31(呼夢の視点) 実力テストと文化祭準備
月彦くんのことを月ちゃんと呼ぶようになった。
切っ掛けがある。
だって、月ちゃんの友達のサダッチなんかはそう呼んでるんだもの。何度か遊んでから気付いたけど。その方が可愛い。私がそう呼んでいないなんて、不覚。
――それに、そう思ってから海なんかで見ていて、その方が似合うなって思ったし。それにしても月ちゃん、あんなことやるんだもんなぁ、あの時のあれは反則だよぉ。
思い出しては自分の側頭部を撫でてしまう。
麦わら帽子を被らされた時のこと。私は一生忘れない。胸と心臓に焼き付いた。――あ、これ同じような意味だ。
夏休み中、そんな日々が続いた。
山奥のカフェに行くなんて時もあったけど、月ちゃんはいつも通りにものを楽しみ、撮り、私はそれを眺め、楽しんだ。
結局まだ気持ちを伝えられていない。
どうしよう。いつ言うべきなんだろう。
二学期が始まって、実力テストが行なわれた。そしてその成績が貼り出された。
月ちゃんは18位、私は53位だった。
私は文化祭で部での出し物があるからアレだけど、三組は何をやるかが話し合われた。
校舎前のテントを取れるということで、案が外でやるものに少し偏って、
「ゼリーを売ろう!」
と、剛瓦くんが言ったからか、それで決まった。
――月ちゃんの一組は、何をするんだろ。
それによっては「言う」チャンスが来るのかも。
――なんだか、胸がむちゅむちゅする。




