Appendix ――年表/用語集/協定PDF改訂履歴――
Ⅰ. 年表
以後、「年」の字が欠落した日付は 来( ) 表記で示す。
すべてのシステム警告は YEAR_TOKEN_NOT_FOUND に統一されている。
西暦20( )/06/15
市内で初の逆雨観測。浸水高15cm。教育委員会は「一過性」とコメント。
06/16
教育委員会内部草稿、「“事故”という語は不適切につき“運用”に統一」と回覧(未公開)。
07/01 深夜
希来(当時担当教員)、前任生徒の弁操作を止める。翌朝以降、校内掲示物などの「令和○年」から“年”が剥落し始める。
07/02〜
SNS・掲示板で YEAR_TOKEN_NOT_FOUND のスクショが拡散。「#年一運用」トレンド入り。
来( )/06/末(第1話)
猩目双葉が濾過槽へ初潜行。希来の翡翠リングを水鏡界へ供出。“鍵=Sevynのリング”を保持。
来( )/07/初(第2話)
臨時の蛇口開放。浸水は膝下へ(前回15cmより増大)。区画 3‑12 が水色ノイズ化(暫定)。報告書で“事故→運用”へ語替え確定。三行合意(年一誕生日/年一共同署名/年一泡告白)をノート化。
※ 希来「来( )に条文化し、第4条 Emergency Clause を付す」と明言。
来( )/08/初(第3話)
三者呼吸協定v1.0 成立。第一回“年一運用”儀礼/First annual “I love you” を実施。
区画 5‑27 が恒久ノイズ化(先週の 3‑12 に続く2例目)。
来( )/08/下旬(第4話)
希来、「止めた夜/止められなかった年」についての未送信告白文を残す。
「義務なら死ぬ、権利なら生き延びられる可能性がある」という運用哲学が事実上採択。
Ⅱ. 用語集(簡約)
逆雨
地面/配水系から吹き上がる“上向きの雨”。蛇口の開閉(運用)と連動。
運用
“事故”という免責語を捨て、能動的に責任配分を引き受けるための行政語。
YEAR_TOKEN_NOT_FOUND
行政/教育/市民端末の**“年”描画・保存に失敗**した際の統一エラー。
来( )
“来年”から“年”が抜け落ちたため導入された括弧付き未来表記。空欄は、恐怖と信頼の配合率を示す。
三者呼吸協定
1) 誕生日=年一回/
2) 蛇口=年一回・双葉+希来共同署名/
3) Sevynの“泡告白”年一回受領(返答自由)/
4) Emergency Clause:必要時のみ臨時開放。
Emergency Clause
希来が「止めた夜」の反省として第4条化。常時接続を切った世界での、唯一の“逃げ道”。
骨の“キィ”音
都市の骨格(配管・構造)と人間の骨が共鳴するメタファ。
第1話=錯覚/第2話=老い/第3話=鳴り終わり/第4話=希来は「自分は鳴り終わり、都市は鳴り続ける」と述懐。
配分
双葉が持ち込んだ第三の演算子。止める/開くの二分法を超え、“支払う量を分ける”ことで両界を延命する倫理技法。
Ⅲ. 協定PDF 改訂履歴(v0.7 → v1.0)
v0.7(リーク版/第0話で流出)
第1〜3条のみ実線。第4条(Emergency Clause)は灰色でコメントアウト。
署名欄は「——/——/——」。第三署名欄の“空欄”に注記なし。
フッター:Viewer Warning: YEAR_TOKEN_NOT_FOUND
- 第4条(Emergency Clause:必要時のみ臨時開放) ← gray, commented
- 本条は来( )以降も有効とする ← gray
v0.9(内部草稿/非公開)
希来の赤字コメントが残存:
> 「常時接続を切ったなら、非常時のスイッチを残せ」
“来( )”表記が本文にも流入。“年”はすべてグレーアウト。
差分マーカー〈ins〉〈del〉で第4条が“準備中”であることを示す。
v1.0(正式版/第3話)
第4条(Emergency Clause)正式採用。
署名:猩目双葉/溺渦希来/——(Sevynは地上署名不可のため空欄を明示)
付録に「年一運用モードの定義」「地図ノイズ恒久化時の手順(3‑12/5‑27 事例)」が追記。
表紙右上:Viewer Warning: YEAR_TOKEN_NOT_FOUND
+ 第4条(Emergency Clause:必要時のみ臨時開放)
+ 本条は来( )以降も有効とする。
+ (署名)猩目 双葉/溺渦 希来/——
+ ※第三署名欄は水鏡界居住者のため空欄とする
+ 付録:区画 3‑12(暫定)→ 5‑27(恒久)ノイズ化の記録
Ⅳ. 参考ログ(抄)
<PTA抗議文(返送扱い)>
日付:令和( )年( )月( )日
本文:“年一運用”という表現の乱用に—
(返送理由:年欄へ文字を入力できません/YEAR_TOKEN_NOT_FOUND)
<匿名音声投稿(自動文字起こし)>
……払ったぶんだけ、次を吸える。
誰が払った? 骨が鳴った人から順に。
Ⅴ. 編集者メモ(未署名)
「事故」を「運用」に置換した瞬間、世界は“誰が払うか”を明確に問わなくなり、かわりに“どれだけ配分するか”を計算し始めた。
しかし、個人の名前(“猩目”の“目”)や、区画番号(3‑12 → 5‑27)のノイズは、支払われた“年”の痕跡として刻まれ続ける。
空欄は制度化された。
恐怖と信頼の配合率を示すために。
そして、次の来( )にも YEAR_TOKEN_NOT_FOUND は点滅し続けるだろう。
その光が消えた時こそ、本当に“年”を取り戻すのか、あるいは完全に手放すのか――選ぶのは、もう読者ではなく、鳴る(あるいは鳴り終わった)骨たちだ。
(Appendix・了)
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。ブクマ・評価・感想が本作の呼吸です。ぽちっと応援いただけると次話の酸素になります。
お知らせ
本作(なろう版)は、並行世界に再配置した“ホラー版”です。
出来事や世界のルールを水×誕生日×指輪に寄せて再構成しています。
こちら(なろう版)の軸
猩目 双葉視点/“逆雨”・“年の欠落”・年一運用/三者呼吸協定/空欄=「恐怖と信頼の配合率」、骨が鳴る音……など、ホラー濃度高めの設計。
原作(Tales 掲載)
タイトルは
『バースデイ? リング? 空洞? ──放課後アスファルトの“甘噛み青春”は更新待ちですか?──』。
https://tales.note.com/noveng_musiq/w1o9jouqgbi4y
茅吞 一葉が“年に五度の誕生日”と通知・指輪で空洞を埋めようとする青春サイド。DMの警句(Ring is Cage など)や①/②/③の関係性が中心になります。
お願い
感想欄で「原作のこの場面が、ホラー版だとこう響いた」みたいな対比コメントをもらえると、とても助かります。
誤字脱字や用語ブレ(例:エラー表示など)を見つけたらこっそり教えてください。即整合します。
更新予定は活動報告にて。体調・仕事の都合で前後する場合があります。
読んでくれたあなたに、深く感謝を。
“来( )”も、また会いましょう。