ、夜が来る。どちらが本当の僕なのか。その答えを確かめに行こう。




