第9話 泣いちゃった俺。
朝起きて。飯を食べて。依頼を片っ端からこなす。
薬草採取から討伐まで。
おかげでレベルが上がった。勿論、運を中心に上げる。
現在のステータスはジヴァニアの加護抜きで
レベル14 HP135 SP36
攻撃力10
防御6
素早さ6
賢さ3
耐性4
運9
となった。ジヴァニアの加護があるのでこの数値から各2倍。
おかげで金も溜まった。銀貨5枚と銅貨21枚。軽貨121枚。
女将に言って両替をしてもらい
銀貨8枚、銅貨3枚、軽貨1枚となった。
うーん。ここにダイブして5日、手にした金は8万と少々。
8時間労働として40時間で8万。時給2千円。
いいじゃないか!・・・いいのか!?
いや!いい!だって現実世界では時給2千円なんて
ちょっとキツイ労働だ!いや、今もきついが。命がけだし。
というか、レベルが上がりにくくなっている。
確かにレベル14とかだとすでに次の街に行ってる頃だ。
本日最後の依頼を終えてギルドに戻る。まぁ宿屋なんだが。
「お疲れ様。あんたすごいねぇ。ほぼほぼ溜まっていた依頼が
片付いたよ。ありがとう」
女将にそう言われ照れくさくもあった。今日の夕食は
ちょっとサービスして豪勢にしてあると言われた。
「おお!冒険者の兄さん!もしかして明日、この村を出るのかい?
だったら何かおごるぜ!儲けさせてもらったしな!」
解体屋の兄さんが酒を片手に寄ってきてなんやかんや注文してた。
他にも薬屋や日用雑貨屋も居た。
「あんた!変な草が混じってたよ!薬草じゃなかったしね。
がはははは!」
「いい首輪を仕入れたんだ。これくれてやるから、雪丸ちゃんに
付けてやんな!今付けているのは貰っとく。」
「おいおい!それ売るんじゃないだろうな!」
「売るに決まってるじゃないか!がはははは!」
凄く楽しい。ゲームでは味わえなかった感覚だ。
そうだ、みんな生きているんだ。NPCじゃないんだ!
俺だって生きている。雪丸もジヴァニアも。
次の朝、朝食を食べていると女将が話しかけてくる。
「助かったよ。本当に。こんな辺境の村じゃ冒険者なんて
なかなか来なくなったからねぇ。」
やばい。後ろ髪引かれる思いだ。
10年もたつとMMORPGなんて過疎になっていく。
10年15年続くのはよっぽどのゲームだ。それにくわえ
これはもうゲームじゃなくなっている。新規参入なんて
絶望的だ。だって日本に隕石が落ちたのだから。
「大丈夫だって!なにかあったらキョークを呼べばいいじゃない!
私も雪丸もこの村の為ならどんなに遠くても来るわ!」
おお!ジヴァニア!なんていいことを言うんだ!・・しかし
どうやって遠くの俺を呼ぶのだ。
しかし俺はその一言に相槌を打った。
その一言をきいて女将が「ちょっと待ってて」と言って
奥へ引っ込むと、数分後になにやら手に持って戻ってきた。
「受け取んな!あんたにくれてやるよ!どうせ使う者は
いやしないんだから!」
そういうと机の上にドスンと置いたモノ。それは。
・皮の胸当て
・盗賊のバンダナ(因みに激レア)
・皮の急所隠し
・布のタイツ
・皮の手袋
だった!だったのだ!
おいおいおいおい!合計銀貨20枚は行くぞ!ってか
激レアさんもあるじゃないか!
俺はさすがに貰えないと断ったが
「頼むから貰っておくれ。どうせ使わないんだ。
使う奴が居ないんだ。そのかわり、何かあったら。
いや、何かなくてもたまには顔を出しな。それと交換だ」
俺は動揺した。やばい、なんだこの気持ち。
あれ、泣きそうだ、俺。
現実世界、いや、元の世界では5時間バイトで残り時間は
引きこもりだった。人と絡むことはほとんどなく。
なんだこれ。何かこみあげてくる。ヤバい、俺泣いている。
笑いながら泣いている。
こんなことは今までなかった。
俺は思う。どっちが!どっちの世界が人間らしいんだ!
こっちの方が!暖かいじゃないか!
人の為に何かをやり、人の為に何かを返す。
向うの世界の人間が忘れた気持ちじゃないのか!それがここにある。
俺は泣きながら言った言葉は一言だけだった。
「ありがとう」の一言だけだった。
「何泣いてるんだ!冒険者が!それも男が。みっともない。
こんなもん、いただくぜ!っていって貰えばいいのよ!」
女将。それ以上言わないでくれ。涙が止まらない。
俺は女将の前で装備を替えた。一つ一つゆっくりと装備していく。
似合うだろうか。と女将に聞いたら。
「あんた、装備の仕方へたくそだねえ」
と言われた。女将は盗賊のバンダナを付けなおしてくれた。
そして名残惜しいが俺達は北にある街を目指す。
そこはレベル30までは拠点に出来る街だからだ。
店も何もかもほぼそろっている。様々なギルドもある。
このゲーム。いや、もうゲームと言うのはやめよう。
この世界で必須級の料理、錬金ギルドがある。
俺達は村を出る。
振り返ると多くの人が俺を見送っていた。まじか!
おれは思いっきり手を振った。向こうも手を振っていた。
駆け足で進んでいく。
なんか!すごく気持ちがいい!
街に向かう途中、1日だけ夜営をした。
雪丸の「警戒」のおかげで、というか雪丸が
夜番をしてくれたので結構安心して過ごすことが出来た。
余り寝ていないが、それでも過度な緊張をせずに過ごせた。
街が見えるまでに結構な数の魔獣を倒した。
おかげでレベルが上がった。
防御は貰った装備のおかげで付加できるので今回は
賢さと攻撃力に振った。素早さは盗賊のバンダナの効果があるので
装備で+10上がる。
現在のステータスはジヴァニアの加護抜きで
レベル15 HP142 SP39
攻撃力12
防御6
素早さ6
賢さ5
耐性4
運9
となった。ジヴァニアの加護があるのでこの数値から各2倍。
そしてうれしい事にパッシブスキルが閃いたのだ。
残念ながらクリティカル率ではないが「精度」と言うモノだ。
数値には表れないが今後役に立つモノだ。
敵が強くなるにつれ動きも早くなり、攻撃がミスになる事がある。
それを補うパッシブスキルだ。ありがたい。
街に近づくにつれ大きさが実感できる。
「大きな街ね!おいしいもの沢山あるかしら!」
太ってしまえ。
門に近づいた所で一旦、雪丸を影の中に入れた。
門番の人に冒険者カードを見せる。
そして通行税を払う。カードのおかげで銅貨1枚で済んだ。
まずは宿屋だ。確か南の方と北の方に1軒づつあったはずだ。
俺は迷わず南を選んだ。安いからだ!安い理由は色々な施設から
離れているからだ。しかし。南の門に近く、狩りに行きやすい。
冒険者ギルドは街の中央にあるのでどっちでも問題ない。
レベル25くらいまではこちらに居て、その後北の宿に移る。
北の宿屋の周辺には各種ギルドがあるからだ。
俺は色々と頭の中であれやこれやと今後の事を考える。
とりあえず南の宿に4泊5日する事にし、宿代銀貨3枚を払った。
まぁ食事付きなのでこんなものだ。
因みに眷属も出入り自由だったので雪丸を呼び出した。
夕飯まで少し時間があるので俺達は街に繰り出す事とした。