第5話 世界が違ってた、ここは異世界ってやつ
「石川香さん、あなたはこの日本の、いえ世界の救世主に成りえる『異邦者』である可能性があるわ」
石島さんに言われた異邦者。日本以外の国の事を指すのではなく、別の世界から来たものを指すと告げられた。この世界にどうやって来たか、という理由も不明。当然帰還方法は解明されておらず、解明する気もないのが現状らしい。理由は単純、この世界は男性が異常に少ないから。極端にも程がある、現在「日本に登録」されている男性は各都道府県に1人から2人らしい。世界に7000人もいないというから男女比云々言っている場合ではないと。登録されず発見されることもない男性が少なからず存在しているようで、適切な遺伝子操作「など」を行わないと「必ず女性しか生まれない」という。そういう理由で世界各国で男性を保護・保管する為に、各国呼称は違うけど「男性保管省」というものが存在するらしい。遺伝子操作しなくても男性が生まれる可能性があるという、法則みたいなものがあるようで、その法則に則ると「男性」が生まれるんだそうだ。
僕が知っている世界史はかろうじて似通ってはいるものの、大筋ではやはり全然違う。地図的にはどうやら僕の知っている世界と同じ。僕が知っている大都市は同じだけど、ローカルな所は全然違う。当然倫理も違うし僕には考えられない男性への執着心があるんだそうだけど生物の本能みたいなものかな。僕の住んでいる矢作はたまたま同じ駅だったんだけど、おそらく実際の矢作と僕が知っている矢作では違うのではないかと言われた。
男性がいないのでほとんど女性だけで過ごすため肉体が僕の知っている女性と異なっていて、とても強靭な肉体をしているらしいけど、やっぱり個人差というものがあるので、肉体労働派と頭脳労働派が一定数住み分けされている。世界最高身長が今のところ212cmだそうだ。僕はそこまで高くないけど、今はどのくらいなんだろうか?確か高校3年の身体測定で186cmだった。体重は一昨日測った時見た122kg。スポーツ全般得意ではないけど、やれと言われたらやるタイプ。受動的な性格だなとは思っていたので、これをきっかけに色々してみようと思った。どうしてこの世界に来たのかはわからないし、帰ることができる保証もないんだから、とにかく今できることをやろう。
「保管省に登録された男性は『義務』として遺伝子を提供する、最低限それだけで生活が保障されるという事ですね?」
「そうね、小難しい話をしたけれど、ちゃんと自分の中で落とし込めるだけでもウチとしてはありがたいのよ」
僕以外の保管されている男性はとにかく話にならないレベルで女性に恐怖心を持ってしまっているそうだ。理由は…まあさっきの逮捕された女性みたいなのに囲まれたら、確かに面倒だな。僕は対応できるけど、僕が知ってる限りの男性だと、この世界の女性相手は厳しいだろうし。暴力の上に性的関係を強制されるなんて誰だって嫌でしょ、ただ生物的本能を否定しづらいのも正直わかる。種の繁栄が生命の基本だし、男性がいないんだから危機感はどうしても出てくる、ただ無理矢理は僕が好きじゃない。申し訳ないけどそこは妥協しないし否定する。たとえ本能とはいえだ。だからこそ僕の身体が生きるんだと思う。並大抵の事では僕の身体は折れないと思う。銃弾にはまだ立ち向かったことがないけど、対処法は知っているので実際それが生きる機会がない事を祈りたい。
最後に遺伝子情報の提供方法を教わり今日は保管省に僕の身柄は「拘束」されることになった。嫌なら出てもいい、それは拘束なのかな?と思いながら現在一人で夕食を食べている。拘束されているので監視がつくんだけど、もちろん監視の拒否も可能。見られて困る事はしていないのでお好きなように?と言ったら逆に誰も監視しないというよくわからない事になった。この世界の人は天邪鬼なのかな?呼ぶと来なくて呼ばないと来るのかな?そう考えて黙ってもぐもぐ食べてるんだけど、やっぱり誰も来なかった。
まあ翌日聞いたら監視カメラにほとんどの職員が集まってて大変だったそうで。暇だなと思ってトレーニングしてたんだけど、視聴率おかしいのかな?ってくらい見られてたと。僕以外の男性の反応を聞いたら、まあ下手に近寄ったら男性が発狂しちゃうだろうからという配慮があったんだろう。そこら辺は石島さんえらいひとになんか上手くやってもらうとして、TVもラジオもネット環境もない部屋でやる事と言ったらトレーニングしかないので黙々とこなしていき、とても寝心地の良い広いベッドで眠り、一夜明けてトレーニングを始めたら鹿島さん達が部屋に訪れた。
「おはよう石川君、朝からトレーニングなんて元気あるのね」
「おはようございます鹿島さん、今何時でしょう?」
「7時21分よ、朝ごはんは何時がいいかしら?」
そう尋ねられてまだ朝食を摂ってない事を思い出す。普段も朝食前にトレーニングをしてから朝食なので全然気にしてなかった。
「実はだいぶ腹ペコで…」
と言ったら鹿島さんが何かに向かって「早く朝食持ってきなさい!」と怒鳴りつけてすぐに朝食が届いたので結構驚いた。叫ぶと来るのかな?何に叫べばいいんだろう?
「私これ好きなんだー」
と高田唯警察正がぐでーっとしながらもぐもぐしている。昨日の身体測定で結局鹿島さんと最後まで一緒にいてくれた、鹿島さんの後輩であり僕の中での現在の味方の一人。まあ4人しかいないし面識も4人だけなんだけどね…高田さんは鹿島さんより身長が30cmくらいかな?大きいんだけど、それでも僕よりは小さい。ので鹿島さんの身長は、まあ言わないでおこう。小さくても大きくても2人とも美しいし可愛いんだ。
「もう、唯ちゃんだらだらしすぎよ」
「いいんですよー、石川君だって堅苦しいの嫌でしょー?」
「ですね、高田さんくらいのゆるさが心地いいです」
「あら、そうなんだ。じゃあわたしもぐだっとしちゃおっと」
「緊張って伝わりますし、僕相手に緊張はむしろしてほしくないなあと思うので」
「どうせなら一緒に寝よっかー?」
「え、アリなの?」
すごい勢いで鹿島さんが僕の顔に迫ってきてびっくりした。あぁ、女性だからそうだよね。昨日遺伝子情報提供方法教わったし、実践してみるかな?
「寝ます?遺伝子提供の為に」
「マジで!?」
「マジです」
「嫌ならホントに遠慮しなくていいのよ!?」
「だって、二人とも可愛いですし…僕も男なんで…」
恥ずかしいポイントソコなの!?ホントにいいの!?ともう大慌ての二人なんだけど、一応言わなきゃならない事は言っておく。これは女性を抱く上で絶対に言わなければならない事だそうなので。
「今夜は寝かせませんよ?」
「朝だよー!?きょ、今日勤務じゃなかったっけ!?有給取らなきゃ!!」
「そんなに長時間!?わたしも有給取らないと!!」
と言って「ちょっと行ってくる!!」と声を揃えて出て行ってしまった。…えっと、この場合は相手に拒絶されたとみなすんだっけ。この部屋でのルールは「理由をつけて退出した場合も拒絶とみなし行為を禁ずる」って書いてあったよね。ふむ、じゃあこの、これは、提供装置使うしかないのか…折角の童貞脱出チャンスだったんだけどな。まあ今後もこういう機会はあるだろうと思い今は提供装置がある部屋に行くとしよう。そう思って扉をあけようと思ったら鍵が…まあ扉を破壊して出たのでちょうど拘束室の近くにいた出勤したての石島局長に滅茶苦茶叱られた…すいません…




