第63話 リホの推理
「そりゃあそうだろう、黄龍が人に仕えるわけなかろうて。」
青龍がそう言うと
「いや、我は別段それでもいいのだが。雪丸とも友達だしな!」
黄龍はそう言うと、咆哮に居た笑い声をあげる。建物の壁が揺れた・・・。
「ならば、どうだ?青龍よ。お前がキョークの供をするか?
雪丸の毛はモフモフで気持ち良いぞ?その体の大きさならば
迷惑にもならんだろう。魔力を蓄え、元の大きさにも早くなるのでは
ないか?キョークは強いぞ?・・・多分だが。というのも、
レベルと力がアンバランスなのだ。」
多分かよ!どうせまだレベル90にも届いてねえよ!知ってるよ!
ジヴァニアの加護で盛ってるさ!あーでも青龍の長さは大体、
2メートルって所か。それならば連れて歩いてても問題ない?かな。
青龍さえよければだが。
「ふむ、キョークの眷属となるのか。まぁ別段問題はないな。
黄龍もいままでお前たちといて問題なかったろうし。
では、そう言う事で。よろしく頼む。」
その一言で俺のステータス画面の眷属の欄に青龍が入った。
なるほど、卵もだが、相手の意思があって初めて眷属となるのか。
ということはだ!雪丸が最初に俺を気に入らなければダメだったって事か!?
まじかよ・・・。
「ところでこれから黄龍は?」
俺と青龍がそう問いかけると・・・。
「少しこの世を見てみようと思う。まぁよほどの敵でない限りは
問題ではないと思うが。ユキが二人いれば負けるだろうな!はっはっは。」
はっはっは、じゃねえよ。ユキさん一人なら勝てるって事じゃねえか。
変化したばかりだからレベル1のくせに。
俺の表情を見て、黄龍が少し笑った気がした。
「ならばユキよ、我と試合おうてみるか?」
ユキが草薙の剣を抜く。
黄龍が構える。
両者とも動かない。
先に動いたのはユキさん。・・・その動きは只、剣を鞘に仕舞った。
「多分、勝て・・ない。勝て・・ない試・・合はしな・・い。」
まじか!
「良きかな良きかな」
黄龍はそう言うと笑う。
わかった・・・。大幅に黄龍が強いので俺の眷属から離れたのかも
しれない。・・・かもしれない。
「そうだな、我を探す時は青龍に聞けばよいだろう。大まかな場所は
解るかと思うぞ?では我は行くとしよう。あぁ、そうだった。
魂の転写は、まだ出来んぞ?魔力も何もかも足らないのでな。
その内、出来るようになるだろう。元々、向こうの世界で
そりゃあ大量の魂を転写したのだ、この世界に。
そりゃあ卵になるわな!はっはっは!ではまた会おうぞ。」
黄龍がそう言うと青龍はウンウンと頷く。ちょっと可愛い仕草だった。
え!?向こうの世界!?魂!?転写!?ちょっと待って!
そこはキチンと話すところでしょうに!・・・と思っていたら!
天井をぶち破って、金色の光と共に飛び去って行った。
俺達は呆気にとられ、そして考えていた。この世界に転移してくれた
モノの正体は黄龍だった事を。
「そんな気がしたのよねぇ。ワタシは!」
今頃うるせえ!ジヴァニア!
・・・そうか。俺達の魂を救ってくれたのは黄龍だったのか。
今度会ったら、きちんとお礼を言おう。そう心に誓った。
そして俺達は奥の扉から転移陣を使って外に出た。
俺は遠くを見ている。・・・多分、あっちの方向だ。
そこにリリスの塔がある。そして俺のメインの体がある。
・・・このままいきたい。ユキさん達の力を借りれば
たどり着けるかもしれない。しかし、たどり着いた所で魂の転写は
出来ない。ならば、今は帰ろう。人に頼らずに自分の力で
そこに、その場所に行ってやる。
そして俺達は一度、皇国のリホハウスへ帰る事にした。
★★★★魔王領 リリスの塔★★★★
~マカーブル視点~
リリスの話では、再度魔王様が体を起こしたそうだ。
そして、また倒れた。勿論、我がベッドまで運んだ。大やけどだ。
アノ装備脱いでくれないかなぁ・・・。
リリスが作った餃子なるモノを食べて、そして目が合う。
リリスが跪き、挨拶をする途中で・・・。
このまま、今の体を・・・倒すか。そうすれば、魂が魔王様の体に
蒸着するのではないだろうか。倒したところで、後で言い訳をするか。
その方が手っ取り早いと思うのだが。リリスとニュクスがその対応に
猛反対しているのだ。あくまでも平和的に迎えたいと。
あとどれくらい待てばいいのだ。
ついこの間、皇国の化け物と仲間になり、ヤマタノオロチの洞窟へと
魔王様は向かった。・・・そして倒した。
そしてその後も、突然に出現した山を登り。・・・魔王様は、
金色の光を纏った「強さと言う概念」では測れない何かを解き放った。
偵察に行った時には何もなかったはずだ。
魔王様は一体何を考え、何をしようとしているのだろうか。
そもそもだ!自身が魔王という事を未だに気づかないのか!
いや、そんなはずはない。すでに2回もこちらに来ているのだ。
「あれ?なんか、魔王の城っぽくない?ここ。」
くらいは思っているだろう。リリスの話では
魔王様と言いかけている途中で倒れたそうだ。
「ま」まで聞いたのか「魔王様」とハッキリ聞いたのかはわからないそうだ。
しかし、ここの雰囲気で「ま」だけだとしても気づくだろう。普通は。
さて、どうしたものか。それとは別に気がかりもある。
魔王様がヒイガワの洞窟に入り、一時してから感じた、明らかに
「敵」と認識できる気配。
遠い昔、そう、文献では人族の上には神族と言うモノが居たそうだ。
確かに、ヤマタノオロチの中ボスに・・・いたが。
そこまでの魂魄と言うか、魔力は感じなかった。いや、神族的には
霊力と言うのだろうか。確実にスサノオは倒されたはずだ。しかし、
この不安感はなんなんだ。生きている、とまでは言い切れないが・・・。
何処かに居る、という気持ちが拭えない。
そして、人族の王国しかり、皇国しかり、どうもきな臭い。
魔王様が現れて、異様なほどに変化が大きすぎる。
魔王様が復活されたと同時に現れた?神族が?いや、神族に
なったと言うべきなのだろうか。
あぁ・・・いつもそうだ。平和を乱すのは人族だ。
なんであんな生き物がいるんだ。
我々魔族は文献的には吸血族の上位種、魔王様は我々の上位種。
人族の上位種が神族ならば、その上位種とは・・・なんなのだ。
勇者?ないな、あんなもんは人族と神族の中間に位置する神族の
「ぱしり」だ。じゃあなんなのだ・・・。
そう言う事も含め、調べてみるか。その方が魔王様が完全に復活された時
動きやすいと言うモノだ。
我はヴァスキに声をかけ、諜報を依頼した。特に王国。
グルルにも声を掛けた。諜報先は特に皇国。
アノ金色の光、あの生物については・・・。クドラクに頼もう。
★★★★皇国 リホハウス★★★★
一週間を掛けて皇国のリホハウスへと帰ってきた。
そこで俺はレベルアップ時のステータスを振る。
レベル88 HP832 SP222 MP189
攻撃力110
防御55
素早さ89
賢さ65
耐性60
運55
これにジヴァニアの効果でステータス2倍だ。いい感じだ!
この後は素早さを中心に上げて行こう。・・・そう、ユキさん対策だ。
まぁこの世界で戦う事はないだろうが、やはり勝ちたい。
もしかしたら?武道会とかある・・・かもしれないし?
「あら、お店に来ればよかったのに」
結構遅くまで店をしているんだなぁと感心しながら、
今回のお土産を渡す。
豚骨スープ用の骨、その他にもいろいろと。
そして俺はヤマタノオロチとスサノオの神話について聞いてみた。
やはりというか、リホさんは「そこまで詳しくないけど」と
前置きをして話してくれた。そしてスサノオに言われたことを伝えると。
「実際、草薙の剣はヤマタノオロチから出てきたのよ?
その天羽乃斬はスサノオの武器よ?草薙の剣に
ぶち当たって欠けちゃったのよ。因みに草薙の剣の別名は
天叢雲剣ね。」
ふむふむ。
「でもその勾玉はなんなんだろうね。青龍が魂魄を感じるって言ったのよね。
魂魄って魂ともとれるし。推理だけど、多分。
スサノオの仲間の魂じゃないかな。黄龍も必要なんでしょ?
多分、この推論はあってると思うのだけど。」
俺は聞く。じゃあスサノオの仲間って?・・・と。
リホさんは言う。
アマテラス
ツクヨミ
イソタケル
ヒルコ
あたりかな・・・?と。