12(呼夢の視点) 太巻くんとSTEOPによる変化の話
今日も私は学校のミシンで衣装作り。
少しずつ、たまに失敗しながら技術を上げていく。
その失敗を次はできるだけしないように努めるのは大前提。だから成長する。
そんな中、私はSTEOP能力を使う。一定空間を巻き戻す。
失敗していないことになるけど、その失敗を絶対に忘れない。気を付けることで私はもっと自分を伸ばし、作っていく。
個人的に作っている衣装が、今日もまた出来上がった。
家に帰ってから、制服を脱ぎ、着てみる。
「めしあげ! 調理部!」の太巻くんのコスプレ。王子風の男児が高校生ながらも自作のエプロンを着て調理をする時の姿。制服とエプロンのセット。そして髪をセットすれば――完成だ。
「完璧だ! うぉぉぉぉ!」
かく言う私は部でのショー、新ヶ木島記念祭でのファッションショーを控えている。作った服を見せる機会なのだ。そのための衣装も並行して作っていた。
このあいだの買い物のあとから、月彦くんがSTEOP能力の影響でどんな体の変化を得たのか、少し気になっている。パッと見た感じでは分からなかったから……。
月彦くんの部屋のドアをノックしてみた。
ドアはすぐ開いた。
その時、「えっ!」という声が。同時に月彦くんが遠のいた。
「あ、ごめん、私だよ」
「な、なぁんだ……びっくりした……また何かのコスか」
「そうそう。『めしあげ! 調理部!』の太巻くん」
「へー」
「知ってる?」
「いや知らない」
「そっか……」
「あ、いや、僕が知らないだけだから。知ってる人は面白がって見てくれると思うよ」
「そう?」
途中、顔が沈んだ月彦くんだったけど、今はもう、明るい顔――くらいには戻っている。というか普段の顔か。
あとから、あ、私のせいか、と思った。
まあそれはそれとして。
本題だ。
「ねえ、月彦くんはSTEOPに目覚めた時、何が変わったの?」
見て分かりにくい所なんだろうなと思っていると。
「えっとね……。ヒゲから下のムダ毛が全部消えてた」
「ええ? そうなんだ? じゃあそれで、心の負担が減ったんだね」
「うん、大分減ったね」
「そうなんだぁ、ふぅ~ん」
すると、今度は月彦くんの方から。
「呼夢はSTEOP能力あるの?」
「あるよ。うちは私がそうなったから引っ越してきたんだよ」
「そうだったんだ」
「うん」
「ふぅん。で、呼夢の変化は何だったの?」
「あ~……」
まず、話す順番が大事だな、と思った。それから。
「私、酷い火傷を負ったの」
「だから――」
「ちょい。全部聞いて?」
「あ、うん……。ごめん、どうぞ」
「で、その……小学校のね、低学年で……跡をいじられるようになって……それが続いて――」
「じゃあそれが」
「……うん」
「……そっか。それが消えた……から、というか、なんだ、その……気にならなくなれるようになって……よかったね」
「……うん」
へへっ、と笑ってしまう。なぜだか、今の月彦くんの言い方が、私には、とても尊いものだと思えた。