第62話 黄龍
「さっきのなんだったんだ?何かイベントの始まりっぽかったな」
が、ミツルの感想。そのミツルはドロップした両手剣に
ほおずりしている。頬が切れろ、斬れてしまえ。
しかし、勾玉はドロップしている。ユキさんが持っているが。
黄龍もわかる。まだ成長していないが俺の元に応龍が居る。
わからないのは天羽乃斬だ。・・・なんだそれ。
向うの世界だったらスマホでの検索で一発だったのだが。
なんなんだろう。読み方から考察する。アメ、そしてハハキリ。
俺が想像したのは「千歳飴」だ!子供の為に長ーい飴を
母ちゃんが切るから、アメノハハキリ!・・・どうよ!
ミツルからは「絶対にない」と言われた。勿論、ユキさんも
首を横に振る。
「多分、草薙の剣、黄龍、勾玉から推測すると、伝承とか
神話とか、そういった類の中に出てくる何かの道具か武器や防具。
そんな感じなのかな。」
普通に俺達と喋れるようになったユキさんが的確なことを言う。
「それ、多分、武器ですよ?書物庫で読んだことあります。
アメは天空の『天』、ハハは羽根の『羽乃』、キリは『斬』と
書くはずです。で、天羽乃斬。しかし、草薙の剣より数段
劣るはずですが。それと・・・、気になる事が。」
リャナさんは淡々と話す。ん?それと?
「黄龍だけが違う・・・というか、書物が別なんです。
そのほかは同一の本、所謂、分類上同じ本。
天羽乃斬と勾玉、もちろんそれには草薙の剣、スサノオ、
クシナダヒメが出てきます。しかし、その本には黄龍は
出て来ません。なぜ、『黄龍』の事を言ったのかが分かりません。」
ほうほう。逆に黄龍が一番重要なのかもしれない。
ユキさんは手に入れた勾玉をジッと見ている。
そう、ゲームの時には無かったアイテム。どうやら鑑定しても
細かくは説明はないらしい。というよりも鑑定できなかったそうだ。
人の世が終わる・・・か。そもそも人の世ではないだろう、ここは。
多くの種族の者達が居る世界だ。そうやって、人族が中心の考えなんて。
あまり好きではないな。
「なんか言い方が、この世界とかけ離れていたね。ここは人の世では
ないのに・・・。」
ユキさんもそう感じていたらしい、ミツルも頷いている。
勾玉が手の内にある以上、そのイベント?に巻き込まれているのは
確かだ。黄龍にしても、この後に青龍の所に行くし・・・。
まぁ青龍に聞いてみるか・・・。
こう言う事は、なんかリホさんが詳しそうだな・・・。終わったら
この事を話してみるか。
そして俺達はここで一夜を過ごす。
翌朝、道中の魔獣を狩りながら進んでいく。
ミツルが、それはもう絶好調だ。そりゃあそうだ、欲しかった武器が
手に入ったのだ。戦闘も楽しかろう・・・。
そして俺のレベルも上がった。
レベル85 HP819 SP208 MP180
攻撃力105
防御55
素早さ84
賢さ65
耐性55
運55
これにジヴァニアの効果でステータス2倍だ。いい感じだ!
そして、多分ここだろうと言う場所へと着いた。
・・こんな場所あったか?
リャナさん曰く、魔王が誕生した時期に突然として現れたそうだ。
当初は警戒をしていたが、特に混乱要因とかなかったので放置と
決めたそうだ。確かに魔獣の気配はしたが・・・との事。
心の広い魔族達であった。
魔王が誕生した時か。俺達がこの世界に来た時だな。
ん?当初は魔王誕生で王国はざわついていたが、あれから結構な
時が過ぎている。・・・魔王は何してるんだ?
人間が襲ってこないから行動していないという事か?
そういえば詳しく魔王についてリャナさんに聞いていない。
この青龍との事が終わったらゆっくりと聞いてみるか・・・。
さて!階段を上るか・・・。
やはり仙山だ。階段と扉の繰り返し。色々と変わってるなら
それを変えろよ!と思ったりする。
もう俺要らないんじゃないかと言うほどの火力パーティ。
しかし、よくよく確認していると魔獣1体の討伐時間は
俺とミツルは変わらない・・・。ジヴァニアの加護が絶大な証拠だ。
まぁ?ユキさんは全てがワンターンキルなんだが、それは仕方ない。
俺たち全員の最大の敵は「階段」だった。
そうこうしていると俺のレベルも上がる。まぁでもスキル振りは
後回しにする。そんなこんなで既に29個目の扉の魔獣を撃破。
最後の階段を上り30個目の、青龍の居る扉に着いた。
俺が扉を開けるとそこには勿論清流が居た。
「まずは礼を言う。餌の場所を教えてくれてありがとう。
そして我の呼びかけに答えてきてくれてありがとう。
先に何か聞きたいことは無いか?」
とても律儀な青龍。・・・聞きたい事は山ほどあるが、この間の
スサノオの問いかけを話してみる。
「人の世?ここは既にそんなモノはないだろうに。しかし、
スサノオは確か神族だ。人族の上位に位置するのが神族。
これと対をなすのが吸血族の上位が魔族となる。」
ほおほお。
「しかし、解せんな。何故あ奴らが黄龍を求めるのだ・・・。
可能性的には黄龍の能力なのかもしれんな。」
俺は黄龍の能力について聞いてみると、思いがけない一言が!
「黄龍の能力の一つに魂の移動を行うことが出来るものがある。
例えば、異世界から呼び出し、この世界へと定着させるのも可能だ。
しかし、膨大な魔力が必要となる。我が球を差し出し、その応龍が
黄龍になったとしてもすぐすぐには無理だろうな。」
例えばの話で、俺のこの魂を指定された体へと移すことが出来るのか
聞いてみた。重要課題だ。
「それは移す体に依るだろうな。どんな体でもいいのであれば
問題ないだろうが、指定されたからだとなると・・・。黄龍に
聞くのが良かろうて。」
話を戻して、ユキさんが持っている勾玉を見てもらう。
ユキさんは勾玉を差し出し・・・。
「これを・・手・・に入れ・・た。鑑定し・・てもわか・・らない・の。」
元の口調に戻ってる!あ!極度の人見知りだ!俺は理解できた!
「どれ、この手に置いてみろ」
青龍は勾玉を手に取り、じっと見ている。瞳が怪しく光り・・・。
これまた。すごい事を言う。
「これは魂が宿っているのではないか?魂魄を感じるのだが。
可能性として何かしらの魂を一時的に保存しているのだろう。
スサノオが欲しているのであれば、同族か何かではないのか?」
それっていい事なのか?いやいや、ダメなヤツだろう。
明らかにスサノオの仲間じゃん・・・。4つの勾玉、って事は
スサノオみたいな神族が4人って事だろ?天羽乃斬は単純に
スサノオか誰かが装備する物なんだろう。草薙の剣もって事は
明らかにそうだ。
「他にも話したいことはあるかもしれないが、そろそろ良いか?」
青龍はそう言うと何か気合を溜め始めた。やるつもりか。
俺は朱雀の時と同様に単独で剣を抜き、3人には後ろに控えてもらう。
「ん?何を剣を抜いている。やるつもりなのか?やりたいなら構わんが。
今は待っておれ、球を出す。」
はい?戦ったりとかしないの?ほら、俺の事を確かめるみたいな。
「いままで白虎たちが散々試したろうに。何故、くどくどとやらねばならん。
もしかしてお前は阿呆の子なのか?」
心に突き刺さる一言を投げかけると青龍が青白い光に包まれる。
すると!その光の中には、球と!・・・小っちゃくなった青龍が居た。
「さぁ早く食わせろ。黄龍誕生をこの目で見てみたい。はやくしろ!」
ぐぬぬ。俺は球を応龍に食わすと!応龍が金色の光を発する!そして、
その中から!やはり金色の龍が現れた。大きさも結構デカくなっている。
いや、結構ではない。多分長さは20メートルほどある。
だからこの部屋は大きかったのか?そんなわけないか・・・。
まぁ青龍自体もデカかったからな。それでも黄龍ほどではない。
「ふう。やっと戻れたな。我を育ててくれて礼を言う、キョーク。
そして青龍。我の為に力を使い感謝する。」
俺は興奮しながらステータスを見る!・・・見る!・・あれ?
そこには黄龍の文字はなかった・・・。
俺の手から離れたって事なのか?
・・・親離れってあるのかよ!