第99話 クロト
ユキさんが先導して敵に突っ込んでいく。うん、いい感じに
動けている。・・・そう動けているんだ、俺達。
俺達がやっていたのはオープンワールドのMMORPGだ。
アニメやラノベ、マンガの様な近未来のフルダイブ型のナントカカントカ
ではない。魔法やスキルはキーボードやコントローラーに割り当て
ボタン一つで格好の良いモーションでくり出せる。
移動もそうだ。マウスカーソルで地面をクリックするとそこまで
オートランで行ける。そう、俺達は体を動かして敵を倒していない。
何故できた・・・。ユキさんなんて今まさに凄い動きをしている。
俺だってそうだ、レベル1で弓なんて放てた。
でも移動したら1時間で息切れした・・・・。
俺達の体はどうなっているんだ。そもそも向こうの体と言うのが
間違いなんだろう。そうなんだ・・・俺達はもう魂しか残ってないのだろう。
という事は・・・俺達は死んでいるのか!?でも意識や、まぁ魂は
そのままだ。俺達は一体なんなんだろう。
と。思っていたら空から槍が沢山降ってきた!
そりゃそうだ!敵は有翼族だ!そりゃあ飛べるだろうな!
道はユキさんが切り開き、空からの攻撃にはリャナさんが
魔法結界で対処しつつステラとリルさんが攻撃魔法で弾幕を張っている。
そして俺は!
そして・・・そして俺は!ユキさんについて行く!・・・。
「ちょっと数が多い!ヴェヌス!こっちきて手伝いなさい!」
うっけええ!ユキさんでも手一杯なのか!
ってか今の俺はキョークだっちゅうの!
俺もユキさんと共に先頭へ行く。うん!俺でも行ける。という事は
「大体敵のレベルは140前後ね」
俺の左側からユキさんが叫ぶ。さすがだな、PvPガチ勢ってのは
打ち合っただけで大体わかるもんだな・・・。まぁ俺もわかるけどね!
俺のレベルは今96だ。ジヴァニアの効果や剣の効果で攻撃力は
すでにレベル180前後まで達している。
通常攻撃が通るので、まぁそんなところだろう。しかし・・・。
1人?の有翼族がレベル140前後、それが2000人。
「キョーク様!門を出たらそのまま右へ!仕方ないのでユキも右へ!」
リルさんが叫ぶとユキさんも
「仕方ないから右へ行ってあげる!」だそうだ。
「開けた!ヴェヌスはそのまま行って!私はここでミツルとバカを待つわ!」
ユキさんの言う通りに俺達とステラ達は門へと向かう。
空から回り込まれ前方の敵が全く減らなかったが徐々にステラや
クシナダヒメの銃、リルさんの攻撃魔法やリャナさんの補助魔法が
噛みあいだして対応が的確に出来るようになった。
「聞こえたぞ!てめえ帰ったらギッタギタにしてやる!」
スサノオは叫びながらも殿をキチンと担っている。というか強ええ。
今まで手を抜いてたのか?というほどに。無論、ミツルもいい感じだ。
ってか、ミツルに槍が刺さってる・・・。それでも動けているのか!
おそるべし『不死』の加護!
もうゾンビじゃねえのか?あれ・・・。
「雪丸!こい!」俺は雪丸を傍に呼ぶが苦戦して俺の所に来ることが
出来ないでいる。という事は雪丸が眷属レベルではなく俺達と同じレベルで
言うと、雪丸のレベルは130前後って事だ。
「うりゃあああああ」
掛け声とともにジヴァニアの広範囲神聖魔法がまばゆい光と共に放たれる。
よくやった!アンデッド以外にはまったく効果がないが目くらましになった!
何度でも言う!アンデッド以外には何も効果がないが目くらましにはなった!
スキルを使い果たし落ちるジヴァニアを上手く背中でキャッチ!流石雪丸。
その隙に空から槍が複数放たれる!が!レオが旨く槍を弾いている!
雪丸とレオは何気に良いコンビだ。
「そろそろ引くよ!レオ!」
リホさんもブランクがあるのにうまく立ち回っている。
「だめだ、キリがない!ゲームで2000は大したことないけど実際やると
結構すごいのね!ちょっと無理かも!」
おいおいユキさんや。ゲームでどんな廃プレイしてたんや・・・。
そして俺達は門の所までたどり着く。
俺、リホさん、リャナさん、リルさん。そしてイチキさんとステラ。
何故かステラは呼び捨て。そして雪丸とレオ。
少し遅れてスサノオとクシナダヒメ、そしてミツル。
「いいぞ!ユキさん!撤退だ!」
その俺の声に反応しユキさんが九尾の狐を召喚。
ユキさんの影からキューちゃんが飛び出る。ん?何故呼ぶの?
九尾の狐。その存在は破滅。
なにかモヤっとした揺らぎがキューちゃんを包んでいる。
しかしいつの間にかデカくなっている。レオよりでけえな!おい!
ただいるだけで相手をひるませる。そう『嫌な予感』。
それだけのためにユキさんが呼びだした。
俺達が右へと各々眷属を呼び出し、ソレに乗り移動を行う。
約500が俺達を空から追ってくる。いける、このまま逃げ切れる!
が、正面に結構な数の軍勢が見える。やべえ挟まれた!
うへえええええ、こっちに突っ込んでくる!
「みんな!腹を決めるぞ!もう出たとこ勝負で突っ込むぞ!」
なぜか俺は全員に指示をする。そして全員がそれに答える。
そして前方の敵が!俺達と遭遇!そして!
俺達を通り過ぎて有翼族へと向かって行った・・・。
「これはこれは魔王様、おっとキョーク様。遅れて申し訳ございません。
約1000名しかおりませんが選りすぐりの兵共です。」
クドラク!たしか軍師って立ち位置だったはず。
「リャナンシーからの要請で準備をしておりました。この先に簡素ですが
陣を取っております。さぁ、どうぞどうぞ」
そして俺達は有翼族の追跡から逃れることが出来た。
★★★★ニュクスの街★★★★
女神クロト視線
「ニュクス様。何故ワザとお逃がしになったのですか?」
ニュクスにそう問いかけると笑いながらニュクスは
「そりゃあ、そのほうが面白いからよ!もうワクワクしちゃう。
だってこれからどうなるかわからないじゃない!そうよ!
解り切ってる未来よりもずっといいじゃないの。
あぁあああキョーク様、そしてそして魔王様。是非、是非とも
私と手を取り合いこの世界を共に楽しみましょう!」
クロトは回顧する。
私達は戦の為に約2万の軍勢と名を馳せた有名な戦士たちは
敵と川を境ににらみ合っていた。
私、ラケシス、アトロポス、アイテール、ヘーメラー。
ゼウス、アテナ、そしてニュクス様。他にも数名の戦士たち。
そういえばヘラクレスも居た気がする。
大きな地揺れ。それと共に辺り一帯が闇に飲み込まれる。
これはまたニュクス様が何かやったんだなと。みんな思っていた。
しかし、闇が消えると我々は知らない所に居た。
臨機応変。いつもニュクス様が言っていた言葉。我々は若干の乱れが
あったが統制をもったまま動くことが出来たと思う。
運が良かったのは陣まるまる『転移』したことで幕僚も馬もなにもかも
こちらに来たことだ。
簡易ではあるが柵をこさえナニカの襲撃に備えた。
ある程度余裕が出来た頃にニュクス様がゼウスを斥候にだす。魂だけだが。
何処へ飛んで行ったか分からなかったがニュクス様のイタズラなのか
結果、訳の分かんない妖精の様なモノに魂が憑依した。
アテナ様は元々ニュクス様と仲が良くはなかった為に
斥候と言う名目で兵士は連れずに戦士数名を連れて出て行った。
数名とはアルテミス、デメテル、ニーケー。勿論全員音信不通。
今頃どこでないをしているのか。
「さて、これでマカーブル達と敵対する事になっちゃったかもしれないわね。」
ニュクス様が私に笑いかける。ゾッとするような笑い顔。
「そ、それでは魔王様と敵対するって事になりますね」
私がそう言うとニュクス様は
「何を言っているの!この世界は明らかにカオス様の大地、そして世界。
その代々伝わるモノが、まぁこの世界では何故か『魔王』と呼ばれていますが
そんな呼び方どうでもいいわ。その『魔王』を名乗るのであれば
本来仕えるのは私達!正統なる私達!あんな胡散臭いイキモノにまかせられる
モノじゃないわ。リャナンシーやマカーブル達と一緒に居てわかったわ。」
「彼らには魔王様は任せられないとね。そして愚かなことに人族と
敵対している。コレもありえない。私達はカオス様を始祖様と仰ぎ、そして
人、人間を導く者。違って?」
ニュクス様はそう言うと私に微笑みかける。
全くもって
その通りだ。