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STEOP 気になる異装のはとこさん  作者: 弧川ふき@ひのかみゆみ


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23/42

23(月彦の視点) なぜか目立つ呼夢とそれを見る人

 呼夢(こゆめ)だ。友人数人で遊ぶことになったスポービルという名の施設に、あとから呼夢(こゆめ)もきた。

 僕との関係について、周りはあまり触れない。

 兄弟みたいなものと思っているのかも。もしそうだったら、どっちが年上扱いなんだろう。

 でもまぁ、そんなことより、呼夢(こゆめ)の格好だ。

 僕がこの格好で家を出たのを見たからか、あの「なんたら魔女がどうたらのメイド」の緑を基調とした格好をしている。

 ――これならコスチュームとして気付く人もいるんじゃ?

 呼夢(こゆめ)の格好を見て生じた「おいマジか」という思いと、周囲への「何か反応ないの?」の思いが、心で暴れる。

 男子達はまったくの無反応だ。考えもしないのかも。

 四堂(しどう)さんは何かに悩んでいるように見える。――何だ?

 ほかの女子も無言だ。

 僕と呼夢(こゆめ)が並んだ時、クール女子が言った。

「ふたりのさ、その服装ってさ、もしかして……もしかして『お嬢様は魔女で初心(うぶ)』の魔女とメイド?」

 ――やっと言われた! しかもその通り!

 と思ってからこそ呼夢(こゆめ)の顔を見てみた。

 それまでも明るかった呼夢(こゆめ)の顔が、より一層明るくなった。

 また胸がうずいた。

呼夢(こゆめ)が作ったんだよ」と僕が言うと、クール女子がうなずいた。

「道理で」

「道理で?」とはパッセが訊ねた。

呼夢(こゆめ)、服飾部だもんね」クール女子がそう言って、

「服飾・手芸部ね」と呼夢(こゆめ)も。

 ふたりはそれを合言葉にしたみたいに、笑い合った。

「そうそれ」とクール女子がまた笑う。

 かなり仲が良さそうだ。

 ある時、別のクラスの男子のひとりが立ち上がって――

「ジュース買ってくるよ。何飲む?」

 みんな各々頼む。

 それに対する呼夢(こゆめ)の声はなぜか目立った。

「レモン系とか。すっきり系で」

 その前に、質問をした男子が、「洲中(すなか)は何にするの?」と聞いていた。

 ――三組の男子なのかな……。

 思っていると、こっちにも。

「えっと、(つき)ちゃん、だっけ」

 ――月ちゃん……まあ、サダッチにもそれでいいよって答えてたし……。

「何がいい?」と最終的に問われて。

 思いがこんがらがる。

「え、あ、えっと……呼夢(こゆめ)と同じのでいいよ。……あ、洲中(すなか)さんね……と、同じやつで」

「――ああ、分かった」

 別のことも分かってないかと、急にドキドキした。

 なんでこんなに胸が鳴るんだろう。

 楽しい時間だった。いつもより体を動かしている。熱がこもる。自分のガーターを悔しがるのも楽しい、誰かにエールを送るのも。残念がるのさえも。

 でも別に、写真に撮りたいとは思わなかった。

 ――なんでだろ。未来が分からないから? うーん……。

 自分でも不確かだった。

 ――まあとにかく、こういうのは…憶えていればいい。どうせ撮るなら――

 呼夢(こゆめ)を見た。

 ――いや、どうせならってだけだし。みんなのことをまだよく知らない。知っていって、みんなをもし撮りたくなるなら、これは特別でもなんでもない。

 僕はまだ、呼夢(こゆめ)のことでさえ、そんなに撮らない。

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