スキルとは
読んでくださってありがとうございます。
まだまだ試行錯誤しながら書いていますので、感想やアドバイスなど、気軽にいただけるととても助かります。
「はじめまして〜!」
入口の方から元気な声が響いた。
リウスが振り返ると、明るく走ってくる少女の姿。おそらく、エリナさんの妹だろう。
「あれがエリナさんの妹さん?」
確認すると、エリナは笑顔で頷いた。
するとその少女は、凄い勢いでリウスに迫ってきた。
「私、セナっていうの! よろしくね!」
「俺はリウス。よろしく」
「私は回復専門の魔法使い、レベルは18よ。回復魔力が昔から伸びやすくて、380あるの。それに、スキルは《祈りの誓い》。神殿で“誰かを支えるために回復能力の加護をください”ってお祈りと誓約をしたの」
「……細かくステータスとスキルまで教えてくれてありがとう」
「リウス君は強いらしいから、アピールも兼ねてるのよ♪」
セナは笑顔でそう言った。
「あ、呼び方はリウスでいいよ」
エリナも、なぜかずっと笑顔だった。
「けどさ、誓約って何?」
リウスが尋ねると、エリナが一歩前に出て説明を始めた。
「この世界には、先天的に身につけるスキルと、後天的に身につくスキル、それに神殿での祈りによって得られるスキルがあるの。シノン君とカグヤちゃん、それにリウス君のは、生まれた瞬間に身についた先天的なものよ。特にシノン君とカグヤちゃんは竜や妖精に選ばれたという証でもあるわね」
リウスは頷きながら話を聞き続ける。
「でも、それだと他の人たちはスキルを得られないって思うでしょ? 冒険者になれば、極まれに後天的なスキルが目覚めることもあるの……。だけど神殿だと、祈りと誓いを捧げることでスキルを授かることができるの。たとえば回復系の誓約をすると、回復力の成長率が2倍以上になる代わりに、他の能力の伸びが極端に抑えられるのよ」
「じゃあ、セナはヒーラーとして生きていく覚悟を決めてるんだね」
「ええ、そうよ」
セナは静かに微笑んだあと、ふと真顔になった。
「私はね、昔、両親を病気で亡くしたの。そのときは私たちも子供で、お金も稼げないし、能力も低かったから助けられなかった」
リウスは黙ってセナの言葉を聞いた。
「でもね、そんなとき、回復系の魔法を極めた賢者様ならどんな病気でも治せるって聞いたの。それを聞いて、私、決めたの。たくさんの人を助けるって。……そのために、この力を手に入れたの」
「……なんて、良い子なんだ」
そう思うと同時に、「こんな子を危険な冒険に連れていっていいのだろうか」と、我ながら偉そうなことを思ってしまった。
「エリナさん、いい妹さんですね」
そう言うと、エリナは嬉しそうな顔をしてセナの頭をなで始めた。
「そうなのよ〜本当にいい子で可愛いの! よしよしセナちゃーん♪」
「も、もうお姉ちゃん、やめてよ!」
「まぁ、こういうことだから、リウス君。セナちゃんのこと、ちゃんと守ってあげてね?」
「……任せてください」
そうして、クエストの一覧がエリナによって差し出された。中にはCランクのクエストも含まれていた。
「え、Cランク!?」
セナとリウスは思わず声を重ねた。
Cランクは、一般的にレベル50〜70相当の冒険者向けの難易度だ。
「私たち、まだレベル14と18よ!? エリナさん、無茶よ!」
セナが驚きを隠せずに問うと、エリナは涼しい顔で言った。
「そうよ? でも、セナは回復能力だけで見ればDランク相当だし、リウス君は平均能力がCランク相当。攻撃に関してはAランククラスなのよ?」
「……えっ?」
セナが放心状態になった。そしてようやく頭の整理がついたのか、リウスに問いかけた。
「リウス、本当にそんな能力なの……?」
スキルのことは他言するなと言われていたが、エリナの妹ということもあり、リウスは正直に答えることにした。
「そうだよ。だから絶対に守ってみせるよ」
その言葉を聞いたセナは、顔を真っ赤に染めた。
「とりあえず、Cランクの中でも対複数は不安があるから……カンフーベアーの討伐を選ぼうか」
そう言うと、リウスはクエストを選び、セナもそれに頷いた。
「うん、お願い」
クエストを受注すると、すぐにエリナがその地域の地図を渡してくれた。
「リウス君の好きなレベル上げをするなら、この辺がベストスポットよ。休憩するならこことここと、あとここも悪くないわね」
地図を指しながら、エリナは頼もしく説明してくれた。
「確かに、いきなりカンフーベアーと戦うのは少し不安だし、レベル上げしながら向かおうか」
「うん、任せるわ」
「じゃあ、行こうか」
「うん!」
こうして、僕らはカンフーベアーの住処近くにあるレベル上げスポットへと向かった。
森へと入っていくと、足元から独特な匂いが立ち込めてくる。
「……この森、なんかところどころ土臭いね」
「これ、多分お姉ちゃんが言ってたレベル上げスポットのモンスターのせいだと思う」
「どういうこと?」
「ちょうどD〜Cランク帯にね、緑を食べ散らかすモンスターがいるの。そのモンスターが食べた後は、地面が腐るって言われてるの」
「地面が腐るって……なんかすごいね」
「感心してる場合じゃないわよ!」
「ご、ごめん……」
少し進むと、そのモンスターらしきものが現れた。
見た目は泥の塊のようで、地面を滑るように移動してくる。
「じゃあ、俺から離れないでね」
「うん!」
初心者用の剣を握り、リウスはその泥モンスターに斬りかかった。
ズバッ!
確実に捉えた感触があった。……だが、モンスターはその場で形を戻し、すぐに再生してしまった。
「セナ、下がって!」
「う、うん!」
「今、確実に捉えたと思ったのに……。なんでだろう?」
「それってさ、多分……そのモンスター、物理無効タイプだからじゃない?」
「物理無効?」
「モンスターによっては、物理攻撃が効かない個体がいるの。EXランクを超えると、ある程度の物理・魔法無効は無効化できるんだけど……」
「……セナ、詳しいね」
「お姉ちゃんにいろいろ教えられてるからね」
セナがそう言って微笑んだ。
「じゃあ、魔法を使えばいいのか」
「そういうことだね」
「――自然の呼吸!」
リウスはカグヤから教わった風の魔法を思い出しながら詠唱した。
風系魔法は、どんなモンスターにも致命傷は与えにくいが、逆に効かないことも少ない万能系。カグヤがそう言っていた。
ウインドブレスが炸裂し、爆発的な風の力が森に響き渡る。
100体はいたであろうモンスターが、一瞬で吹き飛び、切り裂かれて消え去った。
「えっ?」
セナが、目を丸くして呆然としていた。
「な、なに今の……? 威力、おかしくない……?」
と同時に、二人の体が光に包まれ、膨大な経験値が流れ込んできた。
「なっ……!」
セナは一気にレベル28に、リウスはレベル30にまで上がった。
「なんだ、この異常な上がり方は……。1体あたり、今までのスライム100体分の経験値があるみたいだ……」
能力ポイントの割り振りで、リウスはバランス重視の配分を選び、特に防御や運を強化した。
そのとき――脳内に声が響いた。
《ステータスの詳細を確認できるようになりました。新たにスキルを獲得しました》
次の瞬間、視界に浮かび上がるステータス画面には、系統ごとだった能力表示に加え、個別の数値が現れた。
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【現在の能力値】
•力:1600
•速度:1600
•技:1600
•魔力:1600
•知性:1600
•属性地:1600
•物理防御:1800
•魔法防御:1800
•精神防御:600
•幸運値:1000
•スキル取得率:1000
•ドロップ率:1000
•治癒力:600
•回復力:600
•状態異常耐性:600
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「……これ、たぶんSランククラスだよね」
「え? 今、なんて……?」
セナが口を開けたまま、こちらを見つめている。
「いや、それが……平均能力値が1200くらいになっちゃって」
「あぁ……もうわけがわかんない……」
セナは頭を抱えた。
さらにリウスの視界にはスキル詳細も表示された。
⸻
【スキル】
•《ダブルハーフ》スキル発動中
•《使役人》取得
•《怒王》スキル未発動
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《ダブルハーフ》
取得経験値・取得ステータスが2倍。選択したステータスを2倍にできる。
ただし、2倍にした分だけ、別のステータスが1/2になる。
《使役人》
契約を交わした者を使役できる。使役された者は主人に逆らえない。
《怒王》
怒りが頂点に達した際に発動。すべての能力が2倍に上昇。ただし自我を失う。
⸻
「ダブルハーフの“ステータスを2倍にする”って、どういうことだ……?」
そう思い、試しにスキルをOFFにしてみる。
すると、すべてのステータスが半減した。
そこで理解した。取得した経験値やステータスはスキルをOFFにしても残るが、発動中に2倍にされていた能力だけが元に戻るらしい。
「……つまり、今の平均値1200はスキルによる強化後。OFFにすると600ってことは、ようやく俺自身の実力がCランクに届いたってことか」
仮初の力ではなく、自分の土台がようやく追いついてきたのだと実感した。
「……でも、やっぱりOFFは危険だな」
そう言ってスキルを再びONにすると、そこで気づいた。
発動中は1分ごとに魔力が1ずつ削られている。
「今は回復してたから気づかなかったけど、連戦が続いたら危ないな……。今のままなら27時間ちょっとで魔力が尽きる。これからは魔力優先で育てよう」
「ねえリウス? さっきからなにずっと考えてるの?」
セナが不思議そうにのぞきこんできた。
「あっ、ごめん。レベル上げも済んだし、もう行こっか」
「うん! たぶんこのモンスターの群れ、激レアだったんだと思う。もういないだろうしね」
「確かに、エリナさんはなんでこのモンスターが大量発生するってわかったんだろう」
「そういえば最近お姉ちゃんがここの森にだけできる珍しい植物について調べてたの」
「それを求めてこのモンスターは現れたってことか」
「多分ね。しかもその植物は10年に一度しかできないって言ってた」
「タイミングも奇跡的だしエリナさんが俺たちにその貴重なチャンスをくれたのに感謝しないと」
「お姉ちゃんリウスのこと気に入ってるからね」
とセナが小さく呟いた
よく聞こえなかったのでとりあえずカンフーベアーを倒しにいくことにした。
「じゃあ――カンフーベアー、倒しに行こう!」
「うん!」
そうして僕らは、目的地へと向かって歩き出した。