第90話 ミツルとリホ
ミツル達は・・・無事だろうか。
ふと、思った。リホさんを迎えに行ったならば、俺と
合流する・・・。いや、しないな。俺は皇国の目的だ。
ならば、俺と合流したら俺の場所がわかってしまう。まぁ、
あの皇王ならば俺の居場所は知っているだろうが。
多分リスボアは、ユキさん達も追っているだろう。なんたって娘?の
ステラが同行している。
そもそもだ。皇国は今から何をしようとしているんだろう。
人の世を作る・・・という事は、人族優先の世界。
ならば、亜人や魔族はどうなるのだ?
虐げられる・・・。最悪、死?
戦を起こすつもりなのか?いやいやいやいや、無いだろう。
だって、日本史に出てくるほどの奴らだぜ?・・・しかし。
人間の歴史は殺し合いの歴史だ。
昔話に出てくる妖怪や物の怪は『敵』『悪』。悪さをする奴。
俺は疑問がある。ある小説を見てからだった。
その小説の中身を簡単に言うと。
昔、森に生息している妖怪たちが居た。平和に暮らしていたが
ある時、人間がその森を開墾し、畑や工場を作った。
人間が増えすぎて生活に困ってたからだ。
妖怪たちは「ここは俺達が生活している場所なんだ。これ以上
森を荒らさないでくれ」と人間にお願いしたが、人間は
「そんなもの誰が決めたんだ。」と足蹴にする。
その森は妖怪たちが食べる食料なども自生していた。
その為、妖怪たちは食うに困って、人間が畑で作った野菜を
盗み、食べるようになった。人間は自分たちが作った作物を
荒され、激怒し、そして妖怪たちを・・・殺した。
妖怪たちは仲間が殺され激高し、その後も人間に対して悪さを
するようになった。
人間はその森に妖怪が居ることは知っていたが『生活』の事までは
考えていなかった。あまりにも悪さがひどいので『神』にお願いをした。
「妖怪を退治してくれ」と。
『神』は人間が悩み苦しんでいるのを見て妖怪を退治した。
そして、その森から妖怪はいなくなった。『神』は今まで以上に
人間に崇められ慕われるようになった。めでたしめでたし。
この小説の最後には
「はたして本当にめでたしめでたしなのか?」と書かれてあった。
「そんなもん人間が悪いに決まってるじゃん」
この話を聞いていたジヴァニアがそういう。
ジヴァニアは元々プログラム、所謂AIだ。
考えに『感情』はない。だからこそ、良い悪いが「はっきり」とわかる。
俺は「どっちも悪い」と普通に思っていた。
「そもそも、人間が自分たちの事しか考えていないから
そういった事が起こるのよね」
ごもっともです、リルさん。
こんどゆっくり向こうの世界の話を魔族にしようと思った。
多分・・・ドン引きするだろうが!
「とりあえずミツルたちは大丈夫じゃない?アイツ死なないし。
なにげにリホも強いし。」
ジヴァニアがそう言うと何故かそう思ってしまう自分。
「ミツルと言うモノの話を聞くに問題ないでしょう。
よっぽどのモノが前に出てこない限りは」
リルさんの一言に安心はするが少しの不安がよぎる。
『神族』が前に出てくる可能性。
いやいや、心配しすぎだ。ミツルやリホさんが狙われている
という事はないかもしれない。実際、無関係だ、無関係のはずだ。
・・・というか何処にいるんだろうか。
俺達はその後、魔王領へと戻る。ニュクスの街へと俺が行きたいからだ。
俺の勘が正しければ、そこに住むモノ達は・・・。
★★★★海のある村 宿屋★★★★
ミツル視点
「今帰ったよぉ。なーんか、村の皆の雰囲気悪いわぁ。」
買い物から帰ってきたリホは袋を置き椅子にドカッと座った。
俺は袋の中を見ると・・・。これは!
「へへへ、今日は純和風に挑戦するの。お刺身とかね。
お寿司でもいいわね!」
魚を捌きながらリホはキョークを心配している。そりゃそうだ。
俺だって気になっている、アイツは今頃どこで何をしているんだろう。
皇国でリホを強引に連れ出し、キョークが行ったであろう方角と
別の方へと逃げてきた。道中に追手などなかった。
やはり、俺達は考えすぎていたのかもしれない。
「あ、ショウガないや。ねえ買って来てよ。大通りの野菜屋さんが
取り扱ってるから。」
問題ない!俺はリホの頼みならなんだって聞くぞ!
俺は大急ぎで!ショウガを買いに行く!
大通りに行くと村の人達がざわついている。
「おばちゃん、どうしたの?みんながざわついているんだけど」
「それがさぁ、皇国から調査団?視察団?が来たのよ。
まぁよその村にも来たらしいからいいんだけども。ほら、この村って
皇国への編入に反対したじゃない。村長も帰ってくる途中に
死んじゃったし。噂では『妖精使い』が殺したって事になってるけど。」
おいおい、キョークも大変だな。何度目だよ、えん罪。
因みに俺の妖精、ファルツはフードの裏で寝ている。
このおばちゃんが俺の妖精を見たら怖がっただろうな。
俺はショウガを受け取り店を後にした。
宿屋へ帰り、ショウガを渡すと。
「皇国から誰か来てるんでしょ?やっぱり私達を探してるのかな。」
俺はその問いに首を振る。俺達は多分雑魚扱いだ。
ナニカ、他の目的で来たと思った方がいい。まぁでも、会わないに越した事は
ないか。とりあえず、食おうじゃないか!
俺は窓の外を見ると。
あぁ、調査団か。十名ほどか?・・・先頭の男、あれは。
スサノオ!?
「あの人は多分、皇国の皇太子よ?名前は確かコルン。皇太子が自ら
来るなんて。この村ってそんなに重要なのかしら」
スサノオと瓜二つだ。あの洞窟で会った・・・男。俺達に勾玉を
渡して消えた男だ。重要な何かがあるのか?剣を探せとか勾玉を
探せとか言ってたな・・・。という事はこの村に剣か勾玉があるのか?
・・・後をつけてみるか。
「食べてから行ってよね?せっかく作ったんだから。」
俺は慌てて食う!うめえ!
そして俺はスサノオ・・・いや、コルンの後をつける。
「いってらっしゃーい」
ああ!いい!なんだろうこの新婚生活っぽいヤツ!
まぁコクって保留になってるけどな!
ん?どこへ行く?そっちは海だぞ?またBBQがしてえな。
そういえば、ステラ達は今頃何してるんだろうな。
ユキさんが居るんだ。・・・ユキさんにサイン貰っとくべきだった。
まぁまたいつか会えるか。
船で?あの体を取りに来たのか!?しかたねぇな、待つか。
一時のち、爆音とともに岩礁の一部が崩れた・・・。おいおい。
ステラさんの魔方陣と言う地雷ふんだんだな・・・。
うわぁ、出てきたよ。3人になっちゃってる。流石にスサノオは
生存しているな、そりゃそうか。『神族』だし。
スサノオは魔方陣の様なモノを描き、その中に入っていく。
そして・・・消えた。
誰かを連れて出てきたようなことはなかった。であれば
ステラさんの仲間?の体は無事か。・・・ならばいいか。
皇国が俺達に興味がないという事もわかった。
ならば、この村を出てキョークと・・・、いやユキさんと
合流だ。なぜ、ユキさんと合流するのか。そりゃあ決まっている。
ユキさんはステラ、いやアマテラスと一緒にいる。
そっちの方が・・・面白い!
何故ならば俺はゲーマーだからだ!俺の物語だからだ!
リホさんは・・・。リホさんはどうするのだろうか。
宿屋に帰り見た事を話す。
「なんで・・・。なんで」
「なんでそんな面白そうなことを私が料理を作っている間に
やってたのよ!あなた達!」
え?あれ?
「私だってね!そう言うのが好きだからゲームしてたのよ!?
もちろん料理は好きだけど?スローライフ系っていうの?
でもね、基本はそっちの方が好きなんだからね?さ、行くわよ!」
どうやら俺の惚れた女性は・・・。いいじゃないか!
あ、やべえ、キョークの口癖が移ってる。