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19(月彦の視点) 期末テストと約束

 校内で、数人から、時間もまちまちに、ショーのことを聞かれた。中でも一人の女子がこう聞いてきた。

「被服部に入ったの?」

「服飾・手芸部ね。入ってないよ。アレは特別」

 とは答えておいた。


「そういえばさ」

 ある昼。呼夢(こゆめ)と一緒にいる昼休み。

 校舎の裏の木の下でよく会うようになってから、僕は気になっていた。

「期末テスト、大丈夫?」

「んげぇ! 大丈夫じゃない!」

「じゃあ……勉強、頑張ってね」

 僕が言うと、呼夢(こゆめ)は不服そうに顔をゆがめた。

「こういう時って、一緒に勉強しようよ~って言うもんでしょ~?」

「一緒に、したいの?」

「う……うん、家でも見てもらえるしさ」

「妙に素直だね」

「いつもそうだよ」

「そうかなぁ、結構僕に言ってないこととか、ありそうだけどなぁ」

「えっ」

 呼夢(こゆめ)が、何を言われるか気にして身構えたような……そんな気がした。

 それで彼女が固まったから、僕から言ってみることにした。

「まぁ…………僕に着せる衣装をどうするかは……そりゃあ呼夢(こゆめ)の技術力に掛かってるけどさ」

「あ、ああ……うん」

 いつもの顔に戻った呼夢(こゆめ)が、その顔の前で手を合わせた。

「お願い、テストまででいいから、夜、勉強、教えてほしい。……ダメ?」

「しょーがないな、お世話になってるし?」

 承諾の声を聞いたからか、呼夢(こゆめ)がホッと一息。


 問題の勉強は、お互い苦手科目があるせいか、苦労も中々あった。

 で、ふと思った。

「何かお礼とかあんのかな、教え合ってはいるけど比重が違うよね。僕はひとりでもよかったけど……」

 リビングのテーブルで、向かい合って座っていた。

 僕の言葉を聞くと、呼夢(こゆめ)は「あ~……」と声をなくして悩んだ。

 数秒後。

「どこか撮りたい所で道が分からない所とかない? もしあるなら、そこ、連れてってあげる」

 この案でどうだ! という感じの顔を呼夢(こゆめ)は見せた。

 正直、悪くない。むしろいい。

「よし、約束したからね」

「う、うん」

 少し経ってから呼夢(こゆめ)の方から言葉が届いた。

「まあさっきの、約束……しなくても連れてってあげるんだけどさ」

 そう聞いて嫌な気分になった。

「そう言われたら、僕は条件を出すみたいな――呼夢(こゆめ)は条件にしなくなったのに――僕だけズルいみたいになるよね?」

 で、思い付いた。

「じゃあ何かしてほしいこと、ほかにもう一個言って。それもしてあげる」

 すると、呼夢(こゆめ)はまたフリーズした。それからまた悩んで、そのあとで、

「じゃあ私が指定した服を着て、その格好で、約束の取りたい所に行くこと。一緒に」

 って。ちょっとだけ拍子抜けだけど。

「まあ、そんなことでいいなら、いくらでも」

「いくらでもっ?」

 驚くほど食い付いた呼夢(こゆめ)の反応に、僕は思わず噴き出した。

「変な解釈すんなよ?」

「う、うん、しないしない」

「最近、う、うん……っていう返事が多いけど、何か変なこと考えてない?」

「い、いや、考えてないよ」

「ほら、今のも」

「いや、普通じゃん、普通」

「そ……そうかなぁ~……」

 そんな会話もありながら、まあいいやと、勉強を繰り返していく。

 呼夢(こゆめ)は地頭はいいらしく、憶えが早い。


 そして数日後。

 テスト当日、すべてを出し切った結果……僕は一年の15位、呼夢(こゆめ)は57位だった。

 順位の貼り紙を前にして、僕と呼夢(こゆめ)は並んで立っていて――

「……上がったんだよね?」

「前は93位だったからねっ」

 呼夢(こゆめ)は親指を立ててこちらを見た。そんなのを見たら思わず口角が上がる。で……元気だなぁって思った。

「じゃあ約束よろしく」

「ガッテン!」

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