第8話 金とやれる事を天秤にかけてみた。
魔獣 キラー・バタフライ
日本語で言うと殺人蝶々。
ちなみに、画面の向こうから見ていたが、でっかい蝶々。
先に進んでいる雪丸が喉を鳴らす。
うわ!めっちゃいる!ぱっと見、10匹程度。
思ったよりも小さいが、それでもデカい。横幅1メートルって所か。
うーむ、蝶々というよりも・・・蛾だ。
宙に浮いているので雪丸の攻撃が届かない。
蛾が攻撃を避けるために高度を取っている。そして結構早い。
雪丸に意識を取られている1匹を狙い連射を使う。
やはり、ジヴァニア効果か、連射1回で煙となった。
続けて2匹を撃ち落とした時に、背中に激痛が走る。
蛾が体当たりをしてきた。めっちゃ痛い!転げまわるほどに!
HPが相当減った気がする。そりゃそうだ、ほぼ防御力にポイントを
振っていないからだ。挙句に少ししびれている。あー。
この蛾は特殊効果で麻痺を持ってた気がする。気がするというのは
メインではほぼ攻撃を食らってないからだ。1~2回ほどしか。
地べたに転がりながらもなんとか動くので仰向けのまま矢を放つ。
これで4匹。そして雪丸が俺を襲おうとしていた蛾に「餓狼」を叩き込む。
今度は2匹が同時に俺に襲い掛かろうとしたが、その瞬間を狙って
雪丸が攻撃をする。これで7匹。
未だに寝転がっている俺だが、いい感じに囮になっている。主人公なんだが!?
連射を使い2匹を仕留め時に、雪丸も1匹を仕留めていた。
「なんとか全部片づけたわね」
ジヴァニアも囮になって雪丸の攻撃の届く距離まで誘導していたらしい。
いや、俺を狙ってたから・・・。
辺りを見ると蛾のドロップの蝶の羽根が3個落ちていた。
メインでも拾ったが、これ・・・、何に使うんだったっけ。まあいいや。
と言うか同時に落ちた軽貨は1匹につき2枚。1匹200円と言う・・・。
とりあえず、10匹は倒したのでギルドへ戻った。
俺は女将に、魔獣討伐の証はどうやればいいの?と聞いたら
「蝶の羽根2枚よ。大体、5匹で1枚落ちるのでそれが目安ね。
何枚あるの?」
と聞かれたので、素直に3枚と答え、渡した。
「すごいわね、15匹くらい倒したのね」
と言われたので、「はい」と答えた。ごめんなさい。俺、嘘つきです。
なんと銀貨1枚と銅貨5枚貰った。
次の依頼を行うために依頼書を見ると
魔獣 アンデッド・ドッグだった。
そういえば「犬のあばら骨」を2個持っている。
コレで行けると思ったら、案の定行けた。
「すごいわね!10匹くらい倒したの?」
と言われたので「はい」と答えた。
こちらは銀貨1枚貰った。とりあえず今日は斬り上げる事にした。
キラー・バタフライ、いや、蛾の討伐中にレベルが上がったので
部屋でポイントを振る。レベル12からは4ポイント振れるので
今回は防御に2、そして耐性に2振った。
マジで痛かったから。うん。
現在のステータスはジヴァニアの加護抜きで
レベル12 HP110 SP32
攻撃力10
防御4
素早さ6
賢さ2
耐性3
運5
となった。ジヴァニアの加護があるのでこの数値から各2倍。
アンコモンの弓も熟練度がいつのまにか+5になっていた。
武器だけで攻撃力+6の恩恵。これにもジヴァニアの加護が乗る。
まじでジヴァニア有能。レベル12なのにすでに攻撃力が32!
予定変更。レベル15までは攻撃力に振らず運を中心に振る。
多分、ドロ率に影響するからだ。あと、スキル。
未だに、連射以外閃いていない。
「ねえ、いつまでその服着てるのよ。いい加減、別のにしたら?」
ジヴァニアがなんか呆れたように言ってきた。仕方ないじゃない!
だってドロップしないんだから!皮の服とか!そんな冒険者っぽい奴。
と言ったら
「買ったらいいじゃない」
と言われた。あああああ。確かに。すっかり失念していた。だって
メインキャラの時はほぼドロップで賄えてたし。武器屋と防具屋なんて
一度のぞいただけで買った事もなかった。
確かにこれだけドロップしなければ買うのもありだな。
俺達は女将に防具屋と武器屋の場所を教えてもらい買いに行くことにした。
因みに武器屋と防具屋はこの村では1軒しかないそうだ。
ドアを開けて中に入ると色々並んではいるが。うーん。
こんなのに金払いたくないな、という代物ばかりだった。
ってか!皮の胸当てが銀貨3枚!?3万円!?
なんだろう、この衝撃は。ゲーム、いわゆる画面越しでやってると
銀貨は只の数値だったのでリアルな金としての意識が無かった。
しかし、今は労働の対価として貰っている。だからなのか、
金銭に敏感になっている自分が居る。
因みに皮の・・・急所を隠す奴は銀貨4枚だった。
上下合わせて7万円。現実世界では相当の服が買えるぞ。
諦めた。だって金が無い。全財産は銀貨3枚、銅貨12枚、軽貨82枚だ。
1度の食事で銅貨約2枚減るのでやっぱ、装備はドロップ狙いしかない。
そもそもだ!皮の胸当てとか皮の急所隠しなんて初めて見た気がする!
ちょっと早いが女将に言って夕食を準備してもらう。
今日のメニューは黒パンと鬼豚の肉を使ったソテー。そして
なんか、色鮮やかなキノコのスープだった・・・・。
ジヴァニアの為に軽貨5枚使ってフルーツサラダを頼んだ。
折角なので雪丸の為に鬼豚のステーキを頼んだ。
部屋に帰り、色々と初期の頃を思い出す。
メインの時はボロボロとドロップした覚えがあるからだ。皮装備が。
何故落ちないかと思っていたら。ふと閃いた。
そうだ、時間だ。画面越しでは敵をクリックして攻撃する。
倒すまで2秒。しかし今は30秒前後かかっている。
約15倍!そうだ!的を倒す時間が15倍かかっているからだ。
移動もそうだ。2分の所を30分かかっている。
レベル12にになるまでほぼ4日かかっている。
画面越しでは1日だ・・・。さて、どうしたものか。
効率を考えれば、少し無理をしてでも北上して次にある街に
向かうべきだろう。レベル12なので問題ないだろう。
ジヴァニアの加護と雪丸もいる。しかし、折角払った3泊4日分。
勿体ない気がする。あと1日泊まれる・・・。
決めた。残ろう。女将の言った「冒険者が居ない」の言葉が
心に引っかかっている。
俺が出来るだけの事はやろう。と思った。
俺は可能な限り討伐系の依頼を受け、この近辺に出る魔獣や
野獣を討伐することにした。レベルも上がるし。
金なんてどうにかなるだろう。
みんな生きているんだ。
自分がやれることで皆が楽が出来るのならばやろう。
そうやって世界は回るモノだ。