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天空の唄笛  作者: 祥々奈々
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化石

洞窟に入ると入り口の外光が届くところに神殿はあった。

 体育館ほどもある空間の中央に巨大な赤琥珀石がミラボールのように浮いている。

 中央に黒く焦げたような跡と、回天の部品だろう鉄屑が散乱している。

 ムトゥスを助けるために異世界人ホシジロ・シンが冥界の使徒と共に自爆した場所だ。 

 神殿とはいえ何か装飾や建築物があるわけではない、ただの洞窟だ、天井や壁を支えるように白い柱が這っている。


 「なんか、寒々しいな」

 「なんの気配もないわ」


 二人で支え合いながらアラタとマリッサが神殿奥までやってくると腰を降ろす、やはり赤い琥珀石が散らばり火種には困らなさそうだ。

 人造と呼べる物は二人が腰掛けた上にある木製の扉のみだ。


 「これが神殿なのか?」

 「イーヴァン様も何にもない所だとは言っていましたが、ほんとに何にもないわ」

 「あの白い梁は何だろう、どうやって造ったんだ」

 「さあ、私にはわからないよ」

 「この空間には奉納した武器はなさそうだ、奥へ行ってみるか」

 「そうね、寒いし・・・」


 丸太を編んで作った扉を開けて中を覗くと奥は相当深い、青い琥珀石が照明のように天井に光っている。

 入口は広いが先端に向って細くなり、広い空間同様に白い梁が天井と壁を支えていた。


 「結構奥が深いな」


 進んだ先は行き止まりで、少し広くなったている空間は白い壁だ。


 「おっ、おい、マリッサこれは・・・!?」

 「あれは牙!?」

 両側には乱杭歯が上下に並んでいる。

 「何かの骨!?、まさかドラゴンが存在したのか」

 「何万年も前の話だわ、それに巨大すぎる!」


 入口からの白い梁は全てドラゴンのような巨大生物の化石だ、全長百メートル近い事になる。

 アラタとマリッサがいる部分が頭部のようだ。


 「じゃあ、赤と青の琥珀石はドラゴンの血か何かか?」

 「驚いたわ!赤が燃えるのはドラゴンの血の化石だからなのね、青はなにかしら?」

 「魔族は知らないのか?赤と青を一定割合で混合すると派手な爆発を起こすんだ」

 「一緒に燃やしちゃいけないとは知っていたけど・・・息吹!伝説のドラゴンの息吹なのね」

 「生物の化石だったのか、石油と同じと言えなくもないな」

 「本当にいたなんて嘘みたい」

 「冥界神殿は巨大なドラゴンの化石そのものがご神体というわけか」


 ドラゴンの鼻先に勾玉のように黒い水晶が石積の上に祀られている。

 何か紙が置かれているが、漢字というやつだ、シンが書いたものだろうが二人には読めない。

 「どうするアラタ?少し休んでからにする?」

 「いや、どうせやることは一緒だ、問題は先送りにはしない方がいい」

 「やるのね!?」

 「開けよう」


 勾玉を外すと把手がある、観音開きを開けると箱形の保管庫らしき空間。

 「何も無いじゃ無い」

 マリッサが顔を突っ込んで左右を確認するが仕掛けはない。

 「空っぽだよアラタ、まさか盗まれてしまったのかしら!」

変わってアラタが空間を調べる、壁となっている石板を叩いて音を聞く。


 ゴンッ ゴンッ ゴンッ カカンッ


 天井だけ音が軽い、空間があるようだ。

 「もう一部屋あるようだな」

 「天井に隠し扉があったのね」

 振り返ったアラタが親指を立てた。

 「よっと」

 天井の石版に力を入れるとガコンッと音をたてて外れる、予想どおりもう一つの空間が現れた。

 正面に反転した方向に神具が立てかけてあった。

 「あったぞ」

 「!!」

 ゴソゴソと這い出たアラタの手には布に包まれたダブルバレルの上下二連式散弾銃、骨董品のような銃が握られていた。

 同じ物が二丁ある。

 美しい金の装飾が施され、銃身が純白だ。

 銃の長さはギリギリ片手で持てる長さのセミダブルハンド。


 「これが神具なのね!」

 マリッサが目を輝かせたがアラタは不満げだ。

 「変わった形だが相当昔の物だ、たいした威力があるとは思えん」

 「それに・・・肝心の弾がない」

 「これじゃないの?」

 別布に包まれたカートリッジをマリッサが見つけた。

 「!?」

 手に取ってみると通常の弾丸ではなく、空気銃の圧縮空気カートリッジのようだ。

 空気銃など玩具だ、戦争で使用出来る物では無い。

 中折れ式の口径とぴったり合う、間違いないが弾丸はどこにあるのか。

 そもそも神具と名が付いている以上、こちらの常識の外にあるのかも知れない。


 「撃ってみるか!」


 二人は一度胴体広間まで戻り、木材に神具銃を固定して引き金にロープを縛り付け引き金を引いてみることにする。

 「暴発するかもしれん、岩の影に隠れていろ」

 「ぜったい嫌、隣にいる!」

 なんなら自身の身体を盾にしそうな勢いだ。


 銃口を壁に向ける、壁までは二十メートル程だ。

 「よし、撃つぞ、耳を塞いで口を開けておけ」

 「わっ、わかった!」

 慎重に紐を引きトリガーを落とす。

 

 パスンッ

 頼りないほどの発射音と共に銃口から赤い線が壁に向かって引かれる、曳光弾のようだ。

 壁に到達したはずだが石榑が飛び散ったりはしていない。

 「!?」

 思わず顔を見合わせる。


 青い光が届いたであろう壁を確認すると口径より大きな穴が空いている。

 穴の奥は深い、物理的に削ったではない、表面が滑らかに溶けている、高温で溶かしたような跡だ。

 

 「これってどういう事!?異世界人が使う銃よりは弱いかな」

 「この拳銃の9mm弾ではこんな穴は空けられない、貫通力は間違いなく神具の方が上だ」


 「いろいろ調べ甲斐がありそうだ」



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