第61話 天羽乃斬
ヒイガワの洞窟のラスボス ヤマタノオロチ
ドロップ品は、秘剣 オロチ
特攻は、一度の攻撃が連撃となる効果がある。連撃の数は
ブレイヤーの素早さと攻撃力に依存する。最大で8回。
レベル180から装備できる両手剣だ。
俺と、まぁメインだが。俺とユキさんは既に持っている。
これはミツルの為の戦いだ。
扉を開ける前にミツルから
「俺は自分の手で取りたいんだ。だからお前らはサポートに
回って欲しい」と漢気あふれる一言。しかし・・・。
最初に突貫したのはユキさんだった。
ま、まあ?パーティ戦なので問題なかろう。うん。
リャナさんに耐性強化の魔法をミツルにに掛けてもらう。
しかし、リャナさんはすげえな、ほぼ全ての補助魔法を習得している。
魔族のなせる業なのかもしれない。
魔王イベントで複数の敵にリャナンシーが居たらめんどくさくて
仕方なかったのは脳裏に焼き付いている・・・。仲間でよかった!
俺は前衛に回らずに一歩引いて敵の行動パターンを確認する。
うんうん、ゲームの頃と同じだ。だからだろうか、ユキさんは
ヤマタノオロチのブレスに一度たりとも当たっていない。
ミツルも頑張っている。毒ブレスを食らうが、その度に
一歩下がり、リャナさんの回復魔法を待っている。
「大丈夫、間に合っているから攻撃の手数を増やして!」
リャナさんの一言にミツルは突貫する。
よし、確認した。攻撃パターンはゲームの時と同じだ。
そして俺も参戦。
二刀流で突っ込んで攻撃していると
「気になっていたけど!二刀流ってスキルあったっけ!?」
普通に喋りだしたユキさんが聞いてきたので、俺は・・・。
普通に右と左に剣を持てばいいと、教えた。
ユキさんは左手に草薙の剣、そして右手にフルンティングを持つと!
「閃いた!」の一言。
なるほど、右手に高速攻撃の剣を持ったか。流石、勉強になる。
「なあこれってさ!首を一個づつ落としていくのか!?」
ミツルが聞いてきたので、そんな事は出来ないと教えた。実装当初は、
ほぼ全てのプレイヤーが勘違いをしていた。8本の首を
ひとつづつ落としていくと・・・。残念ながら大間違いだった。
人間の体、PvPと考えれば、右手、左手、右足、左足と落とすわけはない。
致命傷になる攻撃をいかに叩き込むかだ。
あー。だからか。ミツルが一カ所の首ばかり狙っているのは・・・。
「足が先!足を攻撃して動きを完全に封じるの!」
普通に喋っているユキさんが教えている。
俺は後ろに回り込み、スキルの連続発動を行う。尻尾狙いだ。
何故だかゲームの時から凄く嫌がる感じがあったからだ。
ゲームの時、後ろから尻尾に攻撃を当てた時に何故だか攻撃が
止まるのだ。・・・ユキさん知ってるかな。
「尻尾攻撃すると攻撃止まるの知ってたんだ、さすが!」
俺にそう言ってくる普通に喋っているユキさん。どうしよう!
ユキさんに流石って言われた!
ゲームとこの世界の大きな違いがある。敵のHPが見えない事だ。
しかし問題はない。ゲームの時とHPが同じならば自分たちの攻撃で
どれだけ削れているかわかる。・・・ソレが廃人。
多分、後3割。・・・しかしここでリャナさんのMPが尽きてしまう。
リャナさんのMP630がぶっ飛んでしまう。そりゃそうだ。
回復と補助を行っているのだから。それも高位の魔法だ。
そりゃ使うわ・・・。
ユキさんが立ち位置の変更を俺に言う。ユキさんは一旦下がってきて
リャナさんにMPポーションを渡す。
なんかアレだ・・・。頑張っている人に栄養ドリンクを渡して
更に働けって言ってるような・・・。
渡されたMPポーションを7本一気飲みするリャナさん。
なんだか、この頃、最初の頃より砕けているというか、素が出ているというか。
「ぷっはああああ!うめえな!ブドウ味!」
「正解!ブドウも成分に入っているのよ!」
何だこの二人。気が合ってるんじゃないか?
あれ?ちょっと待って。魔王が復活しているのよね・・・。
もしかして?
もしかして?ユキさんが新しい魔王なんじゃないの!?皇国の化け物って
言われているし。・・今はいい!後で考えよう。
「もうだめええ、ミツル攻撃食らいすぎ!」
ジヴァニアが音を上げた。ヤマタノオロチ戦での最初の脱落者は
ジヴァニアだった。期待は裏切らない妖精。
その時、ミツルが思いっきり噛みつかれてしまう。
・・・が、耐えている。これは!まさに不死の加護。
しかし、めっちゃ痛そうにもんどりうっている。
そしてそこに毒のブレス8連が襲い掛かる。
それでも耐えているミツル。恐るべし「不死」。
いかん、見ていると面白くて攻撃の手が止まっていた俺。
ユキさんと再度立ち位置変更を行う。
多分後1割!ここで攻撃が大きく変わるはずだ。単体攻撃が
全体攻撃へと変化する・・・はず。
俺には防御魔法、ミツルには耐性向上魔法、そしてユキさんには
攻撃力向上魔法。たまに回復魔法。をずっと行っているリャナさんに
「私はいいからキョークとミツルに集中して!」
ユキさんが叫ぶ。あ、普通に喋っているユキさんが叫ぶ。
というか、ユキさんの攻撃が見えないんだが…。早すぎて。
メインの俺には見えるのだろうか。そう言えば、フルンティングで
攻撃をしている、というか装備している姿を初めて見た。
これがゲームの時の最強プレイヤーの攻撃。
そう、魔獣討伐の時の攻撃。・・・えぐい。早すぎて見えない。
何度でも言う!見えない!早すぎて!
「死んでもいいから突貫してきなさい!ミツル!とどめを刺して
オロチを手にするのよ!「不死」が死ぬところを見せてみて!」
なんか。性格が変わったかのようにユキさんが言ってくる。
それに答えるかのように、いや実際に「任せろ!」と答えたのだが。
ミツルは両手剣を持ち、踏ん張ると!
スキル「我慢」からの「渾身」を繰り出した。それも「突進」をおり混ぜて。
しかし、敵は倒れない。再度、ミツルは同じ攻撃を繰り出す。
無茶苦茶、攻撃が当たっているが・・・。流石「不死」。
俺達はヤマタノオロチが攻撃するたびにピョンピョンと跳ねる。
全体攻撃の「足踏み地震」対策だ。・・・ミツルに教えてなかった俺。
スマン。
しかし恐るべし不死!マジで死なないミツル。
もうこれチートレベルじゃん!ってか最強じゃん!
そして渾身の一撃でヤマタノオロチは煙となった。
そして秘剣 オロチがドロップする。
「うぉおおおおお!俺はやったぞ!」
ミツルは秘剣を手に取りめっちゃガッツポーズをした。
わかる!わかるぞ!欲しかった武器がドロップしたんだ!
・・・よかったな。1回でドロップして。俺は3回目だ。くそが!
そしてなんと!レジェンダリークラス。
うを!特攻に何がプラスされているんだ!?
「あ、これやべえ。3回は確定だって・・・攻撃。それに
確率で毒付与だって・・・。」
まじかよ!
まぁしかしよかったよかった。
その時に雪丸が喉を鳴らして何かを威嚇する。
出口の扉お前に人影が見えた。
え?クシナダヒメとスサノオ?
スサノオがユキさんに語り掛ける。
「お前が持つ草薙の剣は本来、ヤマタノオロチが変化したモノ。
何故にお前はそれを持っているのだ。・・・ならばお前は神族なのか?
我らの子孫なのか?ならば、探せ。この世は未曽有の事態に陥るぞ。
探せ。天羽乃斬と黄龍、そして残り3つの勾玉を。
倒せ、魔王を倒さなければ人の世は終わる」
そう言うと二人は白い煙と共に消えてしまった。
・・・こんなイベントはなかったぞ?もうこの世界はゲームとは
かけ離れてきているのか?
ユキさんは草薙の剣を握り占めていた。
俺達は転移の扉で外に出る。
俺も結構、HPを持っていかれた。ユキさんも4割ほど持っていかれたそうだ。
ミツルはHP1で生きていた・・・。
俺達は一旦、ヒールスポットである岩穴へ帰っていった。
未曽有の危機?何が起ころうとしているんだ。この世界は。
魔王を倒さなければ人の世が終わる?
それほどまでに魔王はヤバい奴なのか?
どんな奴だ・・・魔王とは!ユキさんじゃなかったのか!?