第82話 様々な過去
その日はまだ体調がすぐれないと伝え。私は寝室に籠る。
話を精査するに、この体の持ち主のリスボアは皇国の王だ。
毒による暗殺により・・・多分、死んだ。
そこにどういうことか知らんが私の魂が移った。
そしてイザナミ、アマテラスやヒルコも魂が移った。
しかし、イザナミは勾玉に魂を感じる。
何故かは知らない。
とりあえず、私はこの国の王として蘇った?のだ。
ならば、王として行動をしなければならないだろう。何故ならば
国が混乱するからだ。国は混乱してはいけない。
だからこそ私は記憶が曖昧という理由に過去の事を色々と聞いた。
話を聞いて考えた。この国の王、リスボアは凄く良い王だった。
人民に好かれ、良い政をし。だからこそなのだろうか。
・・・他の国に疎まれる。そして暗殺をされる。
その国とは隣国の王国。
驚いた事に、この世界には「物の怪」の国があるらしい。
亜人そして魔族。
草原には魔獣なる妖怪が闊歩し、それを討伐する冒険者もいる。
人の、人間の存在にかかわる問題だ。
しかし、この国の者達はそれを受け入れている。
ならば、私も受け入れなければならない。・・・しかし。
こう言う言い方はおこがましいが。私は人を創造した者だ。
ならば、人を守らなければならない。一抹の不安も与えてはならない。
しかし、その前に私を暗殺した王国の者達。
人はどうしてこうも、他者を虐げるのか。
遡っていけば、明らかだ。・・・私達が悪い。そう言った人を
創造したのだから。
この体を手に入れるまでは魂のみで意識はあった。
世の中を見てきた。人々は争い、殺し合う。
そういった定めなのか・・・。悔いた。
私は心に決めた。人間の心を1つにしようと。
1つにする方法はいくつかある。その中で私が選んだのは、
「排除」だ。
そう、以前出来なかった事をする。
何故ならば、昔のやり方で失敗しているからだ。
失敗とは人間同士で殺し合う世の中を作ってしまった事。
それは、全てのモノを平等に救いを与えた事。
どっちにしろ、多くの人は死ぬ。しかし、今からやろうとすることは
昔のように「永遠」ではない。
ドアがノックされヒルコがやってくる。
「イザナギ様、これを。とある部屋から見つかったモノです。」
そう言われ手にした箱には・・・勾玉があった。それを手に取ると
ツクヨミの魂を感じだ。私は勾玉を箱に戻し懐に入れた。
するとすぐに部屋に入ってきたモノが居た。
ステラというリスボアの娘だ。
少しの沈黙の後、その少女は
「まさか、父様もこの世にあらわれているとは。まぁ少しは
感じておりましたが。母様の気配もありますが・・・弱いです。
どこにいらっしゃるのですか?母様は。それにツクヨミも。」
私はイザナミはまだ目が覚めないと伝えた。
何故だろうか、ツクヨミの事はわからないと答えてしまった。
今ではその答えが正解だったと思う。
アマテラスはツクヨミの魂を私が持っている事を知らない。
その後、事あるごとにアマテラス、この世界ではステラだ。
私のやる事に異を唱えだしてきていた。
勿論、アマテラスは全てのモノを、全ての生き物を平等にとの
考えを持っていた。そう、物の怪たちもだ。
私も見てきた。アマテラスも見てきた。人間同士の殺し合いを。
・・・殺し合ってはならないのだ、創造した者としては。
ならば、明確な敵として捕らえた方が人間にとって良い事なのだ。
・・・人間が人間の敵になってはならない。
娘とは相いれなかった。いつしか、この城から抜け出し、別荘で
暮らすようになった。世間体的に私はとやかく言わなかった。
そもそも、やり合うつもりはなかった。あいつは強い。
私よりも強い。・・・しかし、イザナミよりは弱い。・・・と思う。
私がこの世界について色々と学んでいると
凄い力を感じる人間が現れた。この世界で出合った人間とは別物だ。
果たして人間と言っていいのかすらわからないほどに。
驚くことにそのモノは天叢雲剣を持っていた。本人は草薙の剣と言っていたが。
実際、剣の名前などどうでもいい。まさかスサノオの生まれ変わりと思ったが
違った。そのモノは妖精なる小さな生命体を連れていた。
余りの強さに私は驚愕した。人が、人間がここまで強くなるのか!と。
私と同等かそれ以上だった。単純な力比べだと勝てないだろう。
そのモノは霊力に似た力を持っていた。この世界で言う魔力だ。
私は礼を尽くしそのものを迎えた。
・・・勿論、この者を使い私を毒殺した王国を潰すためにだ。
彼女には可哀そうだが国王殺しの汚名を被ってもらおうとしたが・・・
なぜか「皇国の化け物」として英雄視されてしまった。・・・よくわからん。
しかしすぐに代わりの者が現れた。ユキと同じく妖精を連れていたが
・・・凄く弱い。だが、だからこそ使えるのだ。
彼は予定通りの行動をとってくれた。
しかし、彼らは一体、どんな存在なのだ。人間と言えば人間だが。
他にも数人確認した。一人は流れの冒険者だった。
もう一人は料理人の様な存在だった。しかし、ある程度の強さは持っていた。
料理人ですら、この国の近衛兵長を超える力だ。
その料理人の所にステラは頻繁に通っていた。
多分、仲間を増やし、私と対峙する為だろう。
やはりと言うか、ステラがこの国を出た後にミツルという流れの冒険者と
この国を出て行方不明になってしまった。足取りすらわからない。
この、私達の力をもってしてもだ。
不穏な存在は多い。しかし、優先する事を間違ってはいけない。
最優先事項はイザナミを、私の妻を生き返らす事だ!
そして今、私は妻の手を握る。そして祈り、誓う。
「必ず生き返らせる」と。
★★★★ドワーフの里への道中★★★★
ユキ視点
アマテラス。神話に出てくる中ではトップクラスの『神』だ。
私は今、その神と一緒に旅をしている・・・。
これこそ!私が求めた異世界転生!・・転移か?どっちでもいい!
私は今、最高に有頂天だ!・・・日本語があってるかは知らん。
「ねぇ、ユキ。お腹すいたんだけども。かつ丼作れる?」
しかし、これほどまでに神とは「ただのお隣さん」的なものだったのか?
親しみやすいと言えば聞こえはいいが・・・タダの同級生的なノリだ!
・・・そう、同級生。
私は・・・学校には行っていない。いかなくなった、が正しいか。
私は性格的に人とかかわるのが苦手だ。人の顔が怖かった。
笑った顔、怒った顔、無表情な顔。全てが怖かった。
しかし、ゲームは違った。相手の顔は見えないからだろうか。
でもチャットは苦手だった。創造してしまうからだ、文章で。
「今何やってんの?一緒に洞窟潜る?」
その一言も怖かった。
私はほぼ定型文だった。でも、それでもよかった。ゲームの世界は
自由だったからだ。私のやりたいようにやっても問題なかった。
フレンドは作らなかった。最初はボッチで色々な事をした。
24時間と言ったらいけないが18時間は毎日ゲームの中だった。
ある時、ひょんなことからPvPの大会に出たら優勝してしまった。
それからは負けたことはなかった。危ない事は何度もあった。
毎回、3回戦で当たる女剣士。私的には本当にギリギリの戦い。
周りは私の一方的な勝利と言っているが・・・そうではない。
運。
ただ私にそれが良かっただけだ。
彼女は強かった。毎回当たるのが怖かったほどに。
しかし、この世界に来て驚いた。彼女は、いや彼はレベル1で
この世界に来ていたからだ。・・・笑った。まじで。
そう、この世界に来たのは隕石が落ちる日、私がゲームをしていたからだ。