出会い
この小さな街は、三年前の火龍による大災害で、今も癒えない深い傷を抱えていた。
あの災害で、僕は多くの大切なものを失った。そして、絶望した。
それでも、生きていた。ある日、僕に目覚めた“特殊な能力”。それだけが、唯一の希望の光だった。寝床すらない日々のなかで、僕はその力を信じ、必死に生き抜いてきた。
そんな僕が今日、冒険者になるという賭けに出る。
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冒険者ギルド
冒険者ギルド――。それは、戦う力さえあれば、誰にでも仕事を与えてくれる場所。
僕がこの三年間、朝から晩まで働いて得たお金を、たった一つのクエストで稼げることもあるという。
今のままじゃ身体がもたない。ここで未来をつかむしかないんだ!
「た、頼もう!」
(……なんだあいつ?)
(ここ、ギルドだぞ……)
(頭おかしいんじゃねーか)
(……あれ、間違えたかな)
「あ、あの、ぼ、冒険者として、登、登、登録したいんですっ。お、お願いします!」
「承知いたしました。では、この紙に手を当ててください」
「は、はい……」
手を当てると、紙に微かな光が走った。
「ギリギリ合格ラインですね。それでは、奥の部屋へどうぞ。詳細な能力を測ります」
「わ、わかりました……」
(ドアの開く音)
「ギルド長、才能ある若い子が来ましたよ」
「おお!こんなに若いのは何年ぶりだろう!君、名前は?」
「リウス・ラームです!」
「わあ、素敵な名前ですね」
「ありがとうございます!」
「じゃあ早速、能力を測るからこの宝石に力を込めてみてくれ」
「わかりました、はっ!」
透明だった宝石が、白く輝く。
「この年にしては身体能力が高いな。何か仕事してたのか?」
「毎日、荷物運びをしてました。日が沈むまでずっと」
「なるほどな……でも、この能力だと“Gランク”。力はまだまだだ。まずはパーティを組んで、レベルを上げていくといい」
「レベル上げ、ですか?」
「ああ、例えばスライムを倒せば1経験値。知性のあるゴブリンなら1000ぐらいはもらえる。レベルの上限はないし、高レベルになればなるほど一つ上がるごとの成長も桁違いだ。今この国で最高はレベル130。大陸全土を見れば、まだ上がいるだろう」
「100を超えるとSランク、200を超えるとEXランクとなる」
「す、すごい……」
「ちなみにEXのさらに上もあるぞ」
「えっ!? あるんですか?」
「ああ。ただし、それは選ばれたものだけが入れると言われる“オーディラス神殿”そこで待つ試練を超えた者だけがなれと言われていてその者に見合うランクが刻まれた特別なリングがもらえるって話だ』
「す、すごい……!」
「まあ、あくまで伝説の話さ。信じるかどうかは君次第だ」
「でも、会ってみたいなあ……そんな人たちに」
「はは、それもいい夢だ。さて、さっきの話に戻るが……パーティを探してる奴らがいる。紹介してやろう。リサ、頼んだぞ」
「承知しました! じゃあ、行こっか、リウスくん」
「はい! ギルド長、ありがとうございました!」
(扉が閉まる音)
(……この特殊能力、化けるかもしれんな)
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「ギルド長があんなに興奮するなんて……リウスくん、いいもの持ってるのかもね」
「優しい方でしたね」
「普段はもっと静かで怖いのよ?」
「え、そうなんですか……そんなふうには全然」
「ふふっ。……あ、カグヤちゃーん、シノンくーん!」
(カグヤとシノンが振り向く)
「この子、今日からカグヤちゃん達のパーティに入れてレベル上げをしてもらえないかな?」
「え、ああ、別にいいですけど」
「どうせ俺らもGランクだし、仲間が増えるなら助かるぜ」
「じゃあそういうことだから、頑張ってねリウスくん」
「は、はい! よろしくお願いします!!」
(ばっ!)
「ははっ、面白いね。私はカグヤ。こっちはシノン。昨日知り合ったばかりだけどね」
「僕はリウス。よろしく! でも、二人が昨日会ったばかりだなんて思わなかったよ」
「一緒に試験受けて、そのままパーティ組まされたからな」
「言い方が嫌なやつ〜!」
「あっ、すまん……」
「ははっ、二人、いいコンビだね」
「今日からは“トリオ”だ。頑張ろうな」
「うん!」
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こうして僕の冒険者としての1日目は、幕を開けた。