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STEOP 気になる異装のはとこさん  作者: 弧川ふき@ひのかみゆみ


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25/42

25(月彦の視点) 大集合と気持ちの種

 今日の呼夢(こゆめ)はまた変な格好だ。向き合ってリビングで課題をやりながら、ふと考えたい時に、ほとんどいつも視線を吸い込む。悪魔ハットとでも呼べそうな帽子を被っている。天辺の左右から角が一本ずつ出ているような黒帽子。金のラメ入りの黒シャツに、黒いスカート、赤い首飾り。

 ――何のキャラなんだろう。

 その夕方、おじさん――時光(ときみつ)さんが帰ってきて、こう言った。

「懐かしいな! 魔法使いペチペチじゃないか!」

「お父様、再放送が少し前まであったのですよ?」

「そ、そうだったのか……!」

 ――の、何のキャラ?

 それを聞いてみると、

「主人公の女の子、アリーメリ・リエリですわ」

 と、呼夢(こゆめ)は静かに答えた。

 ……ペチペチって何だろう……と思ったけど、もう、その謎は謎のままでいいやと思ってしまった。

 その時だ。

 スーツを緩めた時光(ときみつ)さんが。

「明日、雅川(ががわ)高彦(たかひこ)さん達が来るらしいぞ」

「明日なんだ」

 と僕が言うと時光さんは続けた。

「ちょうど、あさってが新高丘(にいたかおか)夏祭りだから、みんなで楽しめるな」

 そっか、そういう時期。シャッターチャンスもあるかもしれない。


 ――で、その日が来て、空港に来たワケだけど。

 呼夢(こゆめ)は全体が赤い薄手のパーカーを着ている。フードには猫耳がついていて、被るとその耳が上にしっかり立つというもの。

「それは何のコスなの?」

 と僕が聞くと。

「ひょんな火女の赤姫はやいちゃうの赤姫だよ」

 ――分からん……。

 そんな呼夢(こゆめ)や僕や花香(はなか)さん、時光(ときみつ)さんの所へと、やって来た。キャリーケースを引く集団。

 姉のカエデ。母の清心(きよこ)。父の高彦(たかひこ)。兄の国彦(くにひこ)。弟の(そう)

「元気そうやん」

 カエデ(ねえ)がそう言った。

「うん、うまくやれてるかも」

「能力は使ったの?」

 と、爽は聞いてくるけど。

「一回しか使ってないよ。あんまり使わないもんだよ?」

「そうなのぉ? へえ~」

 でもそんなに残念がってない。そのままの僕でいていいと弟まで言ってくれているみたいで、嬉しくなる。

 まずはホテルまで送った。家で、この人数で夜を明かすのは無理だからだ。

 大荷物だけはホテルの部屋へ置くと、それから洲中(すなか)家へ。

 リビングのモニターテーブルには、マスカットの2497年の品種改良品ヴァイスカットのジュースが並んだ。

 親同士の会話に、花が咲く。

「実はこないだねぇ――」

「うちもこんな事があって――」

 なんて、いつになくにぎやかだ。

 カエデ(ねえ)は早々に呼夢(こゆめ)の部屋に行った。

 お兄ちゃんと(そう)は、今は、僕と僕の部屋にいる。

「なんか漫画とかゲームはないの?」

 と、爽が聞いてきた。

「ないよ。もしかしたら、あるのは、呼夢(こゆめ)の部屋だけど」

「じゃあボク、そっちに行ってくる」

 爽は猛ダッシュ。

「元気だなぁ爽は」

「何言ってんだよ。俺達も行くぞ」

「ええー? まぁいいけどさぁ」

 結局、呼夢(こゆめ)の部屋に、五人が大集合。

 ――ホラ、狭いって。

 なぁんて思いつつ。

呼夢(こゆめ)ちゃん、彼氏いないの~?」

 兄が聞いた。

 正直気になる。もしいたらと。

 ――もしいたら……? まあ、ひとりに戻るだけか。僕の服を作ることも楽しそうにはしてたけど……それは……面白がってただけで……だって呼夢(こゆめ)は、そういうことにワクワクする人だ、だからそれは僕じゃなくてもいいし、むしろそれをやり続けるなら僕にだけではなくなる時がくる。

 それは、すぐかもしれない。

「彼氏はいないんですよ」

 そう聞いてほっとした。

 だって、いないということは、今の感じがもう少し続くはずだから。なんでだか分からないけど、まだ、このままの関係でいたい。

 ――一緒にダムとか植物園とか、いっぱい行ったからかな……記念祭も……。でも彼氏ができたら、それまでか。それまでなんだろうな、僕に構っていられないだろうし。そっか……。

 あまり入ってこない会話のうち、辛うじて反応できそうなものには相槌を打ったりなんかしながら……僕は気持ちを隠した。

 ――なんか、ちょっと、さみしいかも……。

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