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09(月彦の視点) 中庭にて。真剣な写真だからこそ。1

「ふたり分なんて屁でもないから気にしないでね」

 と、呼夢(こゆめ)のお母様――おばさんが言ってお弁当を持たせてくれている。「いや屁って」「ふふ」と、受け取る時に笑い合った。

 正直感謝しまくっている。

 学校がある日の昼は教室で食べている。友人はほかの友人と食べていることが多い。ほとんど自分はひとり飯だ。

 それも終えると、カメラと体操服と弁当箱を入れたサブバッグを持ち、教室を出た。革靴に変えて中庭をうろうろと通っていった先に、猫がくつろいでいる花壇をたまたま発見した。首輪はない。撮って誰かの怒りを買ったりはしないだろうと思い、撮影タイムに入った。

「いいね~、いいよぉ~」小声だ。「あ、今いい、最高……」

 そんな時、後ろからジャリッという音が。

 僕は勢いよく振り返った。

 そこには呼夢(こゆめ)がいた。

「猫は撮るんだ?」

「うん。こういうのはね。人は撮らないよ」

「ふうん。で、いいのが撮れたの?」

「そりゃあね」

「ねえ、見せて」

 顔を覗き込まれる。

「…………」

 無言のあいだ僕はカメラの背の画面を見せなかった。

「嫌?」

「いや、なんというか……うーん……いや、やっぱり嫌だな、見せるのは嫌だ」

「え~、なんで?」

「見せるためじゃないから、見せたくない。あと、こういう話がほかの人に広がると思うと、今は、ちょっと面倒に感じてヤなんだよね」

「なんで? 話し合ったら楽しいかもよ? いいじゃん」

「恥ずかしいんだよ」

「え、何も恥じるような写真じゃないじゃん」

「それでもというか、だからだよ」

「ふうん……? 変なの」

「いや、そんな変じゃないから、多分……」

「そ~お?」

 ――え、僕だけなのかな。

 でもそんな希少なはずない。そのはず。

 例を挙げようと思った。できるかは分からないけど、頑張る。

「じゃあ、たとえばだけど、呼夢(こゆめ)が……結構その……本気で真剣にやってることってある?」

「あるよ」

「それの出来をさ、あまり関係ない人に、まだまだな自分の出来を……だよ、見せれる?」

 呼夢(こゆめ)は真剣に考えてみたらしい。そんな顔だ。それが、なぜか少し嬉しかった。

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