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陽だまりの庭で、聖女は黒猫と生きる  作者: Koro


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第11話 変わらない日常



朝は、いつも通りに始まる。


鐘の音で目を覚まして、身支度を整えて、学園へ向かう。

廊下ですれ違う人たちに挨拶をして、授業を受けて、ノートを取って。

放課後は教会へ行き、聖女としての務めを果たす。


忙しいけれど、嫌いじゃない日々。


覚えることは多いし、期待されることも増えた。

それでも、私はちゃんと息ができている。


「リリア、今日は集中してたね」


そう言われて、私は少しだけ笑った。


「そうかな? いつもと同じだよ」


本当に、同じだった。

昨日と、今日と、たぶん明日も。


――少しだけ違うとすれば。


あのミサンガを渡した日から

ノワールが、いつもより近くにいる気がすること。


ただ、視界の端にいるだけで安心する。

呼ばなくても、触れなくても、

「いる」と分かる感覚が、前よりもはっきりしている。


「……ノワール」


名前を呼ぶと、黒い尻尾が小さく揺れた。


それだけで、胸の奥が少しあたたかくなる。


この毎日が本当に幸せなの



学園の中庭。

木陰のベンチ。

膝の上に丸くなる、黒い猫。


誰かと比べることもなく、

何かを選ばされることもなく。


ただ、隣にいる。


「今日の授業、難しかったね」


返事はない。

でも、耳が揺れて私の話を聞いてくれていると分かる。


それで十分だった。


夕暮れが近づくと、風が少し冷たくなる。

ノワールは当然のように、私の外套の内側に入り込んできた。


「もう……」


文句を言いながらも、私は追い出さない。


この距離が、当たり前になっている。


言葉にしなくても、

理由を考えなくても、


一日の終わりに、

隣にいてほしい相手は決まっている。


それが誰かなんて、

考えるまでもなかった。


夜、部屋に戻って、窓を開ける。

星が、ひとつ、またひとつと瞬き始める。


「……明日も、頑張ろうね」


そう言うと、ノワールは小さく喉を鳴らした。


それは、約束でも、誓いでもない。

ただの、日常の一部。


世界は、何も変わっていない。


私は、何も知らない。


けれど――

選んでいる。


今日も、無意識のまま。


何度でも、同じ場所へ戻るように。


隣にいる、この存在を。



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