23(月彦の視点) なぜか目立つ呼夢とそれを見る人
呼夢だ。友人数人で遊ぶことになったスポービルという名の施設に、あとから呼夢もきた。
僕との関係について、周りはあまり触れない。
兄弟みたいなものと思っているのかも。もしそうだったら、どっちが年上扱いなんだろう。
でもまぁ、そんなことより、呼夢の格好だ。
僕がこの格好で家を出たのを見たからか、あの「なんたら魔女がどうたらのメイド」の緑を基調とした格好をしている。
――これならコスチュームとして気付く人もいるんじゃ?
呼夢の格好を見て生じた「おいマジか」という思いと、周囲への「何か反応ないの?」の思いが、心で暴れる。
男子達はまったくの無反応だ。考えもしないのかも。
四堂さんは何かに悩んでいるように見える。――何だ?
ほかの女子も無言だ。
僕と呼夢が並んだ時、クール女子が言った。
「ふたりのさ、その服装ってさ、もしかして……もしかして『お嬢様は魔女で初心』の魔女とメイド?」
――やっと言われた! しかもその通り!
と思ってからこそ呼夢の顔を見てみた。
それまでも明るかった呼夢の顔が、より一層明るくなった。
また胸がうずいた。
「呼夢が作ったんだよ」と僕が言うと、クール女子がうなずいた。
「道理で」
「道理で?」とはパッセが訊ねた。
「呼夢、服飾部だもんね」クール女子がそう言って、
「服飾・手芸部ね」と呼夢も。
ふたりはそれを合言葉にしたみたいに、笑い合った。
「そうそれ」とクール女子がまた笑う。
かなり仲が良さそうだ。
ある時、別のクラスの男子のひとりが立ち上がって――
「ジュース買ってくるよ。何飲む?」
みんな各々頼む。
それに対する呼夢の声はなぜか目立った。
「レモン系とか。すっきり系で」
その前に、質問をした男子が、「洲中は何にするの?」と聞いていた。
――三組の男子なのかな……。
思っていると、こっちにも。
「えっと、月ちゃん、だっけ」
――月ちゃん……まあ、サダッチにもそれでいいよって答えてたし……。
「何がいい?」と最終的に問われて。
思いがこんがらがる。
「え、あ、えっと……呼夢と同じのでいいよ。……あ、洲中さんね……と、同じやつで」
「――ああ、分かった」
別のことも分かってないかと、急にドキドキした。
なんでこんなに胸が鳴るんだろう。
楽しい時間だった。いつもより体を動かしている。熱がこもる。自分のガーターを悔しがるのも楽しい、誰かにエールを送るのも。残念がるのさえも。
でも別に、写真に撮りたいとは思わなかった。
――なんでだろ。未来が分からないから? うーん……。
自分でも不確かだった。
――まあとにかく、こういうのは…憶えていればいい。どうせ撮るなら――
呼夢を見た。
――いや、どうせならってだけだし。みんなのことをまだよく知らない。知っていって、みんなをもし撮りたくなるなら、これは特別でもなんでもない。
僕はまだ、呼夢のことでさえ、そんなに撮らない。




