第7話 ノワール視点:分岐しなかった旅路
旅の終わりが、近づいている。
特別な出来事は、何も起きなかった。
ただ予定通りの時間が流れ、
様々な場所を巡り、それぞれが思い思いに楽しんだ。
――ひとりを除いて。
あの女だけは、時々立ち止まっていた。
何かを探すように、
何かを確かめるように。
そして、リリアを見つめ続けていた。
そんな視線にも、
リリアは気づかない。
リリアは、最初から何も探していない。
ただ、楽しんでいただけだ。
夕方。
人の気配から少し離れた場所で、
リリアは腰を下ろした。
俺の隣に。
風が吹いて、髪が揺れる。
陽が傾き、世界が静かに色を変えていく。
それだけで、
リリアは満足そうだった。
「ね、ノワール」
ぽつりと、声が落ちる。
「楽しかったね」
それだけ。
誰と、なんて言葉は続かない。
何が一番、なんて比べもしない。
俺は鳴かない。
返事もしない。
必要ないからだ。
リリアは、俺を見て微笑った。
聖女としてでもなく、
誰かに選ばれる存在としてでもない。
ただ、
“一緒にいたい相手”を見る目で。
世界がどう動こうと、
誰が何を期待しようと。
リリアは、今日も俺の隣にいる。




