第94話 共闘?
おいおい、正面からかよ。
ステラを先頭に門から街中へ、そして城の前。
「こ、これはステラ様。本日はどういったご用件で?」
門番が焦りながら言っているが、ステラはお構いなしに入っていく。
「これより先は、皇王様の許可が・・・。」
「うるさいわね。あんた、私より偉いの?へぇそうなんだ。
だったらどうすんのよ。取り押さえれば?私、本気出すわよ?
知ってるわよね?私がしてきた事。ここでぶっ放すわよ?」
おいおい、ステラ・・・様。あんた何したんだよ。
「だった・・ら、私・・も暴・・れる。」
うん。ユキさん。思いっきり人見知りで過激な事を言うんだな。
「通してやんな。姉貴、久しぶりだな。あの爆発は参ったよ。
親父が呼んでいる。」
門番の後ろから・・・スサノオだ。
俺達はスサノオについて行く。通されたのは皇王の部屋。
「まぁかけたまえ。流石に君たちとやり合う勇気はないよ。」
皇王リスボアは俺達に座るように促す。
正面にリスボア、そしてスサノオ。その後ろに従者か?
俺達はステラを中心に、座っていく。が、ユキさんは座らなかった。
そうだ、一番強い者が立ってた方がいい。
「何が聞きたいんだい?ステラ。いやアマテラス。」
皇王は机に肘をつき手を組み鋭い目で娘を見ている。
「そもそも!ここは昔いた世界じゃないのよ?なぜ人族の
事ばかり考えられるのかしら。」
「そりゃあ、私達が『神族』だからさ。」
「だからと言って亜人たちや魔族を排除するいわれはないわ?」
「誰も敵対するとは言っていないさ。人族の立ち位置を平等な所まで
押し上げようとしているだけだ。人族は弱い。驚くほどに。」
「その弱いと言っている人族が現在まで混乱を招いていたって
知らないの?王国は勿論、父上だって裏のモノを使って亜人の国から
モノを盗んだりしてたじゃないの」
「私の指示ではないよ。私は盗めと言っていない。交渉をして来るように
言っただけだよ。まぁでも、そう言うのをひっくるめて人間は狡猾で
弱いんだけどね。それに対しては謝るよ。」
「で!それはちょっと置いといて。勾玉に封じられたモノ達を解放して
どうするつもりよ。戦争でもするの?」
「はっはっは。そんな事はしないさ。単純に勾玉から同族を解放したいだけさ。
解放したからと言って私の言う事を聞くのかい?そもそも、お前は
聞かないじゃないか。いつだって。」
「そ、それは。うん、まぁ。私だって考えがあるもの。」
「だからと言ってこういった感じで話し合いもせずに出て行くと言うのも
どうかと思うよ?」
「そ、そりゃあ。父上が何考えているかわかんなかったし。それに
人族以外を排除とか言ったら信用置けないじゃない。」
「まぁそりゃ確かに。じゃあ、本音の所を話そう。人族は亜人や魔族に対して
争いを起こすつもりはない。魔獣を使い、圧倒的な力で駆逐し、力を示す。
そして、その後、交渉だ。立場の確認だ。もしそれでも人族を見下すような
事があれば・・・。戦う。」
「ほらごらんなさい!やっぱり戦うんじゃない!」
「亜人や魔族は人族を見下している。弱いから。リホさんならわかるはずだ。
亜人の国で取れた調味料がいくらで流通しているか。亜人の国での
流通料の18倍だ。そのかわり、人族が作ったモノはここでの価格と同じ。
これをなめられていると言わないで何というんだ?仲良くできるわけが
ない。」
その時、ステラの頭にユキさんの手が乗る。
いわゆる、ステラが喋るのを止めたのだ。その代わり、ユキさんが
口を開く。
「そんな事はどうでもいいの。まぁ良くはないけど。聞きたいのは
なぜ勾玉に魂が入っているのか?って事。今回来た目的はそれ。」
「うちの娘にもユキの様な冷静さがあれば嫁の貰い手もあるんだがな。」
ため息をつきながらリスボアは言うが、そう言う事は向うの世界では
ハラスメントだ。止めた方がいい・・・。うん。
「うむ。ソレに関しては私達も調査をしている。実際、なぜ勾玉に
魂が入っているのかがわからん。これは私個人の考えだが。
『封じられた』と思う。何故?理由は『脅威』になるからだ。じゃあ
誰の脅威なのか。そこが解らない。」
「亜人や魔族がしたって事?」
ユキさんは顎に手をやり考え込みながら言った。
「それはないな。実際問題としていくつあるか知らんが勾玉を介さずに
私やステラのように普通に体に魂を入れても脅威にはならんだろう。
それだけ魔族は強いんだよ。ユキは魔族が全員で攻めてきたら対処
出来るかい?多分、出来ない。そのユキより弱い私やスサノオだよ?」
「親父!俺はユキよりも・・・!」
「いいや!お前よりユキの方が強い。残念ながらだ。」
そう言われスサノオは下唇を噛んでいる。
あぁ、そう言ったのわかるぞ?くやしいよな?そう言われると。
「いいか?普通に魂が体に宿ったのは私、スサノオ、クシナダ、ヒルコ、
そしてアマテラス、イチキ。そして、今わかっているだけだが、勾玉に
魂が入っているのが、イザナミ、ツクヨミ、タギリ、タギツ、オモイカネ、
フトダマ、タケミカズチ、イソタケル。まぁ他にもいるだろうな。」
そ、そんなにいたんだ!
それだけいれば、魔族の脅威になるのではないかと聞くと。
「何度も言うが、脅威にはならんよ。仮に全員が体に魂があっても
戦力になるのは私と、現在体を持っているモノだけだ。他の者は
まぁレベルというのか?ソレは高いが戦闘力はそれほど高くない。
妻だってどちらかというと霊力中心の仲間を鼓舞したりする・・・。
待て。今現在体が動いているモノは・・・。」
いわゆる脳みそ筋肉だろ?といったらスサノオににらまれた。
「私達はある程度の防御、自身に掛かる災いの霊力、まぁ魔法だ。
を、疎外できる能力がある。他の者は残念ながら耐性が弱い。
明らかに何モノかが普通に我々の復活を邪魔したとしか言いようがない!」
「じゃあ黄龍がこちらに魂を移し、体に入ろうとした瞬間に阻害した?」
「これはやはり、黄龍を探すしかないな。ここは休戦といかないか?ステラ。」
ステラはそのリスボア、いやイザナギの提案に首を振る。
「私達は私達で黄龍を探すわ!」
ステラがそう言うとユキさんが再度、頭に手を置いた。
「別々に探す。その代わり、真実を知ったらお互いに嘘が無い様に
話すってどお?」
「こちらはそれで構わんさ。というか探してほしいんだがな。
スサノオを連れて行っていいぞ?何かの壁くらいにはなるだろう。」
「おい親父!こいつらと一緒に行けって事かよ!」
「スサノオ、何度でも言う。我々の目的はイザナミたちを生き返らす事だ。
それからはどうとでもなる。」
「よくいうわ。監視役じゃないの。まぁでも逆にこっちがスサノオを
捕らえてるって事にもなるわね。いいわ。いいよね?ステラ。」
「ユキがそう言うんなら・・・それでいいけど。」
すっごく不満そうにステラは言っているが、リホさんの後でかつ丼
作ってあげるの一言に手のひらがクルッとなった。
「じゃあよろしくな?愛しき娘よ。はっはっは。あ、そうだ。
キョーク君に伝えてくれ。もう追っかけはしないと。」
俺達は城の外にてスサノオが来るのを待っている。
「なーんか、うまく使われてる気がするんだけど?」
ステラの言う通りなんだが。まぁでも、何かあった場合は心置きなく
対抗できるんじゃねえか?と俺が言うとステラは唇を噛みながら頷く。
「その時はキョークにも参戦してもらうさ。」
そう言いながら、あれやこれや行っているとスサノオがやってくる。
ん?クシナダヒメ?も付いてくるのか。
そして俺達は少し複雑な6人パーティとなって黄龍を探す旅に出る。
★★★★ニュクスの街★★★★
ニュクスは勾玉を自身の街の研究所で解析すると言い
街へと戻っていた。その研究所では
ニュクス、クロト、ラケシス、アトロポスが勾玉を机に置いて
沈黙している。
「この勾玉・・・どうされるんですか?」
クロトが何故か困った様にニュクスに問うていた。
ニュクスはは微笑みながら答える。
「・・・さてどうしましょうかね。ふふふ。まさか、自分が封じたモノを
自分で解析するとは思わなかったわ。あら楽しい。」