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サブキャラでReスタートの俺  作者: 加納 美香
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第88話 女将、吠える。

再度、指示があるまでは武力による解決はしないように伝える。

魔王領に帰ったら先代の事も詳しく聞こうと思った。

いいやつだったんだろうなぁ。


俺達はエルフの里へと向かう。

・・・はぁ。なんて言おう。エルフ達はともかく、女将たちは

ドン引きするんだろうなぁ。


あぁ、見えてきた。エルフの里の門だ。

門番が慌てて中に入っていった。リルさんを見て長に伝えに行ったんだろうな。

俺達が門の所に待って・・・待ってたのは俺だけだった。

リルさんは平然と中に入っていく。因みにリュウも。


俺は慌てて後について行く。コレが今の魔王だ!どうよ!

向うからどう見ても慌てながら長とマキナがやってくる。

マキナこっちに居たんだ。


「こ、これはリリス様。・・・でいいのでしょうか?人族の姿ですが。

 い、いいんですよね!?リリス様と呼んで!」


だーめだ。長はテンパってる。

マキナはその横で・・・なんと。


「リリス様ぁ!お久しぶりですううう!珍しいですね、魔王領から

 出てくるなんて!というか、人族の姿なんですね。素敵です!

 あ、そうそう!今米作ってるんですよ!ん?どうしてキョークさんと一緒?」


マキナよ。お前の存在が有り難い。

リルさんをちらっと見ると、笑顔!


「マキナ、久しぶりね。今日はいろいろと伝えたいことがあって来たのよ。

 キョーク様に言われて米作ってるの?いい事ね。後で食べようかしら。」


リルさんがそう言うとマキナは大喜びで「今行こう!すぐいこう!」

とリルさんの手を握り茶華飯店へと連れて行こうとしている・・・。


「やめなさい!マキナ!リリス様がお困りだろうに!」


長は・・・汗びっしょりだ。


「いいですよ。行きましょう行きましょう。その茶華飯店へ」

リルさんはそう答えながらマキナと歩いて行く。

長よ、胃が痛いだろう、わかるぞ、うん。


俺達は茶華飯店でメニューを見ながら・・・座っている。

俺、長、マキナ、リルさん、そしてリュウ。


「おすすめある?マキナちゃん。」

リルさんのその問いにマキナは

「焼きおにぎりとキノコの炒め物定食が一番のお勧め!

 卵焼きもおいしいんだから!ぜひ食べて!」

リルさんが微笑みながらそれでいいと言うと笑顔でマキナは

注文している。俺はクロブーの香草炒め定食。リュウは牛丼。

長は・・・お茶でいいと言った。


「で、リリス様!お話って何?」


マキナの問いにリルさんが「実は・・・。」というが俺は

それを遮る。こういうことは俺自身の口で言いたいと伝える。


「長、そしてマキナ。聞いてくれ。」俺はまずそう言う。

そして俺はまず、この世界に来た時から話をする。メインの体ではなく、

このキョークの体に魂が入った事。俺には本当の体があり、

いや、コレも本当の体だけども。しかし、魂は一つ。

今の体、キョークは皆の知っている人間。しかし、メインの体は。


魔王だ。


長とマキナは沈黙する。

そりゃそうだ。なんかだましてたような気がして俺も俯く。

「まじかぁ!すごいすごい!キョークさんは何かあると思ってたんだよね!」

マキナのその言葉に俺はハッとし、顔を上げる。・・・え?


ドン引きするんじゃないの?

長を見ると驚きの顔。うん、こっちの反応が正解だよ?マキナ。

しかしすぐに、長は椅子から立ち上がり、そして片膝をつき拝礼する。

「キョーク様、いや魔王様。今までの無礼申し訳ございません。

 なにとぞ、なにとぞ、ご容赦を」


俺も席から立ち上がり、長の手を握り立ってもらう。


いや、俺こそ黙っててごめんなさい。・・・そう言うと


「そこは『すまぬ』でいいのですよ?キョーク様」

リルさんが微笑みながら言ってくれる。


「ご飯来たよー。食べよう食べよう!」

マキナよ、お前の存在が有り難い。食事をとりながら、長は話す。


「先代の魔王様にもよくしていただきました。今思えば、キョーク様。

 いや、魔王様と呼べば?」


俺はこの姿の時はキョークでいいよ?と言う。因みに『様』付けなくて

いいからと、先回りして言う。


「キョークさ・・・・んがいろいろして下さった事を今思えば

 この里に対して、本当によくしてくださったと思うのです。」


いやいや、俺は只、米農場を作っただけだから、と言うと。


「いえ、若いモノ達の雇用を考えれば。働くという事を考えれば

 今後のエルフのモノ達の在り方を考えてくださったのだと。」


俺はその事について頭を下げた。今後、米の買取は出来ないかもしれない。

そう伝えると。


「いえ、実はこの国での流通が格段に多くなりまして。

 今までは各里単体でに取族相手にしていましたが。お互いの里同士で

 やり取りが出来ているのですよ。それはもう通貨が必要なほどに。」


え?今まで物々交換?と聞くと長は頷く。そして通貨を使うのは

人族に対してのみだったとも言われる。


「人族の通貨があってもなかなか使い道が無くて。

 実際的に人族の何かを買う事はほぼないものでして・・・。」


少し困った様に長は言ってきた。挙句の果てに俺にやると言ってきた。

受け取れないと、勿論断った。いつか使い道があると言い・・・。


俺達5人は出された食事を平らげる。


「そうかい。村長は魔王だったんだね。私は拝礼をした方がいいかい?」


後ろからの声。・・・女将の声だ。俺は振り向くことに躊躇した。

人族にとって魔王は敵だ。というか、魔族も敵だ。

俺は固まっていたが。意を決して女将の方に振り向く。


そこには笑顔があった。なんで!?

俺、人族の敵の魔王だぜ!?なんで俺を見てそんな笑顔なんだよ!


「私、おかしいのかな。ここに来てさ、エルフさん達に良くして貰って。

 思うんだよ。種族ってなんなんだろうって。自分と違うモノを敵視しているのは

 人族だけなんじゃないかなぁ、って。この亜人の国は魔王領に庇護して

 貰っているのも聞いた。人族の今までの行いも聞いた。

 最初は信じられなかったけど。」


俺は女将の話を・・・黙って聞く。


「私は村で冒険者ギルドもしていたでしょ?確かに亜人の国へ行く依頼とか

 あったんだよ。何かを取ってくる、とか。今思うとさ、それって

 泥棒だよ、まったく。他にも王国に亜人が攻め込んでくる!だから

 先手を打て!とか。本当に、今思えば一度たりとも亜人の人達が

 悪さをした事なんて・・・無かったのにさ。勿論、私の村には?だけど」


俺は女将の話を・・・黙って聞く。


「魔王が誕生した、と聞いて大変なことになるって思ったよ。でもさ、

 思えば今まで魔王が何かをしてきたなんて無かったんだよ。

 『人族が襲われる』という噂だけだった。今までも。

 だから言うわ、キョークが魔王って最高じゃないの!流石、私達の村長!

 私達は見る目が合ったって事よ!」


あれ?なんだ?俺泣いている。

魔王だよ?人族の敵だよ?俺。


「なにいってんのよ!魔王の前にあんたは私達の村長じゃないの。」


その女将の笑顔が・・・ありがたかった。


「ほかの皆の所に行って同じこと言うんでしょ?私も行くわ。

 もしも嫌なこと言う奴が居たら、私がぶっ飛ばしてやるからさ。」


そういうと更に女将は笑う。


「そのペンダント、付けてくれているのね、ありがとう」


そういうと女将は片膝をつき俺に拝礼をした。

俺も膝をつき女将の手を握る。

その後、俺達は全員で米農場に行く。


女将は村からやって来た者を呼び集めた。勿論、ダンもだ。

「聞いとくれ!私達の村長が大出世だよ!」女将は腰に手をやり叫んだ。

おいおい、出世ってなんだよ・・・。


「いいかい!?村長は今から魔王様だ!文句ある奴は居ないだろうね!

 文句ある奴は私の前に出て来な!」


女将の迫力ある言葉、それに突然の魔王と言う単語に全員がキョトンと

している。そりゃあそうだろう!



一時して、ダンが・・・真顔で歩み寄ってきた。それに釣られるように

解体屋も、薬屋も・・・。

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