能力の正体
狩りを続けていくうちに、ひとつ奇妙なことが起きた。
2人――シノンとカグヤ――がレベル3になった頃、俺だけが先にレベル4に達していたのだ。
ステータスパネルを見ても、明らかにおかしい上がり方をしている。
俺はさりげなく問いかけた。
「ねえ、スライム1体倒すと、経験値ってどのくらいもらえてる?」
シノンは何言ってんだ?という顔をしながらも答えてくれた。
「個体にもよるけど……でかいスライムなら、4もらえてるな」
やっぱりだ。
僕の場合、同じスライムを倒すと8の経験値が入っていた。
「2から3に上がるのって、必要経験値いくつだったっけ?」
今度はカグヤが答える。
「たしか16だったわね」
これで確信が持てた。
――僕は、経験値8でレベル3になっていた。
僕のスキル、やっぱり“自分のステータスや経験値を2倍、もしくは半分にする”ものなんだ。
だけど、なんで選択していないのに勝手に能力が変動してるんだろう?
スキル欄で選んでるわけじゃないのに、上がり方がまちまちだ。
「ちょっとリウス、さっきから何考えてんのよ?」
「え、ああ、ごめん」
「もう疲れちまったのかよ」
「そんなことない。まだまだ行こう」
「よし! じゃあ、このまま10レベルまで突っ走るぞ!」
そうして俺たちは、1週間ぶっ続けでモンスターを狩り続けた。
そして全員、10レベルを突破した。
……ただし、俺だけはレベル14になっていた。
しかも、ステータスも他の2人の何倍も高くなっていた。
その異変に、ようやく2人も気づいたらしい。
「ねえリウス、あなただけ……強くなりすぎじゃない?」
「だよな。いくら成長差があるって言っても、リウスの伸び方はおかしいぞ」
「え、そうかな? えへへ」
「えへへじゃねーよ。どういうことか説明してもらおうか?」
2人はにやつきながらも、目だけは真剣だった。
逃げ道はなさそうだ。
俺はすぐに諦めた。
というより――この2人になら話してもいい。そう思えた。
「正直に言うよ」
俺はゆっくりと、3年前の“大災害”のことを話し始めた。
「あの時……俺、あるスキルを手に入れたんだ。“ダブルハーフ”っていうスキル」
「どんなスキルだ?」
「レベルアップするとき、上がるステータスの中で一つを“半分”にする代わりに、もう一つを“2倍”にできる。選べるんだ。何を半分にして、何を2倍にするか」
「それ、超やばくねえか?」
「そうね。なりたい自分に合わせて、意図的に伸ばせるってことでしょ? 普通はランダムなのに」
2人は真剣に聞いてくれていた。
「それだけじゃないんだ。俺、もともとのステータス上昇値も他の人の“2倍”あるらしい」
「え、それって反則じゃん」
「つまり……ハーフにした能力でも、普通の人と同じくらい。ダブルにした能力は、みんなの4倍上がってるってことか?」
「そういうことになるね」
俺がそう言うと、2人はしばらくぽかんとしたあと、ふっと笑った。
「なーんだ、そうだったのか」
「てっきり、俺らが才能ないのかと思ってたよ」
『途中からリウスだけが活躍してたからね』
2人は屈託のない笑顔を見せてくれた。
そしてスキルについては、それ以上なにも聞かず――俺たちはそのまま、冒険者ギルドへと戻った。