第40話 鬼人の里
雪丸を先頭に俺は荷馬車に座り移動する。
リャナさんはヤミガラスに乗り移動している。
道中特に問題もなく進んでいく。そんなもんだから俺は
色々と考えてしまう。この世界の事とか自分の事とか。
俺は今レベル70だ。ジヴァニアの加護があるのでステータスは2倍。
・・・あれ?ちょっと待って?もし俺がレベル100になったら
メインを超えちゃうんじゃないのか?
メインはステータス1.3倍の効果のアクセサリーを付けている。
それでもレベル120位には追い付いちゃうかもしれない。
大きく違うのは装備だ。この差は大きいな・・・。とかとか。
あれ?もし俺がメインに移ったらジヴァニアはどうなるんだ?
ジヴァニアはIDについてくると言うのであれば俺がメインに移ったら
その効果もメインに移るのか?・・・という事をジヴァニアに聞くと
重大なことをサラッと言いやがった。
「んとね、そういえばキョークが気絶した時に繫がりって言うの?
あれがね、遠くの方から感じたんだよね。あっちのほう。」
そう言って指をさした方角は、魔王領の方角。俺のメインの体がある方向。
あれって夢だったのか?料理の味も覚えている。体にかかる装備の
感覚も覚えている。もしあれが夢じゃなく、気絶したら俺の魂が
メインに一時的に移ったんじゃないか?ジヴァニアは繫がりが遠くの方と
言った。俺の魂を追いかけているのじゃないだろうか。
もう一度気絶するようなことがあれば確かめることが出来るが・・・。
いやいや、ダメだ。そのまま死んじまうかもしれない。ワザと気絶する
様な事はしたくないな。
ミツルの妖精の加護『不死』。であるならば、『死』があるって事だ。
魂の優先権はこっちのサブの方にあるのは確実だ。気絶してもすぐに
こっちに戻ってきてはしょうがない。ならば、やはり『転写』に
期待するしかない。そもそも、ジヴァニアが出来ないという事は
・・・探すのかぁ。
「みてください、あの山が仙山です。」
そう言うとエルフの御者が指をさす。その指した方を見ると。
あぁ、そうか。エルフの里と鬼人の里の中間位に位置する山、仙山。
俺はイベント思い出した。今思い出しても糞イベントだった。
山を登ると言う感じで進んでいくイベント。まぁクリックで進むだけ
だったが如何せん道中に扉が30もあり、扉を開けると戦闘だった。
ラスボスに勝つと『珍しい眷属確定の卵』が手に入る。
欲しいのが出るわけではない。俺は欲しかった眷属が居て
150回挑戦して卵を150個割り、やっと手に入れた。
重複が多くて売る作業も大変だった。珍しくと何ともねえ!
欲しかった眷属は『ブラックドラグーン』。俺は奇跡に喜んだよ・・・。
この世界でもそこに行ってボスを倒せば眷属の卵が手に入るかもしれない。
鬼人の里に少し滞在していってみるか。いいレベル上げにもなるし。
眷属が雪丸だけだと、雪丸の負担も大きいだろう。
よし、この依頼が終わったら仙山に行くことに決めた。
道中に魔獣も出てきたが特に問題なく討伐が出来た。
夜営の時も問題なく安全に荷馬車を守ることが出来た。そして
俺達は鬼人の里へと到着した。
御者のエルフは門番と顔見知りで難なく里の中に通れたが
俺はその門番にエルフの長から預かった手紙を渡す。
門番の一人が長に渡すと言って走っていった。
鬼人の商会『剛腕商会』に荷物を下ろし、そして冒険者商会へ
依頼達成のハンコの様なモノを貰う。
やはりじろじろと見られている。・・・俺よりもリャナさん。
相も変わらず眉間にしわを寄せるリャナさん。
一緒に着たエルフ達はここに3日ほど滞在するらしい。
って事は俺達も3日の滞在。どうやらその分の経費もあるらしい。
タダで宿屋と食事が!いいじゃないか!
「た、大変だ!北の森に!魔獣が出た!」
お!俺達も向かおう!リャナさんの手を握り、思わず手を握り、
その方向へ走っていく。・・・つい握ってしまった。
おお、強そうな鬼人の兵士たちもその方向へ向かって走っている。
森に着くと既に戦闘が始まっている。6人ほどが倒れている。
「リャナさん!」と叫ぶとすでにヒールの準備をしている。
ふとジヴァニアを見ると・・・ヒールをしていた。
あれ・・・。ジヴァニアのヒールのほうが早い。
ジヴァニアは・・・詠唱をしていない。あれ?そういえば
魔法って詠唱が無いはずだ。俺もしていない。あの貴族の魔法をつかう
冒険者もしていない。リャナさんだけがしている。
どういうことだ?
俺達も加勢をしよう!そう言いうと雪丸が飛び込んでいく。でかい!
目の前にいる魔獣は!『キラー・ビッグ入道!』
俺は雪丸に指示をする!側面から襲え!リャナさん!防御系ください!と!
俺は二刀流で正面から斬りこんでいく。SPはふんだんにある!
激怒から怒涛の流れで左右の剣で打ち込む。
それを3セット繰り返す・・・。倒れねえ!が!虫の息だ。
俺はまず右で袈裟切り!そして体を回転させながら左手の天狗で同じ所を
斬りこむ。そして右手のレーヴァテインでさらに同じ傷の所をなぞる!
返す刀で同じ傷の所を逆から左右の剣でなぞる!
そして閃く!『精密斬撃』を。
キラー・ビッグ入道は何もできないまま煙となり消えた。
そして何か箱の様なモノがドロップした。
「すげえ!瞬殺だ!あの入道をこの人間、瞬殺しやがった!」
歓声が上がる。なんか照れる。
スキルをつなぎ合わせ合計25連撃。多分最後の1撃はクリティカルだ。
スキルの最後は全てクリティカルの手ごたえがあった。ふむ。
「流石ですな!」冒険者ギルドに帰りギルドマスターから労いの声を
掛けられた。どうやらギルドマスターがここの長らしい。
「手紙で読みましたぞ!いやぁお二人共素晴らしい!」
そう言いながらリャナさんをチラチラと見ている。なんだ?惚れたのか?
明らかにこの国の人達はリャナさんを知っている・・・。
しかし、挨拶くらいで昔話とかをしようとしない。なんだこの違和感は。
俺達は宿屋へと向かい、部屋に入る。そして、ベッドの上に横たわる。
リャナさんは何者なんだ。ジヴァニアが最初に会った時に言った言葉、
「うさんくさい」。雪丸の警戒。
よくよく考えれば俺達と違う所も多数ある。魔法の『詠唱』もそうだ。
そして何よりも・・・影が足元の所から切れている。
眷属のヤミガラスもそうだ。流石に分かる。俺だってだてにゲームを
10年間やっていない。新規で追加された眷属とか全て知っている。
持ってないのと、知らないとは一緒ではない。
あ!今思い出した。あの眷属は『ストラス』だ。・・・魔族だ。
まぁ下っ端魔族だが。
可能性として・・・リャナさんは魔族だ。何かしらの理由で
人間の姿をしている。
そうか!わかった!
リャナさんは魔族から逃げてきた!
何故ならば!あの時に戦っていた!仲間割れか!それならば辻褄が合う。
魔族から逃げるために人間の姿となり!しかし!
あのバルバトスに見つかって戦闘となる!その時に俺達が現れた!
勿論俺達に魔族とバレるのを恐れ記憶が無いと!
俺達と一緒に居ることでのメリットは双方に大きい。いままでも
俺達の手助けとなってくれている。
リャナさんも人間に紛れ込み、魔族の追手から少なからず逃げる事も出来る。
俺の考察は完璧だ。
この事はジヴァニアには黙っておこう。あいつは口から生まれた
妖精だ。ペラペラと喋るに違いない。
お、どうやら食事の時間だ。
食事を囲みながら俺はリャナさんをジッと見る。
リャナさんは目をそらす。・・・大丈夫だ、リャナさん。貴方が魔族と
知っていても言わないよ。逆にあんたの力になってやろうじゃないか!
「仙山にはいかれるのですか?」
突然に言ってくるリャナさん。おれは勿論行くと答えた。
可能性としてだが、新しい眷属が手に入る。俺は是非に欲しい。と。
ふむ、リャナさんも行く予定だったのか。ならば!行こうじゃないか!
そして俺達は仙山へと向かう。