22(月彦の視点) 四堂さんと変な男の子
ダムに行った日から数日。海と町中の中間くらいにある新ヶ木タワーを見に行った。
個人的には、そこからの景色より、タワーそのものの方が気に入った。特にフォルム。だから激写の連続だ。
それからまた数日後。リビングで呼夢と夏休みの課題をやっている時だった。
「ノルマ終わったの? ね、ここ教えて?」
そう言った呼夢の隣に座り直して、どれどれ……と見やる。
「この文が表現しているのはどこなんだろう、ってまず探そう」
少しヒントを出しても自力で解いてもらった。
「じゃ、これは?」
「考え方としては、まず、三角形を描くと分かるよ。その分母部分はここのことだから――」
これのヒントはこのくらいでいいか、と思ったが、
「ほら、やってみて」
と僕が言っても、
「え、あ、ごめん、もう一回言って」
だなんて。
「話はちゃんと聞いてよ」
「う、うん」
――あ、また『う、うん』だ。癖なのか? まあいいけど。
なんか話を聴いてない時がある。
――最近までそんなこと無かったのに。いつ頃からかし出してて……。変な病気……じゃなきゃいいけど……。
注意しておこうかな……と思ってすぐ、呼夢の声。
「できた!」
「よぉし、じゃあ完了だ」
そこへ電話が掛かった。
腕時計型からフォンボードに変形させたままリビングのテーブルの脇に置いていたので、手に取って画面を見る。そして分かった。
サダッチだ。
「ねぇ、今、暇?」
「暇になったよ。で、何?」
窓の方を見ながら、予想した。多分「遊ぼうぜー」これだ。
「今学校のヤツらといるんだよ。月ちゃんも来たらいいのにって話しててさ」
「ん~……じゃあ行こうかな、どこ?」
僕が場所を聴いている傍らで、呼夢は筆記用具を片付け、宿題とともに自室に戻ったみたいだった、振り向いたらいなかった。
場所の名を聞いてフォンで調べて、
「じゃあ友達の所に行ってきます」
と言うと、キッチンにいたおばさんから、
「行ってらっしゃい」
と送り出された。
「行ってきます」
いつものカメラ「トリズン」もケースに入れてそのベルトのような紐を首に掛けている。
ダムに行った時と同じ格好で、バスに乗って向かう。
この姿を見た友人の反応はどうなのか、少し気になる。
――知ってたりして。何かの……魔女のコスだっけ。まぁそこまで変じゃないし、気付かれないかもだけど。
スポービルという施設にやって来た。ここではテニスやバドミントン、ボウリング、ボルダリングなどができる――とサイトにあった。
迎えのサダッチにつれられ案内された所(ボウリングエリア)にいたのは、パッセ(八瀬くん)と、同じクラスの女子2人と、別のクラスの5人(男3人・女2人)だった。代金を払い、近付く。
別のクラスの女子1人をよく憶えている。転入してすぐの頃に揉めた相手。
「あ、この子、四堂さん。前に、カン違いから衝突があったけど……」
と、サダッチに言われ、僕は告げるべきだと思った。
「もう気にしてないよ」
「ほっ……よかった……」
と言った彼女のフルネームは四堂際美というらしい。
――誰かを守る気持ちからだから悪い子じゃないって話なんだよな、突っ走りさえしなきゃ……失礼じゃなきゃイイし……。
色んな出会いがあるなぁと思いながら、みんなに加わる。
格好については何も言われなかった、ちょっと残念。
カメラに関して別のクラスの男子が聞いたから、
「風景を撮るのが好きなんだ」
と、みんなに言うつもりで答えた。
「いつも持ってるんだね」
と、クール女子が言った。
「いつもじゃないよ。ただ、撮りたくなる瞬間を見逃したくない、かな。あと、こうしてると、安心する」
するとクール女子が笑った。
「変な……変な…………変な男の子だね」
「そうだね」自分でも笑った。
それから数分後、別のクラスの、さっき話したクール女子が、もう1人――女子をここに連れて来た。
「えっ」
呼夢だった。




