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05(月彦の視点) 髪と黒板2

「誰がこんなこと書いたんだって言ってんだよ! 誰も見てないのか!」

 僕の代わりかのように、誰かが言った。

 そこで僕も思い立って、前に進み出た。

「そもそも、この教室の誰かなのかな。別のクラスの人なのかも」

「別のクラスがなんで――」

 サダッチがそう言った。ただ、そんな時、女子のひとりが――

「戻って来た時にはあったよ」

 ――やっぱりか。

 そこで思い付いた。

洲中(すなか)呼夢(こゆめ)って何組なんだ?」

「なんで?」

「はとこなんだよ。その人の家でお世話になってる」

「じゃあそのクラス――」

「だから何組なの」

「三組だよ」

 女子がそう答えてすぐ、そのクラスへと僕は向かった。

 サダッチとパッセとほか数人はついて来た。

 三組の戸を開け入ってすぐ、問い質した。

「誰かうちのクラスの黒板に想像上の悪口を書いただろ、書いたヤツ、出て来い」

 すぐには誰も出てこなかった。

 ――まあ簡単にはいかないか、しらばっくれるなんて何考えてんだか。

「やったヤツが分かる方法なんて幾らでもあるだろ。今のうちに出て来いって」

 それでも出て来ない。

真見(まみ)先生とやらを連れて来るわ」


 僕が連れて来た。直々にだ。その真見先生が何やら言いたそうにした。

「私だって――」

「今すぐ必要なんですよ」

 僕は急かしてしまった。でも僕の一大事なんだよ。僕の一大事。

「疲れた時点で終わりだからね、今日は」

 真見(まみ)先生がそう言って差し出した紐を、三組の生徒達が持つ。違えばまた別の生徒が。

 その紐が嘘の真っ黒さに染まったのは、とある女子が持った時だった。

 その女子が口を開いた。

「だってあなたが頭の中でサブバッグの中に入れたカメラをずっと気にしてるから――」

「そうなのか?」

 と、サダッチが聞いてきた。

「そうだけど、僕は風景を撮りたいだけだ。頭の中を読んだとしても一部だけだろ。『そこだけ』心を読んで、あとは想像だろ? そんな思い込みで人を振り回してんじゃねえよ。なんなら確認しに来い。なんでグレーで黒って言われなきゃいけないんだ」

「……そういうことらしいけど」

 と、パッセがその場に声を掛けた。

「でも守ろうとして――」

 そう言ったその女子に、僕の写真のデータを見せた。見せたくなんかなかったけどな。

 カメラの背の画面――を見たあと、僕の目をじっと見てから、その女子が、動揺を顔いっぱいに見せ、頭を下げた。

「ごめんなさい!」

「よかったね、容疑が晴れて」とサダッチが言った。

「そうだね」

 僕は、心を読んだ女子を少し睨み、それから教室に戻ろうとした。

 まず真見(まみ)先生に向き合った。

「すみません、手間を掛けさせて。ありがとうございました。では」

 一礼はしたけど、僕は返事なんて聞こうともせずに一組へと歩き出した。

 ――そうじゃなければとは思ったのに。三組じゃない可能性はあった。でも誰だったとしても、された事実は変わらなかったけど……。

 僕はやっぱり、人を撮る気にはなれない。なんで僕に確認に来なかったんだ!

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