14(呼夢の視点) 新ヶ木島記念祭1
月彦くんの質素でシンプルな部屋で承諾を得られて、つい、叫んでしまった。
「めしあげ! 調理部!」の「多大根由利さん」のコスプレで叫ぶなんて、ふしだらなことをやってしまいましたわ。
まあ、とにかく。
「じゃあ、どういう服がいいのかしら」
私はペンと紙を、上着の左の脇ポケットから出した。すると月彦くんが、「え。……まあいいや」と言ってから「うーん、うーん」と悩んだ。
――もしかして本当は答えを変えたくなってた?
でも要望が聞こえてきた。
「涼しげな、首が苦しくない、シンプルで、男でも着れそうなシャツと、うーん、じゃあ……六分くらいの、すそが……下に行くほど広まったちょっと薄青いデニム風の……薄手のズボン。上下一枚ずつだけでいいんだよね?」
「うん。というか、断られると思った」
「いや、うん……そうしようと思ったけどね、でもまあ、もう、いいよって言っちゃったし。カメラ関係じゃないからか、気が緩んだんだよね。でもいいよ、一回くらいいいやと思って」
「そう……なんだ」
「うん、そうなの」
――まあ、やる気が出たのならいいや。
「……じゃあ、とりあえず、前日は……よく寝て、私について来てね?」
「分かった。あー、それ、いつ?」
「○月×日だよ」
「オッケー」
「あ、それと」
「ん?」
当然だけど、採寸をした。メジャーを当てられていく時の月彦くんは、なんだかオドオドしているみたいだった。……どうして私はこんなに笑顔になるんだろうか?
そして当日。日曜日。
朝食を済ませて衣装のすべてをバッグに詰めて全部の準備を終えると。
「じゃあ行くよ」
「ん、オッケ」
私達は、海近くの、新ヶ木ドームへと向かった。
――さあ、もうすぐお披露目の時間だ。