人生相談「卒業」
まだ十二月だというのに私の心は君が卒業する三月へ翔んでいる。春と共に別れの時が訪れる……それが怖いのだ。
卒業式を終え門を出ていく君を、私は遠くから見つめていることだろう。
本来ならば見守る、と書くべきだと自分でも分かっている。
担任の教師なのだから、そうあって然るべきなのだ。
しかし、私はきっと、教師という聖職者の眼で君を見ることができないはずだ。
片思いしている青年に告白できず、ただ遠くから見つめるだけの、見るも哀れな中年女……それが私だった。
君が入学した春から、ずっと見つめ続けていた。三年生となり担任となったときは狂喜乱舞したものだ。
それは許されないことだと、自分でも分かっていた。夫も子供もいるのに教え子に恋するなんて、ありえないと!
それでも気持ちを抑えられなかった。
それでも、この想いを断ち切らないといけない。
君なしで生きていくために、どうしたらいいのか? その答えを見つけ出さないといけない。
卒業までの半年どころか三か月で答えを出すなんて、できるのだろうか?
答えが見つからないからといって、夫にも子供にも訊けない。不倫相手の校長と教頭と同僚の教師たちにも訊けない。友人たちに尋ねても「告白しちゃえ! それで駆け落ちしちゃえ!」と無責任な答えが返ってくるのが落ちだ。
そうだ!
「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」に電話で人生相談してみよう!
どうすれば彼を卒業できるのか? その答えを教えてくれるはずだから。