第78話 女子トーク?
本来の姿を映す鏡。
もしも、体を写したならば、魂が映るかもしれない。
しかし、この世にあるのだろうか。私はユキにそう言った
アイテムを知っているか聞くと、聞いた事がないと言われた。
「作ればいいんじゃない?」
そりゃそうだ。問題は私の霊力を受け止めきれるかどうかだ。
ユキの言う通り作ればいいのだが。いや、作れればいいのだが。
「それって銅鏡なの?」
私は首を振る。黒い鉄で作った鏡。
ついでにこの世界で黒い鉄はあるのかユキに尋ねると・・・。
「あるわよ?ドワーフの里の近くの鉱山から取れるのよ。
少しなら私も持ってるわ。これでしょ?」
ユキから受け取った鉄は紛れもない黒い鉄。しかし、原石だ。
・・・あ、そうか。ドワーフに作ってもらえばいいのか。
次の行き先が決まった。
ドワーフの里だ。
★★★★エルフの里★★★★
あれから3日が過ぎた。村人たちはダンの所で
住み込みで稲作を手伝っている。皆結構馴染んでいてる。
俺は、って言うと。残念ながら寝ては食べて、寝ては食べるだけ。
あの村の人達がたくさん死んだ。
追ってきた人間を惨殺した。
この村に着いて、そう言った現実を冷静になって考える様になって
こんな感じになっている。
誰もが「お前のせいじゃない」と言ってくれる。
俺のせいじゃなかったら・・・いいのか?
そうじゃないだろう!
どんなことだってそうだ。
「キョークさん?気分転換にどこかへ行きませんか?」
イブさんとリャナさんが俺の所にやってきてそう言う、と同時に
布団を引っぺがした・・・。
「認めればいいんですよ。そして今から何をするかを考えれば
いいんです。その何かとは、やはり自己満足でしかないかもしれません。
しかし、ほんの少しでもやった事に対して「報いる」とすれば
いいんです。それが正しかろうが間違ってろうが。
他は非難するかもしれません。応援するかもしれません。
そもそも何が正しくて何が間違ってるなんてその人の気持ちなんですから。」
と、イブさんは優しい声で言いながら。魔族が人間らしいことを
言っている・・・。ん?まって?
人間らしさとは何なのか。らしいとは?
人間らしくない、魔族らしくない。
そのらしさは誰が決めたんだろう。
ゲーム的に言ったら『設定』だ。
人間は優しく助け合ってみんな仲良く・・・と言う設定。または思い込み。
魔族は他者を殺したり何かを破壊したり・・と言う設定。または思い込み。
俺は思う。
もしも、その『設定』がなかったら。
今までこの世界で体験してきた事を考えれば・・・明らかに俺は
『魔族』と仲良くしたい。
勿論、嫌な人間ばっかりじゃなかった。それは俺の村人を見ればわかる。
王国が皇国になった今、現在、人族のトップはリスボアだ。
亜人の国のトップは誰なの?各里の長が色々と話し合いで決めている。
実質的なトップとなると司会進行をしている吸血族の長?
じゃあ魔族のトップ、そう、魔王はどんな奴なんだ。現れてから未だに
悪い噂は聞こえてこない。まぁ良い噂も聞こえてこないが。
そもそも噂が「魔王誕生」から流れてこない。
・・・そうだ。会いに行こう。
ここにはイブさんもリャナさんもいる。
俺はベッドから起きながら二人に言う。
魔王に会いに行こう。案内して?会いたいんだ・・・。と。
イブさんとリャナさんはお互いを見てキョトンとした表情をしている。
一時してリャナさんは少し困った顔、そしてイブさんは・・・
凄く嬉しそうに俺の手を握り!
「行きましょう!私達が必ず連れて行きます。いいじゃないの!
リャナンシー!」
リャナさんは困った顔をしていたが、何回か頷き。
・・・自分自身を納得させるために頷いたんだろう。そして
「わかりました。私とニュクスが責任をもってお連れ致します。」
準備はいらない!今すぐたとう!・・・と言ったが二人は
お腹が減ってるので食事をとってからと笑いながら言ってきた。
茶華飯店で食事をとりながら俺は聞いてみた。魔王ってどんな奴?って。
そしたら・・・。
「それはもう惚れてしまいそうな顔立ち。まぁ惚れてますが。
(女性の私でも!女同士なんて関係ないわ!)」
「この世の者とは思えないほどの装備
(あの暁装備はすごく綺麗!)」
「そこに体があるだけで皆が納得する存在感
(お目覚めになってないですが目の保養よ!)」
「素晴らしき発想の持ち主。創造の持ち主
(シャンプーとか冷蔵庫、餃子とか!)」
「そしてなにより!偉そうじゃない!気さくにお話をしてくださる
(普通はこんなに近くで食事取りながらなんて!)」
などなど。うっとりしながら話を続ける二人。
話の半分は食事をもぐもぐしながらだったのでよく聞き取れないが。
そして俺はエルフの長に魔王領へ行くと伝え・・・里を出た。
他の里には立ち寄らない。そう、一気に魔王領を目指す。
勿論、本当の目的地は魔王が居ると言われる『リリスの塔』。
あれ?これほどまでに雪丸って速く走れたのか?
まさに疾走。・・・落ちる!落ちるってば!
魔王領の手前で野営を行う。前回もだったが、綺麗な境目と言うのはない。
柵もない。勿論、門もない。
実質、隣接しているのは亜人の国だ。
勿論、旧王国とも接していると言えば接している。境目には
大きな森がある。ただし、その森には深い断崖があり、幅もある為に
橋を掛けるのはお互いの協力が必要となる。
協力なんてあるはずもないので行き来なんてできようがない。
但しこれは人族だけだ。魔族は・・・飛べる。
もしも一戦交えるとなると完全に魔族が先手を取れる状態。
俺達は勿論、亜人の国からの道のりだ。
すこし雪丸がへばってきたので小休憩を取る。後少しで魔王領となる。
俺達は茶華飯店で準備してくれたおにぎり弁当を食べる。
雪丸はビーフジャーキーの様な保存食。ぶっちゃげワギューの燻製。
そりゃあ旨いだろうな!
イブさんもリャナさんもおいしそうに食べているが・・・。
ふとした疑問がわいた。実際問題としてよ?いつも何を食べてるの?
好きなモノとか?あるの?みたいな疑問。
「あんまり人族と変わりませんよ?野獣の肉とか。野菜とかも
食べますし。茄子とか大好きよ?」
茄子・・・。そう言えばまだこの世界で見ていない。魔王領にあるんだ。
「あれ?亜人の国に卸していますよ?まぁ数は少ないので
よっぽどでないとお目にかかれないですかね?魔王領以外では。」
じゃあ、未だ見ていない野菜とかも魔王領にあるのだろうか。
俺は色々と野菜を言ってみる。
「ピーマンなんて元々魔王領の野菜ですね。実はトマトも。
他にも魔王領が発祥のモノが沢山ありますよ。
そうですねぇ、色がハッキリしているのは魔王領発祥と
思ってもらっていいと思いますよ?」
「そうそう、人族の所とかの野菜は色が薄いのよね。
栄養あるのかしら・・・。」
イブさんとリャナさんはワイワイと話しながらおにぎりを食べている。
「味付けはそれほどこだわりはないですね。だから
キョークさんが絡む料理は好きですわ。食事が楽しみになっちゃう。」
「そうそう、リリスなんて餃子の一件以来、そうとう凝ってるのよ?」
イブさんは笑いながらリャナさんに言っている。
「料理作るの好きだもんね。毎日毎日魔王様の料理を作ってるし」
リャナさんは思い出しながらおにぎりを頬張る。
「ねぇ、知ってる?手が付けられなかった料理とか
マカーブルとかが食べてるのよ?どう思う!?」
イブさんが少し怒りながらリャナさんに聞く。
・・・俺はもしかして女子トークの中に居るのかもしれん。
しかし、魔王って奴は折角リリスが作ったものを手を付けないのか!
なんたるやつだ!ゆるさん魔王!会ったら殴るかもしれん!