第7話 拒絶じゃなかったのか
「あ」
すごく嫌な予感がした。
「唯ちゃん、もしかして…」
「あー、石川君が勘違いしない事を祈りましょー…」
急遽警察庁へ出向き有給休暇の申請をしに行っている車の中で思ってしまった。「理由をつけて退出した場合も拒絶とみなし行為を禁ずる」、これは男性側だけじゃなくて女性側も対象になるんじゃないか、と。そして拒絶したことについて、石川君がどう思ってしまうか…
「唯ちゃん、確認お願いしていい…?」
「もし適用されたら、少なくともあの部屋ではできないってことですよねー…今確認しますねー…石川君のフォローもお願いしとこ…」
私は総監室へ電話をかけ唯ちゃんは保管省に電話をかける。車はミヨさんの公用車に乗っているので運転手付きだから電話ができる、まあ警察正だから急用につきって事で免除されるんだけど、運転中の携帯電話使用は危ないから私はしない。…あの部屋で有給取るって電話すればよかったじゃない…!わたしは馬鹿だ…!後悔先立たず、仕方ないので総監秘書に電話をかける。
「もしもし鹿島です、総監に話は伝わってますか?」
『おはようございます鹿島警察正、把握しております』
「その案件で有給取るので回してもらえますか?」
『では後日報告書を総監宛てに提出願います、公務扱いになるので有給の必要はないですよ。高田警察正も同じです』
「承知しました、ありがとうございます。では」
ちょうど唯ちゃんも切った様子、ただし顔色は良くない。
「だ、ダメだった…?」
「いやー…一応男性用の法ではあるけど、石川君に通じるかどうかはわからない…って」
「…とにかく戻って車で改めて行きましょ、何かプレゼント買った方がいいかも?」
「そうですねー、せめてものお詫びはしないとですよねー…」
そうして私達は昨日から着替えもせずにプレゼントを物色する為に六本木へ向かう事にした。
「暇だなあ…」
朝のトレーニングを終えて、2人に拒絶されてしまいいよいよ何もすることがない。まあ、そもそもTV観ないし…僕って趣味がトレーニングしかないんだった…この世界で何か新たな趣味を見つけようか、相談したいけど誰に?鹿島さんと高田さんは有給取りに行ったらすぐ帰ってくるだろう、ただしそれがいつなのかはわからない。うーん…せめて連絡が取れる携帯電話は欲しいなあ。できればノートでいいからパソコンも欲しいところだけど、誰にどうやって伝えたらいいんだろうか…?
「あのー」
壁に向かって声をかけてみたんだけど反応はない。扉は即直されて、鍵はどうだろう?開いた。ならこの建物を探索しようかなぁ、誰かに声かけて石島さんに来てもらうといいかも。そう思って扉を開けたら、待ち構えるように石島さんが立っていた。
「あ、ちょうどいいところに」
「どうしたのかしら?不満があるなら何でも言ってちょうだい、出来る限り用意するから」
「えっと、携帯電話とノートパソコンが欲しいなと思いました」
「ふむふむ、そうなると回線も必要になるわね、携帯はすぐ手配できるけどパソコンは待ってくれるかしら?一応ここは拘束室なの。必要以上の刺激を与えないためにわざと何も情報がない部屋になってるから」
「なるほど、しっかり考えられているんですね」
「悲惨な人生迎えている男性が圧倒的なのよ。省長も心を痛めているわ」
「はい、それで携帯電話なんですけど…」
「一応聞くわ、誰に電話するの?」
「え?鹿島さんに…あ、番号知らないから電話できないんだ…」
番号知らなければ携帯なんてただの板だよ…ソーシャルゲームをする趣味ないからこの機会に触ってみるのもいいかもしれないけど…
「はい、携帯電話よ。今のところ5人分の電話番号が登録されているわ」
と差し出された携帯電話。…これ、僕が持ってた携帯だよね?この世界じゃ使えないんじゃなかったっけ?と思ってたらどうやら顔に出てたらしい。
「石川君が持ってたものと近い物、まあほぼ一緒だと思うわ、文部科学省が徹夜で分解して照合したらほぼ同じものがあったんだけど、石川君が持っていた携帯はごめんね、この国で保管するわ。その代わりにそれを日本政府から進呈という事になったのよ」
「そうでしたか、お手数おかけしました。ありがとうございます」
バイトで習ったお辞儀を綺麗に行う。一応「礼儀正しいな兄ちゃん」と評判がいい。
「こちらこそ、石川君にまつわる事を色々調べさせたことをお詫びするわ」
「調べて分かる事、って何かありました?」
「異邦人だという状況証拠は揃った、ってところね」
「あー、じゃあ僕の家族はやっぱりこの世界に居ないと…」
「残念かしら?」
「過ぎた事ですし、今は大丈夫です。それで、僕の免許、というか戸籍ってどうなるんでしょう?」
いつ帰ることができるかわからないし、この世界でも戸籍は持っておかないと身分証明書だったり住民票だったり持ってないとバイトもできないよ。
「極秘裏に臨時国会で速やかに決まるからそこは安心してちょうだい。戸籍はすぐ作成されるわよ、それよりも電話はしなくてもいいの?寂しいんでしょ?」
石島さんがニヤニヤしながらそう言ってくる。寂しい、というかおあずけされてる柴犬みたいな心境なんだよね。据え膳が逃げていくっていう、それは据え膳じゃないよね…なんて。
「ではお言葉に甘えて、この携帯頂きますね。さっそく電話したいのですが…」
「ん?なにかしら?」
「拘束室で電話って大丈夫なんでしょうか?」
「禁止している訳ではないから大丈夫よ。ネットに関しては…そうねぇ、カズちゃんと相談してみたら?」
「鹿島さんとですか?」
「宣言したんでしょ?あの2人に」
「ええ、有給取りに行くって出ていっちゃったので拒絶扱いになっちゃいましたけど」
「それね、男性側しか有効じゃないのよ。明文されてないだけで、実際は男性が拒絶した場合の事を指しての拒絶なわけ」
なら、あれは本当に宣言を真に受けた上での有給取らなきゃ、で慌ててたということなの?




