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守護者の宿命

ギルドに戻ると、受付嬢のエリナが目を丸くして俺たちを出迎えた。


「三人とも、どうしたの?」


「いやあ、一週間も戦いっぱなしで、泥だらけになっちゃいました」


「そういうことじゃなくて、三人の能力よ! なんで、たった一週間でそんなにレベルが上がってるの?」


「え、ずっとスライム狩ってたから…」


「冷静に考えて。スライムの経験値は1。大きくても10が限界よ。なのに、あの能力値は1万以上の経験値が必要なの。どういうこと?」


するとシノンが言った。


「ああ、それなら。俺たちが狩ってたのは、でっかい個体ばかりだったし、ほとんどリウスが一撃で倒してくれてたんですよ」


その言葉にエリナは、カグヤの方へ視線を送った。カグヤは、無言で力強く頷いた。


「……はあ、わかったわ。ちょっと、ギルド長のところに来て」


俺たちは、ギルドの奥にあるギルド長室へと連れて行かれた。


その途中、エリナがふと漏らした。


「そういえば、リウス君。喋り方が変わってきたわね。なんだか自信がついてきたみたい」


言われてみれば、自分のことを「俺」と呼び、口調も変わっていた。強くなったという実感が、無意識に現れていたのかもしれない。



ギルド長は、俺たちの姿を見てまず驚き、次いで能力値の異常な成長に目を見開いた。


「リウス、お前のレベルはいくつだ?」


「14です」


「能力鑑定をする。構わんか?」


「はい」


ギルド長は頷き、エリナに命じた。


「エリナ、あれを持ってこい」


エリナはすぐに戻ってきた。両手に抱えていたのは、大きな水晶だった。


「これは“識晶”と呼ばれる特別な水晶だ。使用者の能力値やスキルを詳細に映し出す。ただし、一人に一度しか使えない。使えばもう、その人専用になる。市場にもほとんど出回らず、Bランク冒険者の一年分の報酬に相当する希少品だ。ただ、能力平均値が1000を超えると能力の詳細やスキルについても自分で細かく見えるようになるからこれが必要なのは中級者が多いな」


「そ、そんなものを俺が使っていいんですか?」


ギルド長は急に笑みを浮かべた。


「こーんな天才がうちのギルドから出たとなりゃあ、西のあのアホギルド長に自慢できるんだ! 使ってくれ!」




俺は水晶に手をかざし、力を込めるイメージをする。すると水晶は白く濁り、赤、黄、紫と様々な光が流れ、やがて透明に戻った。


そこには、信じられない数値が浮かび上がっていた。



リウスの能力は

•平均能力値:560

•攻撃系(力・速度・技):1020

•魔法系(魔力・知性・属性値):1020

•防御系(物理・魔法・精神):560

•運(幸運、スキル取得・ドロップ率等):280

•回復系(治癒力・回復力・状態異常耐性):280


細かい能力を観れると言うことだったが、ステータス画面で見れるものと大きな違いはなかった。

ただスキルに関しては細かな説明もついていた。


「……な、なんだこの数値は……!」


ギルド長は、しばらく言葉を失った。


その後、カグヤとシノンも能力鑑定を受けた。ギルドにあった3つの識晶すべてが、俺たち三人に使われた。




二人の数値もまた、異常だった。共にレベル10ほどで、平均能力は200オーバー。


特に特化型の成長が顕著だった。



シノン

•速度・技術:500超

•スキル:水竜の守護


カグヤ

•攻撃魔力・回復力:500超

•スキル:緑妖精の守護



エリナが腰を抜かすように叫ぶ。


「まさか……守護者がここに二人も……!?」


俺とカグヤは顔を見合わせ、ギルド長へと問いかける。


「守護者って……?」



ギルド長は静かに語り始めた。


「水晶の中にある説明に付け足すならこの世界には“始祖の竜”と“始祖の妖精”が存在した。彼らは10万年という歳月をかけ、世界に生命と自然を与えた。そして、その管理を委ねるために各属性に“守護竜”と“守護妖精”を創った」


竜と妖精は力を合わせ、“光の竜王テラヌス”と“闇の妖精王ヒヨミ”という二柱の王を生み出し、時間——朝昼夜——を司らせた。


その王たちとは異なり、他の守護竜や妖精は、個々の価値観で世界に影響を及ぼしていた。しかし人間の争いを目にし、彼らは理念の違いから対立し、ついには各々“守護者”を見つけ、力を託すようになった。


「君たちもその守護者というわけだ」


エリナが静かに続ける。


「リウス君の街を焼いたのは“火龍”とその守護者。彼は……レベル180を超えているという噂があるわ。EXランク3人がかりでようやく互角。むしろ守護者優勢なこともあるらしいわ」


話を聞いているうちに何故か胸の内側から

怒りが込み上げてきた。


「……どれくらい強くなれば、そいつを殺せますか」


ギルド長は目を見開いた。


「は?」


「俺は、そいつを殺すために強くなりたいんです」


その時、識晶にうっすらと表示されていたスキル名――


怒王


それを見た瞬間、ギルド長は「まずい」と直感し、即座にリウスに攻撃を放った。続けてエリナが睡眠魔法をかける。


「リウス!」


「安心して。眠ってるだけよ」

『2人には話があるからここに残ってくれ。エリナはリウスをベッドへ連れていってくれ』


目を覚ますと、俺の隣にギルド長、エリナ、シノン、カグヤがいた。


「昨日はすまなかったな……」


「いいえ。俺の方こそ、感情的になってすみません」


「お互い様さ。それよりも、君たちの力の話は他言無用だ。命を狙われるぞ」


「分かりました」



その夜、三人で食事をしながら、シノンが口を開いた。


「俺たちで他の守護者を全員倒して、竜も妖精もぶっ倒そうぜ」


「私も、それがいいと思う」


二人はそれぞれの思いを語り、決意を見せた。


「だから、俺たち――三年間、別々に旅をしよう」


「え?」

急な提案に思わず声が出た。


「リウスに甘えてばっかりだった。だから、自分たちの力で成長する。三年後、対等な仲間としてまた会おう」


カグヤも、涙を浮かべながら想いを語った。

『リウスへの憧れと自分自身のやるべきことどちらも強くならなきゃどうにもならないことだから。』


その夜リウスは自分が寝ている間に2人にあったことを考えた。守護者として色々と考えた結果なのだろうと自分の寂しさを振り払う為なんとか自分を納得させた。


翌朝。


 2人は日が出る前にそれぞれ出ていったとエリナさんから聞いた


「……で、リウス君はどうする?」


エリナの問いに、俺は答えた。


「俺はこの街に残ります。Sランククエストを一人でこなせるようになるまで、力を蓄える」


「……そっか。じゃあパーティはどうする? 回復役がいないと一人じゃ不安でしょ?」


「そうですね……できればヒーラーの人と組みたいです」


「じゃあ、私の妹なんてどうかしら?」


「え?」


思いもよらぬ、新たな出会いが、ここから始まろうとしていた。

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